二つ目の薬草作りに取り掛かりました
「まぁ、カラスーリは一般的な薬草の一つみたいだからね。昨日はみかけなかったけど……」
ランジ村近くの森では……レオに乗って移動していたからよく見ていないため、自生しているかはわからないが。
ありふれた薬草で簡易的な傷薬として使われている物でも安価な薬みたいだし、多分使用人さんに聞けば常備薬的に備蓄してあると思う。
もしかすると、ロエを大量に備蓄していたりミリナちゃんが作った傷薬があるから、ないかもしれないけど。
ともかく薬草や製法などはわからなくとも、薬自体は知っていると思う。
「とりあえず問題なさそうだから、このまま作って行こう。あ、布よりも器とかの方がいいか。ちょっと取って……」
「私が行ってきますので、その間師匠はカラスーリ作りを続けていて下さい」
「……そうだね、わかった。お願いするよ」
「はい!」
布だとこぼしてしまいそうだし、とりあえず今日は他にも薬草を作る予定なので、屋内ではなくここで作業する事にして、器を取りにと動こうと思ったらミリナちゃんに止められた。
まぁ、俺がカラスーリを『雑草栽培』で作っている間に取って来てもらう方が、作業も早く済むか。
急がなくてもいいのに、屋敷へと駆けていくミリナちゃんを見送って、再びカラスーリ作りを始めた。
ちなみに、ミリナちゃん製の傷薬があるのにカラスーリなどの薬を作る理由は、ただの興味……というわけではない。
いや、興味もあるけど一つの薬に頼らずに、数種類の薬を作って比べる、効果の大小や価格などで別の物を用意しておきたかったからだ。
一般的な商品も扱いたいし、これならランジ村の人達に配っても問題ないだろう。
「それこそ、広告代わりに無料で配って、もっといい薬もありますよ……なんて事もできるからな」
カラスーリを作りながら、小さく独り言を呟く。
安価だからこそできる事だ……やり過ぎなければ、街の薬屋とかからの反発も少ないだろうし。
ミリナちゃん製の傷薬は、少々手間がかかる分多く作るのに時間がかかってしまう。
目玉商品にはするつもりでも、もし品薄や品切れの時に別の薬を用意できるのも魅力的だ。
「まぁ、利益というよりも周知するためだなぁ。他にも期待できそうな効果が、本にも書かれていたし……っと、こんなものかな。うーん、いくつか棒を用意してからやった方が、摘み取るのも楽だったか……」
ブツブツと言いながら作業を進め、ある程度のカラスーリを作る。
地面を這うつるは伸び放題、絡まり放題でごちゃごちゃとしていた。
複数のつるが、俺から陽射しが降り注ぐ方向にばかり伸びているのは、光景としてはちょっと面白いかもしれないけど。
「おーい、レオー! ちょっと来てくれー!」
「ワフ!」
実を摘み取って一か所に集めつつ、遠巻きに見ていたレオを呼ぶ。
絡まりまくっているつるから、根っこを引っ張りだすのは難しそうだったし、手伝ってもらうためだ。
レオに頼んで、つるをいっぺんに口で咥えて引っ張り豪快に根っこを引っ張り出してもらった。
穴を掘ってもらおうかと思ったんだけど……まぁいいか、レオも楽しそうだし。
「次はゲンノショウだね」
器を取ってきたミリナちゃんと協力して、カラスーリの処理を終わらせ、次の薬草へ。
ヤイバナは薬としてとかではなく、一応作ってみるだけなので先にゲンノショウだ。
こちらは傷薬というよりも、消毒薬に近い物になる予定だ。
負傷した部分が腐ってしまわないように……要は、化膿しないように細菌を除去するために使うらしい。
殺菌なのか抗菌なのかはわからないけど、傷薬などで治療しても、その後皮膚内に入った細菌で感染症とかもあり得るし、笑えないからな。
消毒は大事だ。
あとついでに止血効果もあるらしい。
「それじゃ……っと」
「おぉ、さすがです師匠」
「ははは、いつもやっている事とあまり変わらないけどね」
地面に手を突き、これまで通りに『雑草栽培』を発動。
にょきにょきと俺が頭に思い浮かべたのと同じ植物が生えてくるのを、ミリナちゃんが覗き込みながら称賛。
ゲンノショウ自体は初めて作るけど、『雑草栽培』はミリナちゃんも見慣れているのに、驚いてくれるのはやっている方としてはありがたい。
俺は自分の能力だけど、ミリナちゃんにとってはない能力だから何度見ても、そういった反応になるのかもしれないけど。
「カラスーリと同じく、白くて小さな花が可愛いですね」
「そうだね」
ゲンノショウは、菜の花……アブラナとちょっと似ているけど、膝丈くらいの高さで成長が止まり、花を咲かせた。
花は五枚の花弁でてきており、ミリナちゃんが言うように小さくて可愛い。
日本でも見た事がある気がするけど、名称も含めて俺はよく知らない。
「ゲンノショウは、それ自体が全て使えるんだったね」
花、茎、葉、根を分けて煮たうえで乾燥させ、さらにそれらを一緒にして水を加えて戻した後の水が、薬効成分のある薬になる、と本には書かれていた。
わざわざ乾燥させた後に加水して戻す事に、少しだけ疑問符が付いたけど、乾燥したキノコ類や煮干しでだしを取るのと同じような物かと思って納得。
薬の調合って、どことなく料理と似ている部分もあったりなかったり、みたいだ。
ちなみにだけど、乾燥させる前に一度煮るのはあく抜きならぬ毒抜きをするためだったりする。
毒その物は強くはなく、もし間違って体内に入っても軽い吐き気と下痢と言った、軽度の食中毒のような症状が出るくらいらしいけど。
ただ、花、茎、葉、根をそれぞれ別けてから煮るのは、一緒に煮てしまうとそれぞれの部位でほんの少し性質の違う毒素があるらしく、混ざってしまい、煮ている時に蒸発した水分と一緒に空気中に毒素が広がるかららしい。
そちらも大した毒が含まれているわけじゃないんだけど、作業をしている人の目が赤くなって少しだけ痛みを感じたりするみたいだ。
そのため、それぞれの部位で別けて煮た後に乾燥させて、完全に毒素を抜く事で、薬効成分だけ残るのだとか。
「はい、本にはそう書かれていました!」
「それじゃ、根元から抜いて……」
ミリナちゃんにも一応確認してから、ゲンノショウを引っこ抜き、状態変化をさせる。
これで乾燥するはずだと思ったんだけど……。
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