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カウフスティア狩りはあっさり終わりました



「とにかく、フェルや他のフェンリル達、村の人達に喜んでもらうためには考え込んでいても仕方ない。皆、もう少し距離を離そう」


 フェンリル達に指示を出し、ニグレオスオークの時と違って距離を離す。

 今回は、周辺に他にもカウフスティアと思われる気配があるため、それなりに距離があっても気付かれないように注意を払う。


 そのため、やる事は……。


「フェリー、威嚇しないよう程度に吠えてくれ!」

「グルゥ! グルァゥ!!」


 姿が見えるかどうか、くらいまで距離を離してフェリーに指示。

 遠吠えという程ではなく、さりとて威圧するのではなくただ吠えるだけ。

 数十メートル離れたカウフスティアにはこれで十分、俺達の事を報せる事ができる。


「よし! もう少し離れて……来た!」


 一斉にこちらを見る、五体のカウフスティア。

 真っ赤な目が俺達を外敵と捉えたのだろう、それぞれが片方の前足で何度か地面の土をえぐるようにした後、後退りするようにしているこちらに向かって、猛然と走り出した!

 体の大きさも相まって、五体のカウフスティアが突進する様は迫力があるな……闘牛の映像を思い出した。

 とはいえ、真っ直ぐこちらに向かってくるわけではなく、間にある木々を器用に避けているのを見るに、さすが森の中に棲んでいる魔物といったところか。


「もう少し……よし、今だ!」


 もう少しおびき寄せるように、走って来るカウフスティアを待ち、俺の中で一定のラインを引いていた場所を通り過ぎる瞬間、フェンリル達に指示を出す。


「魔法を使って凍らせてもいいけど、周囲の木々は巻き込まないようにだけ注意してくれ! いけぇ!!」

「「ガウ!!」」

「「グルァゥ!」」


 ニグレオスオークの時と同じ事にならないための注意と一緒に、手を振ってフェンリル達にカウフスティアへと向かってもらった――。



「なんというか、色々考えていたけど……終わってみれば呆気なかったなぁ」


 なんて呟きと共に、地面に転がる五つの氷漬けをレオの背中に乗ったまま見下ろす。

 氷漬けになっている内部には、もちろんカウフスティアがいて、それをやったのはフェンリル達だ。

 フェンリルとそう大差ない大きさの体を持つカウフスティアを、噛み付いたと思えばそのまま振り回す、投げ飛ばすは当然。

 さらに爪で切り裂くのも見ている分には、簡単そうに行われた。


 最後に、示し合わせたフェンリル達がそれぞれ凍らせて終了というわけだ、呆気なかった。

 カウフスティアが悲鳴を上げるよりも早く仕留め、戦闘音よりも最初に吠えたフェリーの吠える声の方が大きかったくらい、静かな戦闘でもあった。

 まさしく森の狩人という称号を与えたい……称号なんて必要なのかとか、俺が与える権限とか意味とかないだろうけど。

 ちなみに、爪で斬り裂いたと言っても深手を負わせたり、止めを刺すためであって部位を切り離したりまではしていない。


 ニグレオスオークの氷漬けを簡単に斬れたのだから、それくらいできるだろうと思ったんだけど……フェリーからはそうするとその場で食べるならともかく、運ぶのが大変だと返ってきた。

 群れで行動するから、巣とか棲家など皆の所に持って帰ってから食べる、という考えもあるのか。

 何度も俺が持って帰るとか、ハンバーグになるとわかっているからかもしれないが。


「さて、あとは持って帰るだけだけど……当然冷たいよなぁ」

「つべたーい!」

「ワッフ、ワフゥ?」


 レオに他のカウフスティアに気付かれていないかなどを探ってもらった後、背中に乗ったまま氷漬けになっている物を指先でツンツンして確かめる。

 俺と同じように、リーザも手を伸ばして触って喜んでいた。

 レオも前足でテシテシと感触を確かめているようだ……肉球が冷えないのかな、まぁいいか。


「カウフスティア五体か……これは、何度か往復する必要がありそうかなぁ?」


 ニグレオスオークは人間とそう大差ない大きさだけど、カウフスティアはそれ以上。

 一体を運ぶのに、切り分けたとしても二、三人は最低限必要そうだ。

 現に、籠手があるためか凍っていても触れる近衛護衛さんが試しているが、三人でようやく持ち上げられるくらいだ。

 村までの距離を考えたら、身体強化の薬草を食べたとしても無理をして欲しくないから、一体につき四人はいるかもな。


「ガフ!」

「フェル?」


 五体いるから四人として計二十人、フェンリル達と協力して何度か往復してもらえば、少なくて済むかな……なんて頭の中で計算をしていた俺に向かって、レオの隣に来たフェルが吠えた。

 どうしたんだろうと、顔を向けて呼ぶ俺に対し、フェルはライラさんとシェリーを乗せたまま氷漬けになったカウフスティアに近付き、大きく口を開けてかぶりつく。


「アフ、アフー!」

「……咥えて運べる、のか? その、冷たかったり重すぎたりとか……大丈夫?」

「アフ!」

「キャゥ、キャゥー!」


 フェルの牙が氷漬けのカウフスティアに突き刺さり、そのまま咥えて持ち上げたフェル。

 カウフスティアを咥えているから、変わった鳴き声になっているがそれはともかく、同じくらいの体の大きさなのに大丈夫かなと心配したけど、問題ないと言うように鳴いた。

 シェリーは、そんなフェルの背中から楽しそうな鳴き声……凄い! とでも言っているようだな。


「ガウ!」

「フェン……?」

「ガウゥ……」


 そんなシェリーの様子を見たら、父親として黙っていられないのがテオ君を乗せたフェン。

 吠えてフェルの隣に並び立ち、別のカウフスティアを咥えて持ち上げた。

 シェリーにいいところを見せたいんだろうな……オーリエちゃんを乗せたリルルは、溜め息を吐いていたけど。

 ……子煩悩な父親が俺の周囲に多いな、とは思うけど俺自身もリーザの事があるから俺も大して変わらないか。


「じゃあ、運ぶのはフェンリル達に任せて……」


 フェルやフェンに続き、フェリーやリルルも同じく咥えて持ち上げてくれた。

 フェリー曰く、戦闘は他のフェンリル達に任せたから運ぶくらいはという事らしい。

 そういえば、フェンリル達が魔物を狩ってきた時も、氷漬けになった大量の魔物を運んで来ていたっけ……同じようにして運んだんだろう。

 あと、食べるためという目的があるのと一緒に、氷漬けになっているため血やら何やら、とにかく生き物を狩るうえで一番エグイ部分は控えめになっている。


 もしかしたら、フェンリル達による子供達への配慮なのかも……運びやすさとかもあるんだろうけど。

 ともかく近衛護衛さん達が驚いたり、テオ君やオーリエちゃんがおー! と楽しそうな歓声を上げる中、残り一体をフェンリルの一体が咥えて村に戻ろうとした時、リーザの様子がおかしい事に気付いた――。




読んで下さった方、皆様に感謝を。


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