狩ってきたお肉でハンバーグ作りをしました
「それじゃ、厨房へ行こうか。あ、そうだ。お茶美味しかったよ、ありがとう。もうライラさん達が淹れてくれるのと、変わらないんじゃないかな?」
「あ、ありがとうございます! 師匠にそう言われると嬉しいです! でも、まだまだライラさんにはかないません……」
「ははは、そりゃライラさんの方が長くやっているし、慣れてもいるだろうからね」
ミリナちゃんの淹れてくれたお茶は、俺が感じる限りではライラさん達が淹れてくれるのと大差ない。
舌が鋭いとか、違いのわかる男……なんてわけじゃないけど。
それでもミリナちゃんは、嬉しそうにしながらもまだまだ満足していない様子。
俺に細かな違いがわからなくても、及ばない何かがあるんだろうな。
やる事がいっぱいなので、無理をし過ぎないよう伝えながら、ミリナちゃんと連れ立って厨房へ。
予想通り、カウフスティアやニグレオスオークの処理は大変そうだったので、急いでミリナちゃんと手伝いに参加した。
とはいえ、俺にできた事はあまりないけど……もう少し、捌く経験とかした方がいいのかもしれない。
しばらくして、元気が戻ったリーザが合流し、ハンネスさんが連れて来てくれた村の人達と、挽き肉を成型する作業の班と魔物の処理をする班とで別れる。
手伝える事が多くない俺は、リーザと共にハンバーグ成型班だ。
他に、ミリナちゃんやゲルダさんなどもいる……最近のゲルダさんは、フェヤリネッテがちょっかいを出さなくなったおかげで、焦らなければ失敗しなくなっている。
料理なども、怪我なくできるようになったと喜んでいた。
まぁそれでも、慌てるとドジっちゃう事もあるし何もないところでは転ばないが、段差があると躓いたりもしているけど。
階段とかでも躓くので、フェヤリネッテが見守っていた時より危険度は増したのかもしれない……。
「できたー!」
「お、いい形になってるな」
「えへへ、でしょー?」
リーザが挽き肉を捏ねていた手を挙げる。
成型した物を見ると、何度もやって慣れたおかげか大きめだけどちゃんとしたハンバーグの形になっている。
焼いても、形が崩れそうにないな。
「大きめに作っているけど、自分で食べる用とかか?」
「ううん。これはね、頑張ったフェルとフェンリル達のご褒美なんだー!」
「あぁ、成る程なぁ」
狩りをしたフェンリル達や、デリアさんを連れて来てくれたフェルに食べてもらうためだったらしい。
大きめに成形されたハンバーグは、かなり食べ応えがありそうだけど、フェンリル達には丁度良さそうだ。
ちゃんと、カウフスティアから取った牛肉、ニグレオスオークから取った豚肉を合わせたり配合を変えたりして、いくつも作っている。
「それにしても、ニグレオスオークの肉は見た目が気になるなぁ」
挽き肉を捏ねているので、撫でられないリーザを褒めて微笑みかけた後、改めて挽き肉になったニグレオスオークの肉を見る。
話しには聞いていたけど、本当に黒い。
肉と言えば、生だと赤いのが当たり前……のはずなのに、墨にでも浸けたかのように真っ黒だった。
何も知らなければ、これを食べようとは一切考えないだろうけど、試しにと切れ端を焼いてもらって食べたら、ちゃんと美味しい豚肉だった。
焼いたら他の豚肉と変わらない色合いになったし、不思議だ。
ちなみに、味は通常のオークより高級感があって、ほとんど食べた経験はないけど高級黒豚と言っていいんじゃないかと思う程。
挽き肉にしてハンバーグやソーセージを作るのもいいけど、ソテーやステーキで食べるのもいいんじゃないかな? 今日狩った分の余りは、明日にでもそうしてもらおう。
あと、カウフスティアの方は特筆する事はあまりない牛肉だった。
アウズフムラが高級なブランド牛肉のようなのに対し、カウフスティアは一般的な牛肉と言った感じか。
こちらも試しにほんの少し焼いて食べさせてもらったけど、部位の問題か種別の問題か、少し噛み応えがあった。
柔らかいアウズフムラとは違うけど、これはこれで美味しい。
あと、肥料的にはアウズフムラよりカウフスティアの方がいいらしく、新鮮なモツを手に入れたペータさんは喜んでいた。
本来は捨てる予定のモツだけど、血や骨などと一緒に肥料になる再利用の仕方はブレイユ村で聞いたっけ。
利用しようとすれば、捨てる所がないカウフスティアは凄いな……アウズフムラもだけど。
ニグレオスオークの方は、さすがに血や内臓は捨てるみたいだけど皮や骨はニカワみたいな物になるらしい。
俺が知っているニカワは牛も使われていたと思ったけど、カウフスティアやアウズフムラは使えないとか。
全く同じ物ではないのかもしれないが、ニカワっぽい物ができるなら接着剤とかもそうだけど、動物性のゼラチンはソーセージにも使われている事があると聞いた事があるし、既に活用されているんだろう。
ゼラチンと似た使い方ができるのであれば、マシュマロとか……寒天がなくてもゼリーとかマシュマロも作れるかもしれない。
これも、今度ヘレーナさんと相談だな。
知識としてほんの少し知っているだけで、実際の作り方を知らないし。
――ハンネスさんや手伝ってくれた村の人達に、カウフスティアやニグレオスオークの肉を別けたりしつつ、ハンバーグ作りが終わる。
問題なく、というわけではなくかなりの騒ぎが起こったんだが……それはとりあえず置いておこう。
ついでに、ヘレーナさんの協力で煮込みハンバーグが作られた。
これはお米の炊き方などをユートさんと一緒に教えているついでに、そう言えばこんなものもあったなぁ、と話題になっていたからだな。
さらにご飯も炊かれて、付け合わせなどの準備を整えて夕食だ。
煮込みハンバーグ、楽しみだなぁ……俺はもっぱら焼くばかりだったので、自分で作った事はないから。
見た目からして美味しいとわかるし、フェンリル達もきっと喜んでくれると思う。
ちなみに、ハンネスさん達にお礼として渡したニグレオスオークとカウフスティアのお肉は、村全体で数日分は賄えるし、これまで珍しい部類だったカウフスティアのお肉をこんなにもらえて……と大層喜んでくれた。
ハンネスさんに案内してもらったおかげだし、これからも協力していくわけだから、こういったお裾分けみたいなのは、積極的にやっておかないと。
フェンリル達とも仲良くやってもらうための、ご近所付き合いみたいなものだな――。
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