ペータさんにちょっとした確認と話をしました
ジェーンさんに言って、カナートさんをキースさん達と話し合ってもらうようお願いする。
キースさんとクレアの使用人さんで、この屋敷での購入を、セバスチャンさんが別邸の分をというわけだな。
別邸で購入する話は既にしてあるけど、ブレイユ村だってニャックを無限に作れるわけじゃないから、どのような配分にするかを考えるのも必要だろう。
セバスチャンさんはこれからも別邸で、ティルラちゃんと一緒にいるはずだし……今はエルケリッヒさんとティルラちゃんにつきっきりだから、忙しかったら別の人に任せるだろう。
今は引っ越しの手伝いとして、別邸からの使用人さんが数人ほど屋敷に来ているし。
「はい、畏まりました。カナート様、どうぞこちらへ」
「えーと……?」
「ニャックはこれからも、この屋敷と別邸で購入したいと思っていますから、量や価格などの話をしてもらおうかと」
頷いて、カナートさんを案内するため出入り口に近付いて促すジェーンさん。
何の事かわからないカナートさんに、俺から簡単に説明しておく。
そういえば、交渉事などの担当がキースさんなのをカナートさんは知らないんだっけ、顔見せの時には合っていると思うけど。
俺も、ジェーンさんにお願いする時に結構言葉を端折ったからな。
「そういう事ですか。わかりました。それじゃ、俺はこれで」
「カナートさん……」
「村の利益をと言う所だが、あまり欲をかかないようにな?」
「わかってるって、ペータの爺さん。タクミ様には村も世話になったし、一番のお得意様だからな。利益を得ようなんて考えていないさ」
俺の言葉に頷き、立ち上がってジェーンさんのもとへ行くカナートさんに、デリアさんとペータさんが声を掛ける。
デリアさんは、親しい人がいなくなって心細いような視線を送っているけど……レオの前にいるのが久々なのもあるのかもしれない、怖くないですからねー。
ペータさんの言葉には、カナートさんが笑って答える。
利益は商売でもあるから当然求めるべきだと思うけど……まぁ、キースさん達ならその辺りを上手くやってくれるか。
俺だと、安くてもいいという言葉に甘えてしまいそうだが。
多少相場より安く、くらいは考えると思うけど……一方が得をして一方が損ばかりのような交渉はしない人達だ。
公爵家の関係者は、そうやって暴利を貪らないからこそ領内が発展するし、信頼されているんだと俺は思っている。
まぁ、そもそも価格に関しては既にブレイユ村の村長さんとセバスチャンさんで、交渉済みだから、あまり大きく変わる事はないんだろうけどな。
「それで、ペータさんには薬草畑で働く人達……言ってみれば、農業従事者かな? その人達のまとめ役になってもらおうと思います」
「はい。以前より伺っていましたが……本当に私でよろしいのでしょうか? 何分年なので……」
「問題ありません。ペータさんの部下として二人付けようと思います。その二人に、ペータさんから色々教えてもらえればと」
「成る程、後継者のようなものですね」
「はい。まぁ二人共まだ到着していないんですが……デリアさんやペータさんと同じくらいに来るかなと考えていたんですけどね」
ペータさんには薬草畑のまとめ役になってもらうと共に、フォイゲさんとウラさんの二人にこれまでペータさんが得てきたノウハウなどを授けて、いずれはと考えていた。
役職としては、ペータ係長にフォイゲ主任、ウラ主任だな。
まぁ、後々どちらをペータさんの代わりとして、係長にするかはまだ決めていないけど。
ちなみに、係長だの主任だのは俺がわかりやすく考えるための仮称なので、正式な物じゃない。
これも、近いうちに考えておかないとなぁ……慣れないだろうけど、このままの呼び方で行くのも駄目じゃないみたいだけども。
「まぁまとめ役と言っても、全体を見るくらいで……細かい事はフォイゲさんとウラさんに任せてしまっても構いません。そのあたりは、ペータさんに任せます」
「ふむ、あの若い男女の二人ですな。畏まりました」
「それと、もう一人……ガラグリオさんに今は一部のまとめを任せています」
「ガラグリオと言うと、あのタクミ様が怪我を治した?」
「はい。あの人は……」
フォイゲさんとウラさんの事も、顔見せの時に見知っているペータさんは、快く了承してくれた。
ちょっとだけ、ニヤリとしたようだから若い人に色々と教え込めるチャンスと思ったんだろう……ブレイユ村では、ペータさんの知識はあまり教えて欲しいと思う人がいなかったみたいだからな。
その他にも、ガラグリオさんの事も伝えておく。
畑をゆっくり耕すのと、フェンリル小屋の用意に関して年齢的にも経験的にも、一番向いてそうだったからな。
そちらも、ペータさんは了承してとりあえずは様子を見るとの事だった。
畑の方はともかく、小屋の建築に関してはペータさんは最低限くらいの知識らしいので、手伝うくらいで済ませるみたいだ。
ただ、もしそのガラグリオさんの……何故か一緒にリアネアさんの名前も出されたけど、働きによっては自分の代わりにできるかもしれない、とか考えているとか。
リアネアさんの名前を出したのは、ガラグリオさんと同じく俺が怪我を治した人物で、二人共俺に忠実だろうからって事らしい。
忠実だとか、そこまで重要だと俺は思っていないんだけど……とりあえずペータさんに任せる事にしたんだから、一旦任せてみよう。
人の上に立った事がない、後継者を育てるなんてのも一切考えた事がない俺が、あーだこーだと余計な事を言わない方がいいだろうからなぁ。
そうして、ペータさんとの話を終えて次は……。
「ペータさんは今話した通りでいいとして……次はデリアさんですね」
「はい!」
名前を呼んで、目を向けると殊更緊張した様子で返事をするデリアさん。
さっきの俺とレオの内緒話を聞いた事での恥ずかしさは、もうなくなったようだけど……もう少しリラックスして欲しいところだ。
「デリアさんは、リーザの家庭教師ですね。ほらリーザ……ごにょごにょごにょ」
確認後、リーザに耳打ち。
今度は聴覚の鋭いデリアさんには聞こえないよう、かなり小さな声だ。
レオには聞こえたようで耳をピクピクッとさせていたけど……声を出している俺でさえ、本当に聞こえているか不安になるくらいなのに、さすがシルバーフェンリルの聴覚ってところか――。
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