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クレアの話に移りました



「はぁ……旦那様はまったく」

「ふっふっふ、早速執事に溜め息を吐かれているな」

「タクミ様は、旦那様とは意図が違いますが……」

「うむ。セバスチャンの言う通りだな。皆の雰囲気を変えようとしたのだろう、キースもそれがわかっているようだ。使用人を振り回して溜め息を吐かれるハルトとは、大違いだ」


 使用人さん達が俺に対して旦那様という人と、エッケンハルトさんに対して旦那様と呼ぶ人が混ざって、ちょっとややこしいな。

 エッケンハルトさんがいる時だけでも、わかりやすいように俺への呼び方を少し考え直した方がいいかもしれないな。

 ともあれ、キースさんの溜め息に反応して、笑うエッケンハルトさんにセバスチャンさんとエルケリッヒさんが、ジト目をしながら突っ込む。

 きっとエッケンハルトさんは、使用人に溜め息を吐かれる仲間を得たような気分だったんだろう……実際、何度もセバスチャンさん達に溜め息を吐かれている場面を見ているからな。


「はぁ……」


 このように、クレアにも溜め息を吐かれているのを何度も……って、クレア、溜め息だけじゃなくて何か言わないと……。


「ク、クレア? さすがに無言で溜め息というのは、パパ辛いぞ?」


 ほら、エッケンハルトさんが涙目だ。

 クレアがパパなんて言った事はないから、ここまでの流れも含めて、なんとなくほとんど冗談なんだろうなというのがわかったけど。


「パパなんて私は呼んでいませんよ、お父様……」


 もう一度、溜め息を吐いて和やかな雰囲気になった後、クレアが一歩前に出る。


「それでは、お父様は放っておいて……先程キースが言っていた販路について私から」


 販路については、俺やキースさんではなくクレアの担当になる。

 そのためこれからは、クレアが皆に話す番だ。


「……私の事は放っておくのか。閣下と違って、その扱いは悲しいぞ」

「まぁまぁ、旦那様。これからクレアお嬢様の晴れ舞台ですから」

「おぉ、そうだったな!」

「クレア、お爺ちゃんがしっかり見ておくからな!」


 一部の緊張感がない人達……リーベルト家とセバスチャンさん。

 まぁ、娘や孫娘の発表会を見る保護者達といった感じか……クレア、やりづらいだろうなぁ……さっきエッケンハルトさんがわざと場を和ませるための冗談と考えたのは、もしかしたら間違いで素だったのかもしれない。

 唯一、ティルラちゃんだけは少し緊張した面持ちで、クレアを見ているのが救いか。

 緊張している理由は、全部終わってからの事だろうけど。


「……お父様、お爺様、それからセバスチャンも、話しづらくなるからやめて下さい!」


 クレアが怒り、エッケンハルトさん達が肩を竦める。

 その様子は「怒られてしまったが、それもまた良し」と言っているような雰囲気だったけど、クレアのためにも黙っておく事にした。

 ここにユートさんがいなくて良かった……いたら、全力で話が逸れる事間違いなしだっただろうから。

 ルグレッタさんが止めてくれるだろうけど。


「んんっ! お父様達の事は気にせず、販路については私とその部下達が担当します」


 咳払いし、話し始めるクレア。

 なんとなく、キースさんが前に出て話した時より和やかな雰囲気なのは、エッケンハルトさん達のおかげか。

 もう、本気なのか冗談だったのか、よくわからないな。

 いやある意味、あれがあの人達の本気なのかもしれないが……。


「ここにはいませんが、私の従魔のシェリーとその母親のフェンリル、リルルも同じく販路を拡げるための担当です。――エメラダ、こちらに。それから……」

「は、はい!」


 クレアがエメラダさんを呼び、従業員さんの中から十人程の人達を自分の所へと呼び寄せる。

 外部販売、交渉班の人達だな……本当はもっといるけど、俺の方と同じくまた到着していない人達だ。


「全員ではありませんが、こちらのエメラダ達と共にランジ村の外に出て、公爵領内の村や街での販売を担ってもらえる交渉します。販売を請け負ってくれる、またはこちらが用意した者に販売を任せる場合の輸送も担当します。そのための、リルルとシェリーです」


 エメラダさん達を紹介しつつ、話すクレア。

 まぁ皆エメラダさん達の事は別邸に招いたりしているので知っているけど、クレアを含めて何をするのかはっきりと表明するためだな。

 リルルは輸送のためだけじゃなく、シェリーと一緒にクレアの護衛も兼ねている。

 あとついでに、駅馬でフェンリルが稼働し始めた時のための広告塔だったりもするのは、今はいいか。


「クレア、その交渉についてだが……」

「はい、わかっておりますお父様。決して、公爵家を盾にして迫ったりはしません」

「うむ、それがわかっているなら良い。そうは言っても、相手は公爵家と見るだろうがな」

「それは、仕方ないだろうな……」


 エッケンハルトさんに頷くクレア。

 難しい表情だが、エルケリッヒさんもエッケンハルトさんの言葉に頷いている。

 以前クレアから聞いた、公爵家という権力を笠に着て強制しない……という事の確認だろう。

 今回は特に、公爵家としての行動というよりも共同運営となっている、俺との薬草畑のためだから権力を使うのは良くない。


 もちろん、使わなければいけない状況だってあるだろうけどな。

 ともあれ、クレアが公爵家のご令嬢だっていうのは公爵領内では当然知れ渡っているため、交渉を持ち掛けられた側はエッケンハルトさんの言う通り、公爵家として動いているとみるだろう。

 だから……。


「それに、基本的に私はただのクレア、とだけ名乗ろうかと思います」

「……リーベルト家、ひいては公爵家としてではないと示すためか」

「はい。私の顔を知らない人はもちろんいます。ですので、クレアと名乗るだけであれば、相手側は気付かない可能性も高いですから……少しだけ、騙すようになってしまいますが仕方ありません」


 あくまで、俺と共同で運営する人物として、リーベルト家や公爵家とは名乗らないようにする、それはクレアが言い出した事だったりする。

 まぁクレアを見た事がない、クレアという名に聞き覚えがない人は公爵領内ではあまり多くないので、気付かせずに交渉できるのは一部だけだろうけど。

 ただ知っていても、クレアがリーベルトと名乗らない意味を考えて、貴族としてではないと考えてくれれる人もいるだろう、と期待もしているとか――。




読んで下さった方、皆様に感謝を。


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