煮込みハンバーグも好評でした
「リーザが作ったんだよー、食べてみて―!」
「ガフ!」
「他のフェンリル達も、喜んでいますねー」
庭での食事が開始されてすぐ、リーザは自分が成型したハンバーグをフェルやフェンリル達に自ら持って行く。
今日のリーザは、フェンリル達と一緒に食べるみたいだな……小さなテーブルが離れた場所に用意されている。
ティルラちゃんやシェリー、デリアさんもそっちで、フェンリル達も含めて焼いたハンバーグと煮込みハンバーグの両方が用意されていた、もちろん数種類の配合別で結構な量だ。
リーザからハンバーグをもらっているのを、他のフェンリル達が羨ましそうに見ていたり、カナートさんがデリアさんに助けを求める目をしていたりはするけど、概ね平和だ。
……カナートさん、まさかニャックの事でエッケンハルトさん達に囲まれるとは思っていなかったみたいだからなぁ、話しは一応まとまったみたいだけど、中庭に来た時はかなり消耗していた様子だったし、今もだけど。
緊張の連続だったんだろう。
今日到着したばかりの、フォイゲさん達やペータさんなどは俺達と同じテーブルで、エッケンハルトさんやエルケリッヒさんと一緒な事に恐縮している。
緊張している人達には、通過儀礼として諦めてもらう事にしよう……どうしてもって言う人がいるかもしれないから、後でコッソリ使用人さんの誰かに意見を聞く必要があるけど。
俺やクレアに対しては、意見しにくい人とかいるだろうし。
「ん~、味が染みていて濃厚。ご飯に合うなぁ」
「そうですね。肉も柔らかくて、口の中でほろほろと溶けるようです」
煮込みハンバーグと一緒にご飯を口に含み、クレアと共に舌鼓を打つ。
先にハンバーグを焼いてから煮込んであるけど、焼いただけの物より柔らかく、煮込んであるため肉汁と一緒にソースがしみ込んでいてとても美味しい。
味が濃い目なのも合って、ご飯ともよく合う。
「私は、焼いた方が噛み応えがあって好きだな」
「ハルト、これは噛み応えよりも深みのある味を楽しむ物だと思うぞ?」
等々、エッケンハルトさんとエルケリッヒさんが話しているけど、何にせよ周囲の皆も煮込みハンバーグはお気に召した様子。
まぁ噛み応え云々とかもそうだけど、好みは人それぞれで焼いた物の方がいいという人もいるだろう。
煮込みよりも、肉々しい味わいになるし。
ともあれ、緊張していた人達も美味しいハンバーグを食べて顔が綻んでいるようで、やっぱり美味しい物は人を幸せにするんだと実感。
……人だけじゃなく、レオやフェンリル達も幸せそうに食べているけど。
「モッチャモッチャ……ワフ~」
ハンバーグを食べるレオは、ソースで口の周りを汚しつつもご満悦。
フェンリル達の方はあまり汚さないのに、この違いはなんなのか……。
じゃれ合うついでに、お互いの顔を舐め合って綺麗にしているからかもしれないけど。
「あー、レオ。また口の周りにソースを付けて……」
「失礼します、レオ様」
「マフ、マフ~」
苦笑しつつ見ていると、チタさんが横からレオの口を拭き取る。
布で覆われているから変な鳴き声になっているけど、レオはチタさんにお礼を言っているようだ。
「ねぇ、タクミ君……?」
「んー。ヘレーナさん、やっぱりハンバーグにはお味噌汁よりも、スープの方が合うかもしれませんね?」
「そのようですね。皆様、昨日と違ってお味噌汁にはあまり手が伸びていないようです」
「ちょっと、タクミ君ってば……」
「まぁそれでも、ハンバーグはどれも美味しそうに食べてくれていますからね」
味噌汁はご飯とは合うけど、ハンバーグと合うかと言われればそこまででもない。
全然合わないわけではないんだけど、コンソメ系のスープの方が合いそうだ。
煮込み、焼き、両方のソースがデミグラス系だからだろうけど。
ともあれ、自分で作った料理を皆が美味しそうに食べる様子を見て、ヘレーナさんは嬉しそうだ。
「煮込むとこうまで違うとは思いませんでした。ハンバーグ、奥が深いですね」
「そうですね……ソース一つで全然変わりますし、使う肉でも変わります。他には……」
「おーい、タクミくーん?」
「あ、和風ハンバーグというのもありますね」
「和風、ですか?」
こちらの世界じゃ、和風や洋風と言っても通じないか。
「えーっと……」
「ちょっとちょっと、タクミ君てばー……」
和風といえば、料理知識に乏しい俺でもまず真っ先に出て来るのはおろしポン酢、と言ってもすぐには伝わらないため、わかる範囲で噛み砕いて説明する。
ポン酢がないから作るのは不可能かも、と思ったけど醤油があればなんとかなりそうだ。
酢はあるわけだし、あとはレモンに近い柑橘系の物があれば多分。
「成る程……それならすぐに作れるかもしれません。また、試食をして頂いても?」
「もちろん構いません。美味しい物が増えるのはいい事ですから」
「美味しい物と言えばさー、タクミ君」
「とはいえ、さすがに今日はこの通りハンバーグを食べましたから、明日もというわけにも行きませんね」
「そうですね……」
レオ達ならともかく、他の人達は同じ物が続くのはちょっと辛いかもしれない。
ソースを変えれば味も変わるとは言っても、だ。
「いや、私はそれでも構わんぞ」
「ワシも同じくだ」
「お父様とお爺様と同じく、私も明日くらいでしたら……」
「ねぇねぇ、他にも美味しい物があるんだけどさー、タクミ君」
エッケンハルトさんとエルケリッヒさん、さらに意外な事にクレアも連日ハンバーグでも構わない様子。
思っていたより、好評なようだ……話を聞いていた使用人さん達や、従業員さん達も何人か頷いている。
「うーん、まぁレオ達が喜びますし、明日もハンバーグでいい……んですかね?」
「おーい、聞いてる? 聞いてないよねー? ちょっとタクミ君ってばー」
「皆様に喜んで頂けるなら。食事の種類などは工夫すれば、なんとかなりそうです」
「そうですね、和風ハンバーグとご飯、それからお味噌汁に……安易ですけどさっぱり系のドレッシングでサラダを付ければ」
ハンバーグばかりだと栄養が偏るので、サラダなどでバランスを取ればまぁ連日でも大丈夫そうだ。
ヘレーナさんと話し、そう決まったあたりでさっきから小さな声で主張していた人が、ガバっと立ち上がった。
……主張したいなら、何故小声なのかはハンバーグを作っていた時にちょっとした事があったからだけど――。
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