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1508/1997

ユートさんがやらかしていました



「そろそろ無視され続けて、気持ち良くなっちゃうよタクミ君!!」

「いや、それはさすがに気持ち悪いから止めて!」


 男性に気持ち良くなっちゃうと言われても、男の俺からすると気持ち悪いとしか感じないから、叫ぶユートさんに叫び返す。

 むしろ、そんな大声で主張されたら男女関係なく気持ち悪いかもしれないけど、それはともかく。

 離れた場所で、ルグレッタさんが溜め息を吐くのが見えた。


「だってタクミ君が無視するからじゃない! さっきからずっと呼んでいるのにさぁ……」


 唇を尖らせるユートさん……年齢、はさておき童顔なユートさんがすると、可愛さを前面に出したあざとさを感じるな。

 絶対わかっていてやっているな、これは。


「何を言うかわかっているから、気にしないようにしていたんだけど……さっきの事もあるし」

「う……あれは謝るから。うん、ほんとごめん。だからそろそろ許して?」

「はぁ……えーと、いいですかルグレッタさん?」


 懇願する様子のユートさんを見て、溜め息を吐きゆらりと首を倒しながら近付いて来ていたルグレッタさんに聞く。

 俺のいる場所からは見えていたけど、エッケンハルトさんですら驚いているから、気配を殺して近付かないで下さいね……近付く先はユートさんだからいいかもしれないけど。

 あと、明りはあるけど影になっていると幽鬼のようにも見えて、ちょっとしたホラーに見えなくもないので。


「……もう少し反省をと思いますが、仕方ありません。これ以上醜態を晒さないために、許しましょう」

「……おかしいと思うんだけど? ルグレッタって、僕の護衛だよね? どうして僕が許される側なんだろう?」

「それは、ユートさんのせいだからだと思う」


 首を振り、ようやく許す許可を出したルグレッタさん。

 首傾げているユートさんは自業自得というかなんと言うか……そういった態度で接して欲しいとか、趣味を優先した結果でもあるからなぁ。

 ともあれ、今の状況になった原因はハンバーグの調理中にあった出来事が原因だ。


「だって、うどんが食べたかったんだもん……」

「もんって……はぁ。だからってあれはどうかと思いますよ、閣下」


 拗ねて見せるユートさんに、ルグレッタさんが溜め息を吐く。


「タクミ君が作ってくれないからぁ」

「いや、作るのは俺じゃなくてヘレーナさんだし、今日はデリアさん達を連れて来てくれたフェルを労うためだったから」


 フェルがハンバーグを食べたいと言ったのと、それを聞き逃さなかったフェリー達のために、と思ったのが発端と言えば発端か。

 ランジ村付近で得られるお肉、というのにも興味があったけど。

 少し前、俺達がヘレーナさんの手伝いでハンバーグを作っていた時の事だ。

 お米騒動じゃないが、俺がお米を食べられずに悔しがっていた際に、ユートさんへ醤油ぶっかけうどんの事を話したのは記憶に新しい。


 昨日はまだお米を炊いて俺に満足してもらおう、というのもあったらしいユートさんは我慢できたみたいだけど、今日こそはうどんを食べたいと内心強く考えていたらしい。

 それで、わざわざ姿を消す魔法……ランジ村への移動中、ユートさんと合流した時に使っていた魔法まで使って、厨房へ侵入したんだよなぁ。

 だから森へ行く時、付いてきそうだと思っていたのにユートさんは屋敷に留まったみたいだ。

 レオかフェンリル達の誰かがいれば、匂いとかで発見できたんだろうけど、ニグレオスオークとカウフスティアが運び込まれた厨房には生憎といなかった。


 まぁ、屋敷の庭で魔物の解体をレオやフェンリル達がやってくれていたりしたんだけどな。

 ともかく、誰にも見つけられない状態になったユートさんは、何を思ったか自分でうどんを作ればなんて考えて、侵入した厨房から小麦の入った袋を持ち出そうとした。


 一体どこで作ろうとしたのかは知らないけど、コッソリと俺達の近くを通り抜けようとしたみたいだ。

 けどその時、レオ達程じゃなくても俺やヘレーナさんのような人間より、嗅覚と聴覚の鋭いリーザがなんとなく察知。

 見えない誰かがいるようだ、と首をかしげていたリーザの言葉で皆が警戒。

 リーザの言葉は当然、ユートさんにも聞こえていたため「ヤバイ!」と思って、その場に硬直してしまった。


 それが悪かった。

 誰かがいるかも、と警戒する事で余裕のなくなったゲルダさんは、さすがに何もないところで転ぶような事はなくなったんだけど、それでも失敗をする事がある。

 そのゲルダさんが動いた拍子に、ハンバーグのタネが入っていたボウルをぶちまけ、慌ててユートさんとぶつかった。


「ゲルダさんがいてくれて良かったのか、それとも悪かったのか……」

「私は肝を冷やしました。撒き散らされた小麦に、調理中の竈の火。まかり間違えば大惨事でしたから」

「す、すみません……」


 その時の事を思い出して呟く俺に、疲れた様子を見せるヘレーナさんと、謝るゲルダさん。

 ぶつかった拍子に、持っていた小麦をユートさんがぶちまけ、厨房に舞う大量の小麦……というか小麦粉。

 厨房は調理中のため、当然火を使っている真っ最中。

 さらに悪かったのが、ユートさんは複数の小麦粉が入った袋を一気にぶちまけ、竈のある方へと大量に撒き散らした。


 宙を舞う小麦と火、そこから導き出される粉塵爆発という現象。

 さすがに、厨房全体を満たす量はなかったし、爆発で全員が吹き飛ばされる威力にはならないだろうけど……濃度とか色々あるからな。

 ともあれ、小規模であっても誰かが怪我をする、もしくは設備が破壊される可能性があったわけだ。

 あぁいう時って、本当にスローモーションで物が見えるんだなぁ、と思ったけどそれはともかく。


 危険を察知したわけではなく、ユートさんの匂いだとかを探っていたリーザが偶然、竈との間に立っていて頭から浴びた形になった。

 瞬間的に、粉塵爆発が知っていた人達の脳裏に浮かび、直後にリーザが全身真っ白になって事なきを得た。

 間に誰かいなかったら、あのまま舞う小麦粉が竈に向かって、小規模であっても爆発かもしくは燃えて危険な事になっていたかもしれないな。

 フェンリル達と一緒に、楽しそうにハンバーグを頬張っているリーザを見て、心の中で感謝と無事だった安心の溜め息を吐いた――。




読んで下さった方、皆様に感謝を。


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