フェンリル達のお手伝い方法を考えました
「作った物の中で暴れたりとかは、しないように注意しておくので大丈夫だと思います。基本的におとなしいですし、急に暴れる事はありませんから安心して下さい。走り回るとしても、外で何かを壊したり誰かに迷惑を掛けないようにも言っておきます」
「タクミ様のお言葉であれば、フェンリル達も聞くでしょう。助かります……おとなしいのはわかっちゃいるんですが、どうしても気になってしまって。すみません」
小さな掘っ立て小屋でも、壊されて作り直すのは手間だろうから、体の大きなフェンリルが休めるくらいの大きな厩舎を作り直すとなれば、かなり大変だからな。
実際にフェンリルはそれくらいの事はやれるだろうから、ガラグリオさんの心配はわかる。
「いえ。それと、フェンリルの手伝いに関してですけど、木材を運ぶならくちで咥えるのではなくて……」
「……ですが、重い物ですし」
「そこは……」
等々、ガラグリオさんと話してフェンリル達が手伝える方法を伝える。
口で咥えると、つい折ってしまう事があるのなら早い話が咥えなければいい。
フェンリル達の体は大きく、重い物が乗っても大丈夫というのは完全武装の近衛護衛さん達が、騎乗しても平気そうだった事からわかっている。
だから、ガラグリオさんにはフェンリルが許容できる範囲で、背中に木材を括り付けて運べばいいと提案しておいた。
もし、乗せる量が多くて重すぎた場合は、フェンリルに無理しないよう伝えてちょうどいい重さに調整すればいいだけの事。
一本や二本、金属鎧を全身に纏って武器を持った人間より重い、なんて事はないはずだからそれだけでもかなりの量を運べるだろう。
ちなみに、木材は屋敷や宿を作った時のあまりや、古くなった住居を取り壊して新しく作った時の廃材などで、村の端に集められているらしい。
人の手だと、ここまで運ぶのに苦労するため、フェンリル厩舎を作るのに一番時間がかかる部分みたいだけど、フェンリルに運んでもらえばかなり短縮できるだろう。
……薬草畑予定地での穴掘り、森に入る時のボディーガード役、建築のお手伝いと、フェンリルの活躍できる範囲が広すぎる気がしないでもない。
まぁ、役に立って人から褒められる……というより撫でられたりするのが、フェンリル達にとって喜ばしい事になってきているみたいだから、いいかな。
ご褒美として、美味しい食事も用意するわけだし。
フェリーを見ていると美味しい物が食べれられるなら、という部分が一番重要な気がしないでもないけど。
「あと、怪我には注意して下さい。フェンリル達は、多分大丈夫だとは思いますけど」
シェリーがオークに弾き飛ばされても無傷だったように、木材程度でフェンリルが傷付く可能性はかなり低いとは思うけど、一応注意。
もちろん、作業に当たる人達も気を付けて欲しい。
釘や工具を使うのだから、畑での作業より怪我をする危険性は高い……だからといって、畑の方で怪我をする危険性がないわけじゃないけど、あちらはペータさんがいるから大丈夫だろう。
「もちろん、注意は怠りません。怪我の怖さは、十分に理解しておりますので」
「ははは、そうでしたね」
他の人と変わらずに動いてくれているから忘れがちだけど、ガラグリオさんは元々怪我が原因で片足がほとんど動かない状態だった。
治ったとはいえ、その時の痛みというか苦しみはガラグリオさん自身忘れられないんだろう。
生活にすら多少なりとも支障が出るくらいだから当然だけども。
「とはいえ、何かしらの事故というのは起こるかもしれません。もし怪我をしたらすぐに教えて下さい。治療しますので」
「はい、ありがとうございます。皆には怪我をしないように注意は致しますが、その時はよろしくお願いします」
ヒューマンエラーという言葉があるように、人間である以上ミスが起こってしまうもの。
そう考えておいて、いざという時には備えておかないとな。
そのための、薬草作りでもあるし『雑草栽培』でもある。
自分に使うのは高価だからと躊躇う癖は俺にあるけど、誰かが怪我をしている場合にはすぐに治療するためにロエを使う事を決めているから。
ちょっとした擦り傷などなら、使わなくてもいいだろうけど……セバスチャンさんから借りたままになっている薬草の本を読み込んで、小さな怪我に使える薬草も探しておかないと。
「それじゃレオ、屋敷に戻ろう」
「ワフ!」
「え、あ、はぁ。安全に」
レオに言って屋敷に向かってらう。
離れる前にガラグリオさんに声を掛けたけど、一瞬なんの事かわからない様子でキョトンとしていた。
ちょっと言いたくなったんだけど、地球の炭鉱夫が使っていた言葉が由来の声掛けなんてわかるわけなかったか。
……ユートさんならわかると思うけど、使う機会がないからこの言葉は封印しよう。
「「「おかえりなさいませ、旦那様、レオ様!!」」」
「ワッフ!」
「ただいま帰りました」
屋敷では、数人の使用人さん達にいつものように迎えてくれたのは、キースさん、ジェーンさん、チタさんだ。
ちょっと森に行ったくらいでも、こうして迎えてくれるんだなぁ。
そういえばこういった迎え方とかも、俺が言えば変えてくれるんだろうか……? と思ったけど、慣れてからは割と好きなので、このままでいいか。
クレアも一緒に住む以上、大きくやり方を変えない方が皆もしやすいだろうし。
「ニグレオスオークとカウフスティアは……」
「先に戻ったライラさん達が、厨房へと運び込んでおります。既に、作業に入っています」
「わかりました。あと、リーザはどうしていますか?」
「ワフゥ……?」
狩った魔物は、問題なく届けられたのを確認。
気持ち悪いと言っていたリーザが心配だったので、そちらも聞く。
レオも心配そうな鳴き声を出していた。
「戻って来た頃には、大分お加減が良くなったようではありますが、今は自室で休んでおられます。シェリーとテオ様、オーリエ様。それからライラさんが付いています」
「そうですか、ありがとうございます」
「ワフゥ」
屋敷に到着したあたりで、結構良くなっていたみたいだな。
これなら、過剰に心配する必要はなさそうだ。
ライラさん達が付いているなら安心だし、レオもホッと息を吐いていた――。
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