急遽森の中に入る事になりました
「チャーハンというのもいいかもしれません。お米を炊くのではなく、炒めて作る物で……」
「おぉ……そのような料理が!」
俺が作っていたのは、もっぱら冷凍していたご飯を使ってだけど、生米からも作れなくはない。
醤油があるし、野菜なども一緒に炒めればそれだけで一食分の料理として出せるから、ヘレーナさん達の手間が省けるだろうし。
……生米からは、当然だけど少し手間がかかってしまうけどな。
そうして少しの間、本来の目的を忘れてご飯の調理に関して、ヘレーナさん達に話していった。
――数十分くらいが経過しただろうか。
ようやく厨房で相談するべき事を思い出した。
「ご飯やお米の活用は、また別の機会に……とは言っても、覚えている限りはほとんど話したので、何か思い出した時になりますけど」
そう言って、盛り上がってしまっていた話を中断。
思い出したら、とは言ったものの俺が知るほとんどは話したと思うので、今度ユートさんに何かないか聞いておこうと思う。
ともあれ、本題だ。
「えっと、ハンバーグの事なんですけど……」
フェルが、合い挽き肉の配合を変えた色んな種類の物を求めていると、ヘレーナさんに話す。
けどやっぱりというか、ヘレーナさんを始めとした厨房にいる料理人さん達は、難しい表情だ。
「うーん、そうですね……ハンバーグに使う挽き肉に不足はありませんが、種類はオークくらいしか今はありませんから、難しいですね」
「そうですよね、やっぱり急には厳しいですよね。近くに、挽き肉として使えそうな魔物がいれば、フェンリル達に狩って来てもらっても良かったんですけど……」
運動不足というわけじゃないけど、一部のフェンリルがもっと動きたそうにしている風でもあったからな。
まぁ子供達と楽しく遊ぶのでも十分満足そうだったけど、やり過ぎない程度であれば森に行って運動をするのも良さそうだし。
とはいえ、そんな都合良く食べられるオーク以外の魔物が、森にいるわけ……。
「それでしたら、村の方達から耳寄りな情報が……」
そう言って微笑むヘレーナさん。
新しく引っ越して来て間もないけど、食材に関する調査には余念がないらしい。
そういうわけで、新しい食材……というよりも、ハンバーグなどの食用にできそうな魔物の情報を聞く事になった。
とは言っても、ヘレーナさんからそういう魔物がいるらしいと聞いて、その後偶然屋敷を訪ねてきたハンネスさんに確かめて、生息域などの詳細を知ったんだけど。
なんというか、偶然が色々と重なって森へ魔物を狩りに行った方がいい、という状況におぜん立てされて行っている感が拭えない。
いや、誰が仕組んだ事でもないんだが。
どうせ、フェルのきっかけがなくてもそのうち話を聞いて、それらの魔物の事を知ったり、フェンリル達が狩って来ていただろうけども――。
と、いうわけで……と言っていいのか微妙だけど、色々とすっ飛ばして今俺は森の中にいる。
「レオ、まだ見つからないか?」
「ワフゥ」
「まだみたいだよパパ」
木々が生い茂る森の中、乗せてもらっているレオに問いかけると、首を振って鳴く。
リーザからも、レオがまだ見つからないと言っていると通訳……俺にはする必要ないんだけど、周囲の人達に知らせるためだ。
ヘレーナさんと話した後、ハンネスさんから話を聞いてフェンリル達に狩りに行ってもらおうか、と提案するため再び中庭に出た。
その時、レオが自分も行きたいという様子でさらに俺の服の袖を咥えて引っ張った。
レオが行くなら大丈夫だろうと、俺としては送り出して戻ってくる間に書類の確認を進めておこうと思ったんだけど、フェンリル達からも「一緒に行かないの?」という目をされてしまったから仕方ない。
フェリーを始めとしたフェンリル達、それからレオに一緒に行こうという目をされたら、俺には断る術はない……。
ともあれ、それから急いで準備……と言っても、念のため剣などの武器を持って行くくらいだが。
今回は、使う事はないだろうけどシェリーの牙を使った剣も持って来ている。
なんでも、これがある方がフェンリル達に俺の居場所がわかりやすいらしい……シェリーの魔力が蓄えられているからかもしれない。
そして、リーザとテオ君、それからオーリエちゃんも付いて行きたいと言い出し、ちょっとした混乱があったけど近衛護衛さんやフェンリルから絶対に離れない、という条件付きで許可が出た。
許可を出したのはユートさんとエッケンハルトさんだから、さもあらんというか許可出しちゃうよなぁという感想。
近衛護衛さん達は、完全武装をしたうえで村に来ている八人全員が集合。
フェンリル達に慣れてもらう意味もあり、それぞれがフェンリルに乗せてもらっている。
男性と女性の隊長格……近衛護衛さん達は班長と言っていたけど、その人達と一緒にテオ君とオーリエちゃんも一緒だな。
男性班長一人と一緒にテオ君、女性班長一人にオーリエちゃんで、乗っているのはフェンとリルルだ。
絶対守ると言わんばかりに、後ろで支えている近衛護衛さんは他の人達と違ってフェンリルへの恐れとかは、あまり感じていないみたいだな……ある意味良かったか。
残り六人の近衛護衛さんは、またそれぞれのフェンリルに分乗していて、そちらは結構オドオドしている雰囲気だ。
というか、完全武装だと鎧がかなり重そうなのに、乗せているフェン達は平気そうだな……さすがというところかな。
後意外だったのは、許可を求めた時にエッケンハルトさんやユートさんが付いてきそうだと思ったけど、来なかった。
カナートさんとの交渉が白熱しているらしい。
実際は、カナートさんと言うよりエルケリッヒさんやキースさんと、俺のいる屋敷、別邸、本邸それぞれにニャックを卸す数をどうするかでやり合っているとか。
ブレイユ村が生産地とはいえ、数に限りがあるからな……そっちに巻き込まれるより、こちらでレオ達と一緒に森に入った方が平和かもしれないと、少し安心。
完全に巻き込まれている状態のティルラちゃんには、後で美味しいハンバーグを食べてもらう事にしよう。
あと、クレアはまだ仕事があるからと屋敷に残っている……俺も残っているんだけどなぁ。
ただ前までなら一緒について行く、とクレアが言っていたはずなのが今は、俺と心が通じ合っている気がするから大丈夫、と言われたのには照れてしまったけど。
言われた時、他の使用人さん達がいてさらに恥ずかしさ倍増だったのは、忘れよう――。
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