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1509/1997

小麦粉には色んな種類がありました



「ゲルダさんが謝る必要はありませんよ。悪いのは、我慢できずに小麦を盗み出そうとした閣下なのですから。まったく、人様の物を盗もうなどと……リーザ様に感謝をして下さいね?」

「タクミ君なら許してくれると思ったんだよ。それに、作ったら皆で食べれば万事解決じゃない? まぁ、リーザちゃんが僕を見つけそうにならなければ、あんな事には……」

「解決しませんし、発見されそうになったのは閣下の落ち度ですし、そもそも隠れて侵入する方が悪いのです。それに、聞けばうどんとやらは閣下が撒き散らした小麦粉とは違う物を使っているとか」

「くぅ……だって知らなかったんだよ。うどんは小麦粉でできているって事くらいしか」

「それでなんで、自分でうどんをつくれると思ったんだか……」


 そう、ユートさんが運び出そうとしていた小麦粉は、パスタなどに使うための小麦粉。

 日本ではうどん粉とも呼ばれる物とは別の物だった。

 ヘレーナさんの料理研究のためでもあり、多種多様なパンやパスタを作るため、品種の違う小麦や数種類の小麦粉を扱っているんだけど、その中でうどんを作るために必要なのは中力粉。

 俺自身詳しくなかったため、うどんと聞いて思いつくコシのある独特な触感を出すために色々試したんだけど、中力粉っぽい物が一番合っていた。


 パンだと強力粉ならパイやタルト、もちっとした食感の物が作れて、中力粉だとフランスパンとも呼ばれるバゲットなどに適している……というのは、ヘレーナさんと考えるうちになんとなく知った事だ。

 まぁ、名称は色々違ったけど。

 ちなみに、薄力粉はクッキーとかビスケットに向いている小麦粉だな。

 とまぁ、小麦粉に関するうんちくはいいとして……リーザはすぐにお風呂に行って洗い流す事に。


 騒ぎを聞きつけた、というよりどこかへ行ったままのユートさんを探していたルグレッタさんに見つかり、怒られて反省を促されたというわけだ。

 さすがに誰かに怪我をさせる可能性があったためか、いつもの調子は出ずに反省していたため、さっき俺を呼ぶ時に小声になっていたんだろう。


「リーザちゃんには、戻ってきた時にちゃんと謝ったから。それに、さすがにもうやらないよ……」

「当然です。ともかく、作り方さえ知らない閣下はおとなしく、いずれ出てくるのを心待ちにして下さい。あんな事をしでかしておいて、自分から作ってと頼もうなどとは思わない事です」

「うぅ……」


 結局、再びルグレッタさんにきつく言われて、肩を落としたユートさん。

 いつもなら、それも気持ちいいとかよくわからない事を言っているはずなんだけど、今回はうどんに気持ちが行き過ぎているんだろう。

 まぁ、材料はあっても毎日ハンバーグというのも厳しいから、明日はうどんにしてみようかな。

 ルグレッタさんが厳しい分、少しくらいは優しくしておいた方がいい気がするし……落ち込ませすぎると、また変な事をやりかねないという危惧もある。


 もちろん、勝手に小麦粉を持ち出そうとした事を反省している前提だけど。

 他でこんな事やっていないよな、ユートさん?

 ただ、俺ばっかり食事のメニューを決めていたらいけないので、クレア達の許可を得られたらだけども。

 あぁそうだ、ついでだから生卵を用意する方法をユートさんに考えてもらうのもいいかもしれない。


 手段があるかはともかく、衛生的に卵を生で使うのは忌避されているから……消毒する方法とかがあれば、皆も食べてくれると思う。

 卵を使うとなったら、最低でも半熟など熱した状態で準備されるし、ちゃんと消毒されていない物を使うのは俺もしたくないし。

 なんて考えつつ、なおもルグレッタさんがあれこれとユートさんに言い募るのを見ながら、夕食は進む。

 別の事を考えている俺と、うどんとかの相談を持ち掛けられているヘレーナさん以外は、そんなユートさん達を苦笑いで見ていた。


 ……大公爵という地位にいる人が、やった事もそうだけど護衛に叱られているのはまぁ、苦笑いしか出ないよなぁ。

 一部、ユートさんの経歴を知っている人もいるけど、そういう人は尚更だ。

 ちなみに、小麦粉をぶちまけた直後のルグレッタさんは、頭から角が生えているのではないかと見紛う程に、烈火の如く怒っていたとだけ付け加えておこう。

 怒らせてはいけない人というのは、どこにでもいるものだ――。



「リーザ、大丈夫か?」


 夕食などなどを終え、夜の鍛錬やお風呂も上がり後は就寝するだけという時間。

 ベッドの横でレオを撫でていたリーザに問いかける。


「うん、もう平気だよ。なんともない」

「ワッフ……」


 くったくなく笑って答えてくれるリーザは、気持ち悪いと言った時のような様子はもう一切なく、本当に元気そうだ。

 レオも、撫でられながらホッとしたのか鳴き声と一緒に息を吐いている。

 まぁハンバーグを作っていた時には既に、元気そうだったんだけど確認は必要だな。


 これなら、ミリナちゃんと相談した薬草は必要なさそうだ。

 それでもこれから先同じような事がないとは限らないし、他の誰かが同じように気持ち悪くなった時のため、薬草は作る予定だけど。


「元気になったら良かった。そうだな……明日改めて話合う事になっているけど、先にレオとリーザには聞いておくか」


 森での異変、カウフスティアが外敵を見つけていないのに興奮状態だった事や、リーザが気持ち悪くなってしまった事などの話し合いは、明日の昼に行われる事になっている。

 大体は、ユートさんがやってしまった事で、ルグレッタさんに叱られて使い物にならなくなったせいもあるんだけど。

 他にも、ハンネスさんや村の人達にカウフスティアやニグレオスオークのお肉を別けたので、その事で話しが先送りになったというのもある。


 俺達が夕食をいただいていた頃、村の方では食べる機会の少ないカウフスティアの料理が作られていた事だろう。

 多分、あちらもハンバーグなんだろうけど……そんなような事を、ハンネスさんや手伝いをしてくれた村の人達が言っていたから。

 それはともかくだ。


「それじゃリーザ。森で気持ち悪くなった時、何か気になった事とかはあった? 変な臭いとか」


 まずはリーザに、森で気持ち悪くなった原因がわかるかを聞いてみる事にした――。




読んで下さった方、皆様に感謝を。


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