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1463/1998

書類仕事を始めました



「えーっと……ガラグリオさんは屋敷で、他の人は……」


 今確認しているのは、従業員さん達に関する書類。

 雇用者リストの時にもあった、名前を含む経歴やどこに住むかの情報等々……完全に覚える必要はないみたいだけど、ある程度は知っておかないといけない事ばかりだ。

 村の方に住むのか、屋敷に住むのかが別れるので、そちらは覚えて把握しておかなきゃな。


「まだ本格的に始まっていないんですけど……ちょっと多過ぎませんか、アルフレットさん?」


 愚痴るように、執務机の前にあるテーブルについて、俺の前よりさらに高く積まれている書類を見ているアルフレットさんに声をかける。

 あれ、アルフレットさんが確認した後は俺が見る事になるんだろうなぁ……さすがに全部じゃないと思うけど。


「始まる前だからこそです。準備期間ですから、特に多くなります。とはいえ、始まれば始まったで、別に確認する書類が追加されますが……」

「うへぇ……」


 思わず変な声が出てしまった。

 まぁ開始するにあたって確認する事、知っておかなきゃいけない事などがあるから、今は仕方ないか。

 別に確認する書類というのは、多分収支報告とかそういう経理に関する事だろうけど。

 他にもあるんだろうなぁ。


 キースさんも、俺に追加の書類を持ってきたあとは同じテーブルで、書類の確認をしているし……そちらは俺の所より書類の高さは低い。

 経理担当だから、それ関係の書類だろうし、あれもまた後で俺の所に回されそうだ。


「まぁ、量はさほど多くならないかと。とにかく、今は目の前の書類を片付けるよう頑張ってください」

「はい……」

「どうぞ、テオ様」

「あ、ありがとうございます」


 キースさんの言葉に頷きながら、書類の確認を続ける俺を余所に、ライラさんがテオ君にお茶を出していた。

 執務室には俺とアルフレットさん、キースさんの他に、ライラさんとテオ君がいる。

 テオ君は、隅の方に用意されたテーブルと椅子に行儀よく座って、ライラさんから入れてもらったお茶を飲み始めた……退屈じゃないのかな?

 執務室に行く俺にテオ君が付いて来たんだけど、何やら仕事をするところを見たかったらしい。


 誰にでも見せていい物ではないと思うけど、テオ君は立場が立場なので一応良しとした。

 本当にただのお客様だったら駄目だけどな。

 あと、身分は一般の人と同じとしているけど、テオ君の扱いは俺やクレアのお客様として、ライラさん達は「テオ様」と呼ぶようになっている。


 それからゲルダさんは、ジェーンさんやチタさんと散歩に行ったフェンリル達のお迎えだ。

 ついでに、書類の束をミリナちゃんに持って行ってもいる……新しい薬の件で、ミリナちゃんに確認してもらわなければいけない事があるからな。

 あっちも忙しくしてそうだ。


「旦那様、こちらの書類もお願いします」


 アルフレットさんが確認した書類の一部が、まとめて俺の机に置かれる。

 さらに高くなった書類の束……多分今、執務室の出入り口からは俺の顔が見えないだろう、というくらい高くなっていた。


「あー……はい、わかりました。――テオ君、退屈じゃない? なんなら、外に出てレオ達と合流して来てもいいんだよ?」

「いえ、こうしているのも楽しいです!」


 出入り口の扉は見えないが、俺の方から隅に座っているテオ君が足をプラプラさせていたのが見えたので、アルフレットさんに頷いた後、書類の確認を続けながら聞いてみる。

 ただ談笑するわけでもなく、書類を確認している様子なんて見ていても退屈だろうと思ったんだけど……テオ君からは思わぬ返事が返ってきた。

 聞いて見ると、テオ君は父親が同じように机に向かっているのを見ている事がよくあったらしく、それも楽しい時間だと考えていたみたいだ。


 雰囲気や人は全く違うけど、テオ君にとってデスクワークの様子を見るのは、好きみたいだな。

 まぁ、テオ君が楽しいんなら気にしなくていいか。

 ライラさんもいてくれるから、任せて良さそうだし。

 ちなみにライラさんは、俺の身辺をお世話するために書類仕事はあまりやらない……アルフレットさんとの役割分担らしい。


 とはいえ、手伝ってくれる事もあるようだし、全く書類には手を付けないわけじゃない。

 今は、テオ君がいるからそちらのお世話に集中しているんだけど。


「……そうだ、アルフレットさん、キースさん、それにライラさんも」

「どうされましたか?」

「何か、書類で気になる事でも?」

「お茶のおかわりでしょうか、旦那様?」


 ふと思い出して、テオ君以外の部屋にいる人達へと声を掛ける……もちろん、書類の確認を続けながらだ。

 声を掛けた三人が、俺へと声と共に意識を向けるのを感じる。


「あ、いえ、お茶ではないんですけど……その旦那様という呼び方を、少し変えませんか?」

「他に、お望みの呼び方が?」

「そういうわけじゃないんですけどね。でも今、エッケンハルトさんもここにいるので、同じ呼び方だと少しややこしくて……」


 呼ばれ慣れていない、という事もあるけどややこしいからという理由が一番だ。

 俺を旦那様と呼ぶのは、俺が雇った使用人さんだけだし、エッケンハルトさんを旦那様と呼ぶのも、侯爵家所属の使用人さん達だけ。

 人を見ればエッケンハルトさんと一緒にいても、一応どちらを呼んでいるのかわかるけど、一瞬迷ってしまう事もある。

 それに、俺はまだしも村の人達とか、使用人さんがどこの所属かなどに詳しくない人からするとわからないだろうからな。


「そうですね……仕えている方をはっきりさせるためにも、いい案かもしれません」

「まぁ、公爵家の使用人だった者ばかりなので、場合によっては言い間違えという事もあり得ます。それを防ぐためにも良い事かと」


 必ずしも旦那様、という呼び方をしなければならないわけではなく、慣例みたいなものなので、アルフレットさんとキースさんは賛成と。

 ミリナちゃんは使用人見習いのような事もやっているけど、正式な使用人じゃないし、現状雇っている人達は皆公爵家の使用人だった人達。

 だから、俺の事を旦那様と呼ぶのはともかく、エッケンハルトさんがいると間違えて呼ぶ可能性もなくはない。


 ……アルフレットさんやキースさんは、その辺りきっちりしていそうなので間違えないだろうけど、全員が絶対とまでは言えないからな。

 残ったライラさんは……。




読んで下さった方、皆様に感謝を。


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