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1521/1997

香りだけが似ている樹木のようでした



「いえ、生憎と幹が弱く柔らかいため、木材としての使用はできません。ただ、魔物避けとして使われるのは木片などですが、一部では村などを囲う柵などに使われたりはします」

「幹が柔らかい……」


 だとしたら、俺が知っているクスノキとは違うのか。

 地球でのクスノキは丈夫で長寿、街路樹としても見かけるし、寺社にもあったりするんだが。


「他にも、馬車の一部に取り付けられる事もあります。旦那様や大旦那様なども、使われているかと」

「うむ。まぁ私は多少の心得があるうえ、護衛もいるのでそこらの魔物が近付いても蹴散らすだけだが……移動を阻害する煩わしい事に遭遇したくはないからな」


 エッケンハルトさん達も持っていたのか。

 まぁいくらエッケンハルトさんが、魔物と戦える人だとしても、遭遇すれば時間がとられるし危険もある。

 避けられるのなら避けるように準備するのも当然か。


「ハルトで多少の心得と言っていたら、護衛達が泣くぞ? いや、泣いている姿はよく見るが……ともあれ、街道を進む者、森に入る者などには必須とも言えるな。わざわざ、魔物を寄せ付けたいような者は別だが……」


 エルケリッヒさんの見た、泣いている護衛さんというのはもしかしなくてもエッケンハルトさんに訓練された人達の事だろう。

 フィリップさんとか、思い出しただけで泣いていたくらい厳しい訓練らしいし。


「てへへ」

「誰もユート様の事を誉めてはいないのですが……」


 とりあえず、わざわざ魔物に向かって行っているユートさんが照れて、ルグレッタさんに突っ込まれているのはスルーするとして……。


「タクミ様や、クレアお嬢様が森に入った時にも持っておりましたよ。先程一部と言ったように、レオ様やフェンリル達は特に嫌うでもなく、気にした様子はありませんでしたが」

「そうだったんですね」


 森には魔物がいるし、レオがいるとしてもできるだけクレアを危険な目には遭わせられないからな。

 多分荷物の一つとして持って入っていたんだろう……木片と言っていたから、そこまで大きな物ではいようだし。


「セバスチャンが一部と言ったように、その臭いを嫌う魔物は限られている。効果もあまり強い物ではない。自生している樹木そのものであれば別だが……持ち運べるようにした物などは、絶対魔物が近付かない、という程ではないな。気休めよりは効果が期待できるが」

「あぁ、だから森に入った時に、オークやトロルドが近付いてきていたんですね」

「うむ。オーク、トロルドにも効果があるとされてはいるが、絶対ではない。特に、森など別の臭いで紛れてしまうような場所ではな」


 森で野営をしている時、何度かオークやトロルドが近付いて来る事があった。

 クスノキの効果が出ているなら、挑発でもしない限り近付いてくる事はなさそうだけど、そこまでの効果は期待できる程ではないみたいだ。

 街道ならともかく、森の中には色んなにおいが入り混じっているからな。


「なんにせよ、俺の知っているクスノキとは違うか……まぁ、魔物を寄せ付けない臭いなら、今回の事とは関係ない可能性が高い。それにしても、なんでクスノキなんて呼び名が……」


 セバスチャンさん達の話を受けて、小さく呟きながら考える。

 レオ達も気にしない程度の臭いという事だから、カウフスティアの時のように離れた方がいい、というのとは別の臭いだろう。

 馬車にも付けられていたりするなら、リーザも嗅いだ事があるだろうし、気持ちが悪くなった原因とは違う。

 それにしても、木材にもならない香りだけの樹木のようだけど、それになんでクスノキと名付けられているのか。


 ラモギやロエ、他の薬草のように地球にある植物と呼び名や見た目などが同じか似ている、というわけでもないみたいだし。

 いや、香りは似ているのかもしれないけど。

 ただ今回は、呼び名がズバリクスノキ……近い名前という物でもない。

 ……あ、いや、タンポポの英名であるダンデリオンが、こちらではダンデリーオンとかほぼそのままっていうのもあるにはあるけど。


「タクミ君、タクミ君」

「ん? ユートさん?」


 考えていると、何やらユートさんが小さな声で主張。

 俺が疑問を呟いていた声が聞こえたっぽいな。


「あのね、クスノキなんだけど、多分タクミ君の考えているクスノキとは全くの別物だから。香りが似ているだけのものだよ」

「え、そうなんだ」


 まぁユートさんは旅をする者に当てはまるし、必要とせず自分から魔物に突撃しちゃうような人だけど、知っていてもおかしくないか。

 ただ、名前が同じで香りが似ているだけで、クスノキと名付けられたのは……と、新しい疑問を感じていると、何やらユートさんがウィンクをしている。

 男性にウィンクをされるのはあまり気持ちのいい物じゃないけど、これは何かの合図っぽいな。

 わざわざ合図をするって事は、ここでははっきり口に出せない事なのかな? ユートさんが口にできない、というか人の多い場所では言えないような事って……。


 考えれば色々ある気はするけど、一番に思いつくのは異世界関係の話。

 俺とユートさんが日本から、別の世界から来た人間ってところか。


「……」


 とりあえず、ここではできない話なんだと納得して、小さく頷いて返すだけにしておいた

 ちょっとだけ、エルミーネさんが目を見開いているような、妙な反応をしていた気がするけど……男同士でアイコンタクトをして、意思が通じ合っているように見えたからかもしれない。

 ちょっとだけ頬が赤いし。


 それはともかく、後で聞いた話なんだけど……クスノキと名付けたのはユートさんだから、という事だった。

 香りから適当に覚えのある近い樹木として、クスノキって名付けたんだとか。紛らわしい。

 香り以外、見た目などどこを取っても地球のクスノキとは全然別物らしいけど。

 という事は、他の物……ラモギとかロエとか、同じく紛らわしい物も異世界から、地球から来た人たちが名付けたとかってのも、あるのかもしれないな。


 というか多分そうな気がする。

 結構紛らわしい名前の物とかあるし、見た目がそっくりなのもあったりするから、こちらに来て名付けたというかそう呼んでいたのが定着した、とかかもしれない。

 このあたりは、またユートさんと詳しく話してみるのもいいかもしれないな。

 ともあれ、話を戻して……。




読んで下さった方、皆様に感謝を。


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