ここは任せて先に行く事にしました
鎧が役に立たないと予想する近衛護衛さんの呟き、それを俺が否定できない理由としてフェンリルのトイレ事情があったりする。
数も多く体も大きいし、そこらでさせるわけにもいかない……踏みたくないし。
そのため、できるだけ人の来ない場所で穴を掘ってもいい所を指定して、そこでやってもらうように教えてあるんだけど、前足で楽しそうに穴を掘った後は細切れになった石だった物とか見た事があった。
鎧との硬さを比べたりはしていないけど、軽々と硬そうな石を穴を掘るついでに細切れしているんだから、金属を切り裂けても不思議はない、と思う。
「一応聞いておきたいんだけど……」
「グルゥ?」
試さない事の一つだけど興味として、炎の魔法とかで融かしたりはできないのかと聞いてみると、フェリーから返ってきた答えは、使えないだった。
種族的なものなのか、フェンリルが使う魔法の中に炎というか火を出したりするような事はできないらしい。
……以前、レオは焚き火に火を点ける時に使っていたんだけど、シルバーフェンリルとフェンリルでは使える魔法が違うのか。
というか、炎とか氷とか、魔法の属性というかそういったものは限定されているんだな、獣人は体の強化が得意とかも前に聞いたし。
以前受けた説明と試した感じだと、俺というか人間は水や火だけでなく風の属性も扱えるようだったけど……人間は威力が低い代わりに、扱える範囲が広いとかそういう事だろうか?
魔法と言えば、関連したギフトを持っているユートさんだ、そのうち聞いてみよう。
困っているわけじゃないけど、もう少し何かの魔法を使ってみたい気もするからな。
「融かさなくても、氷が斬れるならなんとかなるか……けど、凍ったままの木はどうするか。放っておいたら融けるかな?」
「グルゥ、グルル」
「ママとは違って、勝手に解けるんだってー」
成る程成る程……レオのようにはできないため、自然と融ける凍らせ方しかできないのか。
……って、ん? つまりそれは、レオだったら融けない氷を作れるって事か? それは永久凍土的な……あれは地盤の事だけど、なんとなく言葉の響きとしては合っている気がしなくもない。
永久氷だと語呂が悪いし、そういえばシェリーを助ける時にトロルドを凍らせていたけど、あれはフィリップさん達が埋めてくれたからなぁ。
もしかしたら、今もまだ土の中で凍ったままになっていて、本当に永久凍土になりかけていたりするのかもしれない。
ま、まぁレオの事は今考えないでいいか、最強らしいし、人知の及ばない能力を持っていても不思議じゃないからな。
レオ自身は、楽しそうにオーリエちゃんの顔を舐めたりして、最強だとかをあまり感じさせないけど。
屋敷に戻ったら、オーリエちゃんはお風呂に入った方が良さそうだ、テオ君も一緒に服までべとべとになり始めているから、というのは置いておいて。
「それじゃ、ニグレオスオークはフェンリル達に斬り離してもらうとして、ただ待っていると時間がな……」
ニグレオスオークはいいとして、今日は他にもまだカウフスティアだっけか、牛の魔物らしいそちらも狩る予定だし屋敷に戻ったら、まだ残っている確認しないといけない書類がある。
時間をかけると、アルフレットさんに怒られそうだし残業みたいになってしまって、ライラさんや他の皆にも心配を掛けてしまいそうだ。
……俺自身は、ちょっとくらいの残業くらい平気なんだけど、あまり無理はしないよう約束しているからな。
「……では、我々の方で人を置きますので、そちらに任せて下さい」
「え、でもテオ君やオーリエちゃんは……」
考えていると、男性の近衛護衛さんが提案してくれた。
近衛護衛さんの方から誰かが残って、持ち帰るようにするという事らしいけど、肝心の護衛は大丈夫だろうか?
「いえ……先程の様子を見る限り、レオ様だけでなくフェンリル達がいれば、我々がいる必要もあまりなさそうですから。それに、全員が残るわけでもありません」
「そうですか……わかりました。それじゃ、お願いします」
そういうわけで、近衛護衛さんから二人程残ってもらい、同じくフェンリルも二体残って、氷漬けのニグレオスオークの対処をお願いする事になった。
残るフェンリルは、ニグレオスオークに飛びかかったフェンリル達だ。
フェリー曰く、自分達がやった事は自分達で片付けろとの事だ……割と自由に過ごしているのをよく見かけるフェンリル達も、リーダーは結構厳しいらしい。
「それじゃ、次はカウフスティアがいそうな場所を目指します。ハンネスさん、案内をよろしくお願いします」
「はい、畏まりました」
改めて、近衛護衛さんとフェンリルを残してリーザとレオに乗り、ハンネスさんの案内で森の中を移動。
離れる直前、勢いあまったフェンリルの一体が、折り重なって凍っているニグレオスオークをあっさり真っ二つにしたような気がするけど、運びやすくなったと思う事にした。
屋敷で食材の到着を待つヘレーナさん達が、美味しく料理してくれるだろうし、それまでは残った近衛護衛さん達がなんとかしてくれるだろう。
ちなみに、護衛班長である男女の近衛護衛さんは二人共、俺達と一緒に行動だ……フェンリル達に護衛を任せられるだろうとは考えても、一応近くにいて見守っておきたいらしい。
「結構奥まで入るんですね」
「はい。カウフスティアは獰猛な魔物ではありますが、オークのように獲物を探して動き回るという事をしないようで。森の奥に複数で固まって、近付いた者に襲い掛かるのです」
ニグレオスオークを倒した場所からさらに北東へと進む。
森を南に出た所にあるランジ村からはどんどん離れるけど、獰猛らしく近付くと危険だから、遠い方が村の人達が襲われる心配は減るだろう。
「獰猛って事は、アウズフムラとは違うんですね」
「アウズフムラ……話しには聞いた事がありますな。ここらの森にはいないようですが」
アウズフムラは、ブレイユ村近くの森……つまりフェンリルの森にいるものらしく、ランジ村北の森にはいないのか。
まぁ、探せばもしかしたらいるかもしれないし、また別の森にはいるんだろうけど。
ともあれ、警戒心が強くて基本的には他の魔物や人間などを見れば、逃げ出すアウズフムラとは違って、カウフスティアは近付けば襲って来ると。
アウズフムラは単独でいる事が多いらしいから、警戒心が強くなり、カウフスティアは複数でいるから気が強くなって獰猛になったのかもしれないな――。
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