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1518/1997

ヤイバナ事件は収束しました



「キュゥ?」

「ワフ、ワウワフ」

「キャゥ!」

「きゃ。もうシェリー、いきなり飛び出すと驚くでしょ?」


 シェリーに声を掛けると、首を傾げつつ鼻をヒクヒク……臭いを嗅いでいるようだ。

 さらにレオからも声を掛けられ、こくんと頷くとその背中に飛び乗る。

 抱いていたクレアは、飛び出す時の衝撃で短く悲鳴を上げていたのが可愛かった。


「ははは、シェリーもようやく安心したみたいだね」


 クレアの注意を聞き流し、レオの背中で伏せをして鼻の頭を前足で何度もグシグシとしているシェリーを見て笑う。

 嫌な臭いを感じたのを追い出そうとしているんだろう、とりあえずシェリーに逃げたりする様子はなく、一応は落ち着いたようだ。


「えっと……何があったんでしょう? ティルラがいないのにラーレが降りてきていますし、フェンリルも……数が少なくなって怯えている、のでしょうか?」


 そんなシェリーを見て、レオに近付いて撫でつつクレアが庭を見渡す。

 ラーレはともかく、隅にいるフェンリル達は半分以上が塀を乗り越えて脱出しており、残ったのは項垂れていたり震えていたりと元気がない。

 クレアが言うように怯えているようにも見えるか。

 あと、シェリーと同じように鼻の周りを前足で何度も掻いている……俺ですら強烈な臭いと感じたんだから、そうなるのも仕方ないかもな。


「あー、ははは……えっとね……」


 苦笑しながら、キョトンとしているクレアに事情を説明。

 そうしている間に、今度はラーレの声が聞こえたとティルラちゃんが、騒ぎを聞きつけたのか、エッケンハルトさんやエルケリッヒさん、さらにユートさんにセバスチャンさんなども屋敷の中から出て来た。

 とりあえず、反省と共に事情を話して騒がせてしまった事を謝る。

 ちなみに、シェリーの様子がおかしくなったというのは、部屋の隅で震え始めたり、落ち着きなく部屋を歩き回ったりとかだったらしい。


 当然その原因は、俺が作ってしまったヤイバナが発生させていた臭い。

 人が感じる程ではないながらも、シェリーには感じられるくらいには屋敷の中に入り込んでいたようだ。

 まぁ、屋敷の窓が開け放たれていたりするし、あれだけ瞬間的に臭いが拡散していたんだから、当然と言えば当然か。

 幸い、屋敷内にこもったり臭いが何かにこびり付く、といった事はなかったけど、レオやシェリーからは俺やミリナちゃんが口や鼻を覆うために使っていた布は、どこかにやる事。


 あと、できるだけ早く服を変えるように言われたりもした。

 話を聞いたセバスチャンさんやユートさん、エッケンハルトさんが興味をそそられて、俺の服を嗅いでいたけど特にヤイバナらしき臭いは感じなかったらしい。

 レオやシェリーは、鼻がいいから人間には感じられなくても臭いが付いているように感じるんだろう。

 布は破棄、服は念入りに洗う事になった。


 そうして、新しい薬草の研究はヤイバナ事件となり、以後レオ達からは俺が『雑草栽培』を使う時に、警戒されるようになったとかならないとか。

 うん、もうヤイバナに特別必要な薬効があるとかじゃない限り、作らないから……安心して欲しいなぁ――。



「さて、皆集まったな」


 エッケンハルトさんがその場にいる全員を見渡し、呟く。

 昼食後、森での異変に関して話し合うために俺が使っている執務室に集まった。

 ここにいるのは俺とクレア、公爵家からエッケンハルトさんとエルケリッヒさん、それから参考意見を求めるためにユートさんとルグレッタさん、近衛護衛さんから二人。

 さらにランジ村の代表として村長のハンネスさんと、森に入る事が多く村の中では詳しいらしい青年……アルトゥルさんだな。

 三十代らしいので、そろそろ中年と言って差し支えなさそうだけど、笑顔が爽やかなので青年という方が似合う細マッチョ系の男性だ。


 ちなみに、同じ部屋にエッケンハルトさん達がいるとあって、緊張して顔が強張っており、いつもの爽やかさはない。

 移住する前、村に来た際に何度かあった時は、爽やかな笑顔を見せてくれていたのになぁ。

 さらに他にも、エルミーネさんとヴァレットさん、ライラさんとアルフレットさん、それからセバスチャンさんがいる。

 基本的にセバスチャンさん達は、集まった人達のお茶を用意したりのお世話役みたいだけど、自由に知識や意見を出せるとしている。


 参考意見としては、リーザやレオがいた方がいいんだけど、それに関しては既に俺が聞き取っている事や、昼食の時皆と話して共有していた。

 だから今リーザ達は、他の使用人さん達やフェンリル達と一緒に村の外でお散歩中だ。

 当初は近衛護衛の班長さん達さんもこちらに参加する予定だったんだけど、テオ君とオーリエちゃんがレオ達と一緒に散歩に行ったから、そちらに同行している。


「……では、まずはタクミ殿から森での様子を聞こうか」


 エッケンハルトさんが、緊張しきりのアルトゥルさん以外が頷くのを確認して、執務室の中心にあるいつも使っている机についた俺に視線を向け、促す。

 ライラさんを始めとした使用人さん達は、全員分のお茶を出し終わって各場所に立ち、エッケンハルトさん達は俺に向かい合うようにして椅子に座っている。

 けどこの配置って……。


「えっと……話すのはいいんですけど、これだと俺が中心にって事になりませんか?」

「何を言っているタクミ殿。ここではタクミ殿が中心で間違いないんだぞ? 屋敷の主人であり、レオ様を従え……」


 全員から視線を向けられ、戸惑う俺に当然の事とばかりに言い募るエッケンハルトさん。

 確かに、エッケンハルトさん達からすれば、レオと一緒にいる俺は身分的に高い位置にいる……みたいな事を何度か聞いていたけども。

 屋敷に関しては、クレアも同じはずなのになぁ。


「一応、これって領主様に報告するという体も取っているんですよね? だったらこれはちょっと……」


 領主である公爵様に、領内での異変を報告する……という位置付けで行われる今回の話し合い。

 それなら、俺が中心になってというか、俺が一番上の立場みたいな座り位置はどうなのかなと。

 自分の据わる椅子にこだわりは特にないし、エルケリッヒさんやエッケンハルトさんなら、喜んで明け渡して座ってもらうんだけど――。




読んで下さった方、皆様に感謝を。


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■7巻書影■mclzc7335mw83zqpg1o41o7ggi3d_rj1_15y_1no_fpwq.jpg


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