リーザの様子が気になりました
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「……ん、リーザ。どうしたんだ?」
ふと、リーザが静かにして俯いているのが気になって声を掛けた。
シェリーやテオ君達がそうだったように、いつものリーザならフェリー達の様子を見て、同じく歓声をあげていてもおかしくないのに……。
「うぅん……わかんない。けど、ちょっと気持ち悪い……」
「え!? どうして急に……?」
小さく首を振って答えるリーザの声は、いつもみたいな元気がなく、沈んでいる。
さっきまで、というか氷漬けのカウフスティアに触れる辺りは元気だったのに……急にどうして?
まさか月に一度の……というのが頭をよぎったけど、あれは別邸を出発する少し前にあったから多分まだ違う。
それに、お腹が痛いとかじゃなくて気持ち悪いだから、何か別の事だろう。
「えーっと……どんな風に気持ち悪いとかわかるか? 胸がむかむかするとか……」
「……わかんない。でも、凄く嫌な感じ」
気分をスッキリさせる薬草とかあったかな? なんて頭の中で考えつつ、リーザに聞いてみるがよくわからないようだ。
レオに乗ったから、乗り物酔いになった……とかではないだろうし。
これまでもレオに乗っていてそんな事はなかったし、もっと長時間乗っていた時でも平気そうだった。
「ワフゥ」
「レオ?」
「……スンスン……ワウ! ワフ、ワウワフ!」
「何か嫌な臭いが……? それが、リーザが気持ち悪いって言っている理由なのか?」
「ワウゥ……ワウワウ!」
顔を空に向け、何やら鼻をひくつかせたレオ。
嫌な臭いがするとの事で、多分それが原因じゃないかという事らしい。
俺にはそんな嫌な臭いなんて全然わからないが……ハンネスさんやライラさん、近衛護衛さん達、テオ君達にも聞いて見たが、全員首を振ってよくわからないようだ。
レオは俺達より嗅覚が優れているし、リーザも獣人だからかそういうところがある。
人間にはわからないくらいの何かが、この場所にあるのかもしれない……レオがわざわざ臭いを嗅がないとわからない程、微かな何かが。
って待てよ、レオが嫌な臭いというのって。
「……もしかして、以前広まっていた病の気配や臭いみたいなものか?」
「ワッフ。ワフゥ……ワフワフ」
「違うのか……とにかくわかった。すぐにここから離れよう。フェンリル達は……平気そうだな」
ラクトス周辺やランジ村に蔓延していた病、レオはあれを察知する嗅覚を持っていて、あの時も協力してくれた。
まさかそれと同じような、というかリーザが何かしらの病に? と思ったけどレオが嗅ぎとった臭いはそれとは別らしい。
とにかく、この場所に嫌な臭いがあるのならまずは離れた方がいいだろうと、フェンリル達の様子を確認した後、ランジ村に向かって移動を始めた。
「フフゥ……」
「ワフ。ワウワフ」
「そうか……フェリー達にもよくわからなかったのか。リーザ、大丈夫か?」
「うん。まだちょっと気持ち悪いけど、でもさっきよりは平気だよ」
戻る道中……氷漬けのカウフスティアを運んでいるため、走ったりはできずにゆっくりだけど、フェリー達にもどこか体の調子が悪かったり、変な臭いがしなかったか聞いてみるが、よくわからなかったらしい。
レオだけにしかわからない、本当に些細な臭いだったのだろう。
幸い、リーザの方も少しずつ良くなっているみたいで、今すぐ何かをしなければという程ではなさそうで安心だ。
「ファフゥ、フッフー」
カウフスティアを咥えたままのため、息が抜けるような声になったフェリーが言うには、さっきの場所を離れてから気持ちが落ち着くような、そんな感覚にはなっているとか。
今気持ちが落ち着くって事は、さっきの場所には何かあるのは間違いなさそうだ。
そういえば、カウフスティアの様子も少しおかしいとハンネスさんが言っていたっけ。
「ハンネスさん、さっきカウフスティアの目が赤くなっているのがおかしい、との事でしたけど……?」
「はい。カウフスティアは本来仄かな赤みのある目をしています。外敵を発見し、襲い掛かる際に先程のように真っ赤な目になるのですが……」
フェリーの咥えるカウフスティアを確認しつつ、ハンネスさんに聞いてみる。
氷漬けになったカウフスティアは、目を見開いたままなのでよく観察できるけど、目の光はすでになく真っ赤にもなっていない。
それがさっきは、まだこちらが発見される前にもかかわらず目は真っ赤になっていた。
ただの興奮状態という可能性もあるが、ハンネスさんが知る限りでは外敵に対するカウフスティアが、目を真っ赤にした状態でさっきみたいにおとなしくしている事はこれまでなかったとの事だ。
リーザが気持ち悪くなり、レオが嫌な臭いがすると言っていた事から、さっきの場所には何かがあったのは間違いないのかもしれないな。
それが、ずっと残っているものなのか、それともあの時だけなのかはわからないが……。
「村から近い森に異変があった時って、いつもどうしていたんですか?」
「そうですね……魔物が村に押し寄せるなど、村に対して大きな被害が出るような事でなければ、様子を見るくらいでしょうか。私達は森の恵みを頂いてはいますが、森に対して何かの異変を治めるような事はできませんから」
「成る程……そうですよね……」
「何度か、森から魔物が出て来るといった事はあったようではありますが……幸い、私が生まれてからこれまで、同じ事はありませんでした。他には……」
村としては、森に何かあってもそれが過ぎ去るか、それとも危険ならば逃げるか近くの街や領主である公爵家に助力を求める、といったところらしい。
とはいえ、クレアが近くにいた前回の病とは違い、直接ではなく領内を回る兵士さんや街に行った際に、報せを送って動いてくれるのを待つ、と言ったくらいのようだけど。
前回も、最初はクレアのいる別邸まで来る事は、当初全く考えていなかったらしいし……カレスさんの勧めと俺が薬草販売を開始していた事、ラクトス近くにクレアがいたからだな。
まぁ、ハンネスさんが生まれてからだと、大体六十年から七十年は助力を求めるような異変はなく、ほとどがしばらく森に入らず様子見をする程度で済んだ事ばかり。
雨が長く降り続けて、風も強く木々が倒れたりとか、魔物同士が縄張り争いをしていたとかそれくらいだ。
森から魔物が出て来る事はほぼなく、あったとしても二、三体が出て来るとかその程度だったらしい――。
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