カウフスティアはよく見知った姿でした
「カウフスティアを見つけた場合、複数でいる事がほとんどですので……森に村の者達が入った時に発見しても、すぐに逃げるようにしております」
オークも複数でいる事は多いけど、それより危険な魔物になるため基本的には狩るとかは考えないらしい。
とはいえ、オークを見てもそうそう狩ろうとまではならないみたいだけど……村の人達の数や、オークの数などを比べて判断するとか。
森に入っても危険を減らすための知恵とか、そんな感じだろう。
「森の奥なので、発見する事もそうある事ではありませんが、時折単独で森の浅い場所で見つかる場合があります……そうですな、年に一度程でしょうか」
「そういった時に、村の人達が集まってというわけですね?」
「はい。ですので、カウフスティアは村の者達にとって珍しいごちそうという位置づけです。複数いる場合は刺激しないよう気を付けますし、こちらからカウフスティアの集まっている場所に行く事はありませんから」
珍しいごちそうかぁ……だったら、カウフスティアを狩って持ち帰れば村の人達にもごちそうとして振舞えるな。
道案内としてハンネスさんに手伝ってもらっているし、村の人達との交流も兼ねられる。
大半は、フェンリル達の希望によってハンバーグになりそうだけど。
「じゃあ、村の人達のためにも頑張って持って帰らないといけませんね」
そう言って、意気込んでカウフスティアがいそうな場所へと向かった――。
「あれが、カウフスティアか……」
森の中をレオ達に走ってもらってから少し、大分村から離れたと思った頃にレオがニグレオスオークの時と同じく、気配を察知。
五、六体くらいの魔物が集まっていのがわかったらしい。
数がはっきりしないのは、五体以上の魔物の気配が点在しているからとの事だ。
ほぼ変わらない気配や匂いだったニグレオスオークの時とは違って、カウフスティアかははっきりしないが、場所と集まっている数からハンネスさんの知識を合わせると、おそらくそうだろうという事で一番近い場所へと向かう。
途中、距離が近付くにつれてフェンリル達も気配や匂いを察知し、そこからフェンリルの森で見た時と同じだから、カウフスティアで間違いないと判明。
カウフスティア、フェンリルの森にもいるのか……俺達が入った場所よりも、さらにもっと奥の方らしいけど。
ともあれ、再び陣形を組むようにして速度を緩めて近付く。
ニグレオスオークを倒した場所にフェンリルを二体置いて来たので、数は少なくなったけど今回はフェリーとフェン、リルルはレオの後ろに、残ったフェンリルをレオの前に並べる。
周囲の警戒は、レオの気配や匂い察知に頼る事にした。
周りを固めなくても、レオやフェンリル達なら何かあってもすぐに動いて対処できそうだったからでもある。
一応、近衛護衛さん達はフェンリル達の邪魔をしないよう、背中から降りて臨戦態勢を取ってもらっているしな。
テオ君とオーリエちゃんを守るため、一緒にフェンとリルルに乗っている班長さん達はそのままだけど。
そうして、見えてきたカウフスティアは五体、他の場所より少しだけ少ないみたいだ。
木々の合間から見える姿は、形としてはアウズフムラと同じ牛で、二回りくらい小さい……とはいえそれでもオークなどよりは大きいけど。
「……見覚えがあり過ぎるなぁ」
思わず呟きが漏れるが、それも当然。
カウフスティアは日本で、というか地球でも見た事のある牛の姿そのもの。
全体的に白い毛に所々黒い斑点のような毛がある……顔の半分以上が黒かったりもする。
直接見る機会は人によってあったりなかったりだけど、テレビとかの映像でなら何度も見るあの牛だ。
デフォルメされたら、何かの商品のマスコットにもなったりもするあの牛が五体、木々の合間から見えた。
多分同じくらいだし……日本人が初めて見たら、家畜化された牛と勘違いしてもおかしくないだろう。
「パパ?」
「いや、なんでもないよ」
呟きを聞いて、耳をピクピクッと動かしたリーザが背中を支える俺を見上げたのに対し、首を振っておく。
地球で見たような姿だって、今話す事じゃないからな。
あ、でも一点……見た事のある牛と違いがあった。
あのつぶらな瞳が、カウフスティアの方は真っ赤に染まっていて、少しだけ異様な雰囲気を放っている。
「……おかしいですね。カウフスティアの目が赤い」
「あれが通常、というわけではないんですか?」
俺が目の色に気付いたのとほぼ同時に、レオの後ろからハンネスさんの呟きが聞こえた。
「いえ、薄っすらと赤みがかった目ではあるのですが、あそこまでではありません。ただ、警戒が強いといいますか、興奮したり何かに襲い掛かる時には、あのように目が真っ赤になって光っているようにみえるのです」
「成る程……でも、俺達はまだ見つかっていませんよね。だとしたら、別の何かに対して興奮しているとか?」
つまり今、カウフスティアは何かに対して警戒し、興奮している状態という事らしい。
こちらから見えるなら向こうからも見えるはず、ではあるけどニグレオスオークの時のように、はっきりと目を向けて来るのはいないため、まだ見つかっていないはず。
というより、外敵を見つけたらカウフスティアは全力で向かって来ると聞いたので、目の色はともかくまだ俺達には気付いていないという証拠とも言えた。
「レオ、近くに他の魔物は?」
「ワフ……ワーフ、ワウ」
「そうか……」
同じカウフスティアの気配はあるけど、それ以外の気配は特にないらしい。
魔力を持たない……つまり魔物ではない鳥とかの動物はいるようだけど、もしかしてそれに対してとか?
いやでも、おとなしくしているのはそれだけじゃ説明がつかないか。
「ちょっと様子がおかしいけど、理由はわからないし……直接聞くわけにもいかないからな」
オークもそうだけど、アウズフムラやカウスティアとの会話は多分不可能。
リーザやデリアさんといった獣人でも、言葉がわからない魔物に分類される。
何故言葉がわからないのかは、理性が関係しているかもと考えられるけど、意思の疎通ができる相手じゃないので多少のおかしさはあってもやる事は変わらない。
ちなみに、多分としているのは従魔契約をしてシェリーとクレアが意思疎通できるように、例外的な方法があるかもしれないからだけど……他に方法があるっていうのは、今のところ聞いた事がない。
あと、従魔にできる魔物は理性があるためか、獣人とも会話できる、というのをセバスチャンさんが考察していたっけ――。
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