畑で作業をしている人達がいました
「それなら、今回も放っておけば大丈夫かもしれません……大丈夫かもしれませんけど……」
「これまで通りであれば確かに。ですが何か気がかりでも?」
「いえ、レオが嫌な臭いと言ったのが気になっているんです」
ちょっとした事なら、レオはそんな風に言ったりはしない。
そりゃレオにも、好きな匂いと嫌いな臭いくらいはあるけど……リーザが気持ち悪いと言ったのもある。
病の時も同じく嫌な臭いとは言っていたけど、離れた方が良さそうというような事は言っていなかったからな、近付かない方がいいみたいなのは言っていたけど。
だとしたら、あれ以上に危険な何かが? とも考えられる。
なんとなく、嫌な予感のようなものが胸の中で湧き上がるのを感じるな……。
「もしかしたら、ただの杞憂なのかもしれませんけど。でも、一応考えるくらいはしておいた方がいいかもしれません」
詳細がわからないので、対処できるかどうかはともかくだ。
「ハンネスさん、すみませんが後で……」
「畏まりました。森に詳しい者も呼んでおきましょう」
「はい、お願いします」
俺がここで考えているだけでなく、誰かと相談したり話し合ったりする必要がありそうだと思い、ハンネスさんにも伝える。
森に詳しい人が他にもいるのならありがたいと、ハンネスさんに頷いて屋敷への帰路を急ぐ。
異変の事もあるけど、早く戻らないと準備をしてくれるヘレーナさん達が大変だからな……俺も仕事が残っている。
とはいえ、フェリー達が歩くスピードだから急ぐに急げないけど、それでも人間が歩く速度よりは幾分か速いか――。
「では、私はフェンリル達と共に先に屋敷に戻ります」
「はい、お願いします。リーザもよろしくお願いします。リーザ、ゆっくり休むんだぞ?」
「クゥーン」
「うん……」
「キュウ……」
森を抜け、屋敷が遠目に見えたくらいでライラさんにリーザを任せ、先に戻ってもらう。
ライラさんと一緒にフェルに乗っていたシェリーは、リーザの顔を窺うように鳴きながら顔を舐めている……心配なんだろう。
気持ち悪くなったリーザは、あの場所を離れてから多少楽になったようだけど、それでもまだ元気が取り戻せていなかったからな。
カウフスティアを運ぶフェリー達や、他のフェンリルも一緒について行ってもらい、残ったのは俺とレオだけ。
俺達が残ったのは、薬草畑の予定地で動く人を見て話しておこうと思ったからだ。
フェリーに乗っているハンネスさんはカウフスティアを運び込んだ後、一旦村の方に行く事になっている。
ニグレオスオーク三体とカウフスティア五体、一気に全てを使うわけじゃないけど、村の人にも手伝ってもらってハンバーグ作りをしてもらうためだ。
「さて……ペータさん!」
「タクミ様、レオ様!」
薬草畑予定地にいる人、鍬らしき物というかその物を振るっていたのはペータさん。
声を掛けつつ、レオに乗って近付くと向こうもこちらに気付いたようだ。
他にも、二人ほどペータさんの近くにいた。
「タクミ様、レオ様、お久しぶりです」
「あれ、フォイゲさんとウラさん。もう到着していたんですね」
「えぇ。先程到着しましたので、まずは畑を見ておこうかと」
「それでペータさんと一緒にいるんですね」
ペータさんと同じように、鍬を持って汗をかいているのはフォイゲさんとウラさんの二人。
俺が、薬草畑のために雇ってペータさんの直接の部下、ペータさんが係長だとすれば、フォイゲさんとウラさんが主任とかそんな感じの役職にした人達だ。
少し背が高く、短髪で健康そうな青年といった感じのフォイゲさんと、ふくよかで中年の女性のウラさんだな。
初めて見た時より、ウラさんが少し痩せているような気がするけど、ランジ村への引っ越しで忙しかったからかもしれない。
「ペータさんもですけど、フォイゲさんやウラさんも、こちらに来たばかりで大変じゃないですか? 無理はしなくても……」
引っ越して来たばかりだから、荷物の整理とかあるはずだからな。
「大丈夫ですよぉ。移動の疲れはもちろんありますけど、住む場所とかは家族がなんとかしていますからね!」
「私は……独り身ですので、あまり荷物もなく。家具なども用意されているので、すぐに終わりました」
「フォイゲと同じく、ですね。というより、これから作る畑の様子を見ずにいられませんでしたよ」
「そうですか、三人共無理をしていないようなら良かったです」
三人共、特に無理をしていなさそうな笑顔だから大丈夫か。
ペータさんとフォイゲさんは一人だし、そんなに荷物も多くないんだろう……ペータさんが終わっているなら、デリアさんも終わってそうだ。
デリアさんがここにいないのは、他の事をしているんだろう。
ウラさんの方は、家族に任せているらしい。
ペータさんとフォイゲさんは屋敷の従業員用の部屋に住むが、ウラさんは村の新しい家に住む事になっている。
確か、近い年の旦那さんとお子さんが二人いるんだったかな……十三と十二の兄妹だったはずだから、家に住む準備とかもある程度任せられるか。
「それでえっと、畑を耕していたようですけど……?」
もうすぐ始動させるための前準備として、無理をしない程度に畑を耕しておいて欲しい、というような事は皆に伝えてあるけど……到着したその日にやらなくてもと思う。
「ジッとしているのはどうにも性に合わなくて。それで、どうせならやれる事はやっておこうかと思いまして。ちょうど、タクミ様達が森へ行った後、フォイゲ達が到着したので、ついでに一緒にと」
「私も、自分が働く畑は自分でと思いまして。何人か任せられるとも聞きましたので、率先してやっておかないとと……」
「ペータさんやウラさんが動いているのに、自分は何もしないわけにもいきませんから。それに、他にやる事もなさそうでしたので」
畑作業が好きそうなペータさんはともかく、ウラさんは人をまとめる役にも抜擢しているから、動かないと落ち着かなかったらしい。
フォイゲさんは、半分くらい暇潰しってとこか。
「そうですか。まぁ無理をしていないならいいんですけど……どうですか、ここらの土は?」
三人共がそれでいいのなら多くは言わないようにし、とりあえずペータさんに畑予定地の土について聞いてみた――。
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