新しい薬草を本で調べました
「アルフレットさんは……」
「それでしたら旦那様の執務室に……」
リーザの事以外にも、二、三確認してから、様子見も兼ねてリーザの部屋へ……の前に、俺の部屋に寄ってからだな。
レオに乗っているだけだったから、ほとんど汚れたりはしていないから着替える必要はないけど、上着くらいは脱いで身軽になりたいし、剣なども置いておきたい。
「ふぅむ……これは、食べ過ぎた時の気持ち悪さを解消するのか。ちょっと違うな……」
一旦部屋に戻った後、リーザの様子を見てレオを置き、ライラさん達に任せて残っていた書類を片付けるために執務室へ。
リーザはもうほとんど元気になっていたから、特に何かの病気というわけでもなさそうだし、大丈夫そうだったので一安心。
執務室でアルフレットさんと合流し、二時間程で書類の確認などを終えて、今は薬草の本で勉強中。
「ミリナちゃん、気持ち悪くなる症状の場合ってどんな事が考えられるかな?」
「そうですね……」
執務室に呼んできてもらったミリナちゃんと、相談しながら薬草を調べる。
小さな怪我を治す薬草、というのはすぐに見つかったんだけど、気持ち悪さの解消のための物はちょっと難しかった。
気持ち悪い、と主張する人によって感じ方が違いそれが上手く伝えられるかでも変わるし、原因も様々だ。
それこそ、乗り物酔いで気持ち悪いのか、胸焼けで気持ち悪いのかでも解消法はちがうわけで……。
解消法が違えば、使う薬草も違う。
リーザの症状の原因は特定できていない分、どういった薬草がいいのかがわからない。
「うーん、やっぱり難しいな……」
「ですね。色々な原因で似たような症状になると言いますか、気持ち悪さの感じ方も、人によって違いますので」
「そうだね。我慢強い人とそうでない人でも、やっぱり違うだろうし」
一概に気持ち悪い、と言っても色々あるんだなぁと今更ながらに納得。
こんな事、日頃は意識して考える事は少ないだろうけど。
「とりあえず、リーザが気持ち悪くなった原因の方を先に調べた方がいいかもね。一応、ある程度効きそうな薬草は作るとして」
「はい。調合が必要な物はお任せ下さい」
「ははは、もう俺がミリナちゃんを師匠と呼ばなきゃいけないくらいだね」
最初は、一緒に学んで行こうと思ったけど、他の事に気を取られているうちにいつの間にかミリナちゃんには置いて行かれている状況だ。
目玉の回復薬とかも、俺は必要な薬草を渡して頼んだだけでミリナちゃんが試行錯誤して作ってくれた物だからなぁ。
「そんな! 私は本で学んだくらいで……薬を作り始めてはいても、やっぱりまだまだ経験が足りません。それに、師匠は調合だけでなく、他にも色々とやっていますから」
「まぁ、経験という意味では確かにミリナちゃんより、色々と多いかな」
日本での仕事で関わった事だったり……それこそ、世界間を移動するというよくわからない事まで経験している。
まぁ異世界にというのを持ち出すのは稀有な経験どころか、もはや反則とも言えるけど。
一応俺の方が年上なのもあって、多くの経験をしている自負はある。
でもミリナちゃんは賢いからなぁ……経験の差なんてすぐに埋まりそうな気がした。
「なんにせよ、ミリナちゃんに師匠と呼ばれて恥ずかしくないようには、頑張るよ。それと、怪我の治療に使う薬草だけど」
「師匠は今のままでも師匠ですけど……はい。えっと、怪我に対する薬草は……」
怪我に関しては何かあった時のためで、気持ち悪さをというのはリーザに同じ事があったらとか、他の人にもと思ったんだけど。
ともかく、怪我を治すのはロエが特別で他の薬草では一瞬で治療をする、というのはほぼないらしい。
ほぼ、というのはそう書いてあったからで、本に載っていない薬草以外にそれらしい物があるって事だろう。
「カラスーリに、へクソラーズ、ゲンノショウ……か」
それぞれ、若干効果は違うが切り傷擦り傷などに効果があるとか。
カラスーリに関しては皮膚が乾いている時にも効果が、と書かれているから多分肌荒れに使えそうだ。
本に描かれている図というか、絵なども見る限りおそらくキカラスウリに似た薬草だろう……使うのは黄色の実だけど。
ラモギのようにヨモギや、ロエのようにアロエに似た植物もあるわけだから、不思議じゃない。
となると、ゲンノショウは人の名前っぽい気がする以外わからないけど、ヘクソラーズはヘクソカズラのような薬草の事だろう。
小さな花の絵がそれっぽいし、ヘクソなんて名前が付けられているから。
……効果はともかく、あれ結構臭いんだよなぁ……子供の頃、道端に生えているのを踏んじゃって、靴に臭いが付いたのを思い出した。
とりあえず、使用目的で作るとしたらカラスーリとゲンノショウにしておこう。
ヘクソラーズは、嗅覚が鋭いレオやフェンリル達に迷惑を掛けない程度で、試験的に作ってみるくらいか。
嫌がらなければ多めに作っていいかもしれないが、そこは様子を見ながらだ。
「あとは……これとこれも、ですね」
「さすがミリナちゃん。やっぱり、これはもう?」
「はい、私も同じ本をセバスチャンさんから借りて、読みました」
その他、調合する際に必要な物をミリナちゃんがピックアップしてくれる。
俺達が見ている本とは別に、ミリナちゃんも借りていたのか……これはもう、知識に関しては敵わないだろうなぁ。
「では、今から?」
「いや、もう暗くなって来たし、料理の手伝いもしたいからね。明日にしよう」
『雑草栽培』に頼れば、ピックアップした薬草が農業などで人の手が入っていない限り、問題なく作れるだろう。
けど、初めて作る薬草は昼とかの明るい時にやりたいからな。
観察するにしても、採取して調合するにしてもそちらの方が向いているし。
あと、カウフスティアやニグレオスオークなどを狩った後、全てお任せというのもな……ハンバーグ用の挽き肉にするのは大変だし。
「わかりました。私も、お手伝いさせて頂きますね」
「ミリナちゃんは、薬の方があるんじゃない?」
「そちらも作っていますが……ヘレーナさんにはお世話になっていますので」
「成る程ね」
ミリナちゃんには、目玉商品の数を用意するための調合に入ってもらっているけど、それ以外にもまだ使用人見習いとしてライラさん達に色々教わっていたりもする。
それなりに忙しいため、料理の手伝いまでさせてしまってはと思ったんだけどな。
まぁ、回復薬などを調合する際になんだかんだとヘレーナさんの協力があったし……火を使ったりもするし、混ぜて煮込んでみたいな事をするのはどこか料理に似ていて通じる部分もあるみたいだからな――。
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