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1501/1998

レオの穴掘りの効果が出ていたようでした



「まだ全てを見たわけではありませんが……森が近いのもあるのでしょう、鍬を振るってみた感覚ではとても良い土壌です」


 ペータさんは土を一つまみしてこすり合わせながら、楽しそうに答えた。

 薬草を作るのは、まず『雑草栽培』によって植え付け、そこから増やしていくつもりだけど、土の状態……含まれている栄養が多ければ多い程、劣化しないみたいだから。

 別邸の裏庭で試験的にやっていた簡易薬草畑は、特に手入れしていない土だったけど、ちゃんと耕して作物を育てられる土だったら、すぐに砂漠化のようにならないようだ。


 連作障害みたいなもので、何度も同じ場所でやっていればいずれ土が枯れて、砂漠化してしまうけど。

 だから休ませたり手を入れる必要があるんだけど、そのために薬草畑では区画分けを行って一度に全部使わない予定にしている。


「ですがタクミ様。少々おかしな事がありまして……」


 土を褒めていたペータさんは、顔を引き締めてそう言った。

 なんだろう……さっき森の中でレオが嫌な臭い、と言っていたような事があったばかりだから、おかしな事と言われたら思わず警戒してしまう。

 ペータさんの表情からは、そこまで深刻な様子は窺えないけど……。

 

「おかしな事ですか?」

「ワフ? スンスン……ワウゥ?」


 レオも気になったのか、鳴き声を上げて首を傾げた。

 鼻をひくつかせて匂いを嗅いだようだけど、特にさっきみたいに嫌な臭いとかはしなかったみたいだ。


「土の質が、場所によってはっきりと違うんです。これまであまり手入れをしていないような場所では、こういった事はあまりないのですが……多少の違いはあっても、大体は同じになりますから。ですがここでは、数歩歩いたくらいでも全然違ったりしています」

「土の質が……」


 詳しくないからよくわからないけど、近い場所では大体同じような質になるはずなのはなんとなくわかる。

 ほんの少し違う、というくらいはあったとしても数歩……数メートル移動したくらいで、はっきりとわかるくらい違ったりはしないだろう。

 地層の分け目とかならまだしも。


「一定の間隔……いえ、不規則ではあるのですが。鍬を振るって、新しく耕す感覚のある場所と、既に掘り返された後のような感覚と……わかりやすく言えば、硬い土と柔らかい土があるんです」


 俺が眉をひそめていたからか、ペータさんが硬い土、柔らかい土と言い換えてくれる。


「硬い土と柔らかい土ですか……質というのは?」

「硬い土はこれから整備して畑にしていく必要がありますが、柔らかい土ではこのまま作物を植えても良い状態になっています。まぁ、ちゃんと育てるならもう少し手を入れる必要があるでしょうが、畑の土として申し分ありません」


 硬い土は、ただ放っておかれた土地の土くらいの物だろう、柔らかい土は手入れされていたような土と同じ、といったところか。

 それにしても、そんな特徴がこの土地に……ん? 掘り返した後のような状態?


「その柔らかい土というのは、例えば人が数人入れるかどうか……くらいの広さで点在していませんか?」

「あ、はい。タクミ様の言う通り、二人から三人分くらいの幅でしょうか。予定地全てではありませんが……大体半分以上でしょうか、タクミ様の仰った広さで幾つかあるようです。鍬を振るって確かめる以外にも、柔らかい土は足でも確かめられますから」

「あー……成る程。そういう事ですか」


 そんな、人が入れるくらいの範囲で柔らかくなっている土が、無数に点在しているなんて事自然に起きるわけがないよなぁ。

 というか、思い当たる事があり過ぎるというか……。


「それ、結構前の事ですけど、レオが穴を掘って埋めた場所です」

「ワウ……? ワッフ!」

「レオ様がですか?」


 レオが一度首を傾げた後、そうだった! と言うように鳴く。

 様子見も兼ねて、屋敷を作り始める前にランジ村に来た時……ユートさんと初めて会った時でもある。

 その際、リーザとの遊びやどうせ耕す場所だからと、予定地でレオが楽しそうに穴をいくつも掘っていた。

 リーザが穴にすっぽり入っていたりもしたけど、多分それだろうな。


「畑の予定地でしたし、どうせ耕すならと思ってレオ達の遊び場みたいにしたんです。その時に……やらない方が良かったですかね?」

「ワウゥ……?」


 俺と一緒に、レオもペータさんへと窺うように鳴く。

 レオが穴を掘った場所の土の状態が良くても、均一ではないためにペータさんとしては予定が狂ったりするのかもしれない。

 一概にいい事、ではなかったかなと思った。


「いえいえ、そのような事は! 今、石など邪魔な物を取り除きながら耕していたのですが……レオ様が穴を掘ったと言われる場所、状態の良い場所では、そういった物がほとんどないのですよ。おかげで、手入れをする手間が省けております」

「そうですか……良かった」

「ワッフ……」


 ペータさんに言われて、レオと一緒にホッと息を吐く。


「いらない草などは取り除いていますが、今すぐにでも畑として使えそうです」


 いらない草、畑として植える植物ではない物の事だろう。

 俺の『雑草栽培』とは違う、正真正銘雑草だな。

 土の栄養を奪うため、他の植物などは取り除く方がいいというくらいは聞いた事があるため、除草する必要があるんだろう。


「こうして見ると……一部だけ、異様に草が伸びていますね」

「それだけ、土に力が蓄えられているという事でしょう」


 予定地全体を見渡すと、一部円形にすら見える場所で見た事のない植物が育っている。

 穴を掘った後だと思われる場所では、ふくらはぎから膝くらいまで伸びているのに対し、他の場所は長くても足首くらいまでしか伸びていない。

 ある意味、レオが穴を掘った場所だとわかりやすくていいんだけど。


「おそらく、掘り返された事で土やその他の物が混ざり合い、空気も取り込んだのかと。耕すよりも効果的な結果になったのだと思われます」


 そう言って、さらに目を輝かせて教えてくれるぺータさん。

 用はレオが穴を掘った事で雑多な草やそのほかの物、空気などを取り込んで、奥の方で腐葉土になった……みたいだという事らしい、多分。

 あと、石などの硬い物も取り除かれているとの事だったけど、多分それは穴を掘る際にレオが粉砕したからだと思う。

 そのうえ、しばらく放っておく事で土が熟成……って言い方で合っているのかわからないけど、ともあれそうして土の状態がかなり良くなっているんだとか――。




読んで下さった方、皆様に感謝を。


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