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1529/1997

クレアはティルラちゃんが気になっているようでした



「結局、人間もそうなんですけど、肌に必要な物も全て洗い流してしまう事になって……」


 何故か、フェンリル達が今回ラストの狼ドリルをして、水風呂に浸かるのを眺めながら、ライラさんとクレアに請われて俺の知る限りで肌に関する話をした。

 まぁ、常在菌とか皮脂と言っても多分伝わらないので、水や洗剤に何度も触れていると手が乾燥したりひび割れが起きるなど、以前話した内容を含めてになったけど。

 というか、俺に話せる肌の事なんてそんなものだ。

 美肌や美白とかになると、よくわからないしほとんど気にした事はなかったからなぁ……冬場に、手がカサカサになるとか、自分での経験はそれくらいだしな――。



「レオ、お疲れ様」


 子供達がおとなしくお風呂に浸かって、体を温めて上がっていった後、隅で縮こまっていたレオに声をかけた。

 リーザやティルラちゃんも、一緒に行ってライラさん達が面倒を見てくれている。

 今頃、タオルで体を拭かれている頃だろう……着替えているところかな?


「ワフゥ……」


 しょんぼりとしたレオの表情と共に、返ってきた鳴き声は元気のないものだった。


「寒くないか?」

「ワフ、ワウ」

「そうか、それならいいんだけど」


 子供達がいなくなるのを見て、すぐに体を震わせて水けを飛ばしたレオ。

 とはいえずっと濡れたままだったから、寒いのを我慢していないか気になって聞いてみたけど、大丈夫みたいだ。

 まぁ風呂場は広いけど、お湯が大量に使われているから暖かいからな。


「レオ様、ありがとうございます。子供達が楽しそうでした」

「ワゥ、ワフ!」


 俺と一緒にレオのそばに来ていたクレアから、お礼を言われるレオ。

 尻尾を垂らしてしょんぼり気味だったレオだけど、情けない姿を見せられないと思ったのか、しゃっきりとしてお座りしなおす。

 結構、見栄っ張りなところもあるよなレオって……俺もちょっとだけ自覚している部分があるから、飼い主に似るとかそういう事かもしれないが。


「ティルラも、子供達と遊んでいる時はこれまで通り、無邪気に楽しんでくれています」


 ふと、視線を落とすクレア。

 ティルラちゃんが楽しんでいた様子を喜んでいるようには見えないけど……?


「クレア?」

「すみません、どうしてもティルラが別邸に戻ったらと考えてしまって。このところ、ラクトスの事でティルラが色々考えている姿を見ていて、少し寂しいのかもしれません」


 ずっと一緒にいた妹だからなぁ。

 ティルラちゃん程表に出さないにしても、クレアだって寂しいのは当然だろう。

 喧嘩をする事は前にもあったけど、仲のいい姉妹である事には変わりないわけだし。


「ワフゥ……ワゥ」

「まぁ、それはティルラちゃんも一緒だと思うよ? レオも寂しいって言っているし、俺も。それに、時々だけどティルラちゃんが寂しそうな表情をするのを見かけるから」


 ラクトスの事を考えていたり、エルケリッヒさんと話していたり、何かに打ち込んでいる時や誰かと遊んでいる時は夢中になっているんだけど、本当にふとした時、クレアを見て寂しそうな表情をするのを何度か見た。

 この屋敷に来てからはリーザも含めて、子供達が多く、そちらと遊んでいる事が多いし、クレアもできるだけティルラちゃんと一緒にいるようにはしている。

 だけどそれでも、この先……あと数日くらいで別邸に戻って離れ離れになると考えたら、寂しくなってしまうだろう。


 こちらに来てから、すぐに仲良くなってよく一緒に遊んでいたレオもそれは同じみたいだし、兄のように慕ってくれている俺だってそうだ。

 子供達と一緒にお風呂からあがって、今は近くにいないシェリーやリーザも。

 

「はい、ありがとうございます、タクミさん、レオ様。だからこそ、ここにいる間は少しでも寂しく思わないよう、楽しんで過ごして欲しいんです。ですから、今日こうしてレオ様やフェンリル達と遊びではありませんが、お風呂で洗えて楽しめたのは、良い事だったんだと思います」

「子供達の様子からは、皆遊びだと思っているだろうけどね」

「ワフ」

「ふふ、そうですね」


 お風呂で洗うお手伝い、として子供達を集めたけど……ほぼ遊びの範疇だっただろう。

 最後に少ししか見ていないので、洗っている時は大変だったかもしれないけど。

 でもそれも、子供達……ティルラちゃんにとっては楽しい事だったと、先程の様子を見て思う。


「鍛錬も続けるだろうし、別邸に戻ったらやる事があるみたいだし」

「お父様から習った剣に打ち込んで、勉強がおろそかにならないかが心配ですけれど。でもやる事……ラクトスのスラムですね。そこも心配なのですけれど」

「まぁ……」


 まだ十歳という、子供だと言って差し支えない年齢のティルラちゃん。

 そんな子が、自分で関わろうと決意したとしてもその先はスラムだからなぁ。

 ディームがいなくなり、レオや俺の噂が広がり、さらにエッケンハルトさんが情報を得るために派遣した密偵、さらにラーレのおかげもあってかなり変わってきてはいるみたいだけど。

 あと、ニックも窓口みたいな役割をしているみたいだし。


 それでも、治安が悪い場所にティルラちゃんを関わらせるというのは、心配になるのも当然だ。

 ちょっと街に遊びに行く、という事では決してない。


「でも、ラーレが付いているからね。それに、エルケリッヒさんも一緒に行くみたいだし、セバスチャンさんだっている」

「そうですね。お爺様やセバスチャンが一緒にいれば、ティルラには滅多な事はありませんよね」

「そうだよ。それに、エルケリッヒさんがティルラちゃんを寂しがらせるような事をすると思えないし」


 セバスチャンさんは言わずもがな、これまでも大変お世話になったし信頼できる人だ。

 そんな人が、ティルラちゃんを危険に晒すような事は決してしないはずだし、孫を溺愛しているエルケリッヒさんがティルラちゃんを危険に近付けるような事はしないはずだ。


「むしろ、セバスチャンさんから影響を受けて、エルケリッヒさんの指導で想像できないくらい、たくましくなるかも?」


 なんて、冗談交じりにクレアに言ってみる。

 実際どう成長するかわからないけど、ティルラちゃんは結構しっかりした人物に成長しそうではあるからな。

 剣の鍛錬のように、やると決めたら打ち込むたちだし、失礼かもしれないけど意外にしっかりしている所もあるから――。




読んで下さった方、皆様に感謝を。


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