コッカー達の事も紹介しました
「お掃除……とは一体?」
「えっとですね……」
ともあれ、ティルラちゃんの説明だけでは不十分なので、首を傾げているエルケリッヒさんにコッカー達の役割を伝える。
どこからともなく……というか、外にいるフェンリル達の食事の用意を指揮していたらしい、セバスチャンさんが現れ、俺やクレア、ティルラちゃんの説明を掻っ攫って行ったけど。
説明をするチャンスだと、何かしらの気配を察知したんだろうか?
まぁ、説明してくれる分には助かるんだけどな。
「ふむ、そのような事が。いや、森の掃除屋などと呼ばれているのは知っていたが……」
「コカトリスの事は私もいくつか、聞いた事があります。成長したコカトリスの肉は、淡泊でありながらとても美味だとも……」
「ピ!?」
「ピピィ!?」
コッカーとトリース、食料扱い再び。
翼を広げたまま、ビクッ! と体を震わせて、鳴き声を上げていた。
「お父様、コッカーとトリースにはちゃんと役割があるのですから、そのくらいに」
「おぉ、すまん。ただそうだったと事実の確認をだな……いや、すまん。しかし、このコカトリスの子供達が、そのような事をな……?」
クレアの注意に、後頭部に手を当てながらコッカー達に謝るエッケンハルトさん。
なんとか、コッカーとトリースの体の震えは止まったようだ。
「一度別邸に行って庭を見てみればわかりますよ、エッケンハルトさん。俺が多くの花を作ったのもありますけど、植物が生き生きとしています」
「旦那様が以前訪れた時から、多少の様変わりをしたようにも感じられるかもしれませんな」
様変わりしたのは、大半が俺の『雑草栽培』で多くの花を植えているからだけど。
この世界にあるかどうかわからない、日本で栽培されていた花だから。
けど、それを差し引いても元からあった木々や草花は、これまで以上に整備されていて、伸び伸びと育っていると思う。
もちろん、剪定はさせてもらっているけど、コッカー達が来てから別邸の周辺が一段階雰囲気が良くなったような気すらする。
「そこまでなのか。タクミ殿とセバスチャンが言うのだから、コカトリスを使った植物栽培は有用なのかもしれんな」
「ピ!」
「ピピィ!」
食べられる方向じゃなく感心されて、元気を取り戻したコッカー達はまた誇るようにエッケンハルトさんに対して鳴いた。
震えていたのに、変わり身が早いな。
「では、このコカトリスの子供達……コッカーとトリースだったか。二体は、ここでタクミ殿を手伝ってもらうのか」
「あ、いえ。コッカー達は別邸の方にと考えています。まだここでは、薬草畑が始まっていませんし……」
エルケリッヒさんの言葉に、首を振って否定しコッカー達はラーレやティルラちゃんと一緒に、別邸に戻る事を伝える。
レオやシェリー、俺やクレアがいなくなってコッカー達もいなくなったら、ティルラちゃんが凄く寂しがるだろう……というのもあるし、折角別邸の植物整備に慣れたところで、別の場所にというのもな。
コッカー達は気にしないかもしれないけど。
あと、まだここの屋敷も建ったばかり、畑もこれからだからコッカー達の仕事がしばらくない。
庭にある程度木々や草花は植えてあるけど、植え替えてすぐみたいだから、コッカー達が何かをするほどでもないというのもある。
パトロールは、コッカー達にとっておやつの時間のような意味合いもあるみたいだから、いきなりおやつ抜きにするのも悪い。
まぁ、今はそのおやつを抜いた状態でここまでついて来ているんだけど……別邸に戻ったら、存分に植物に付いた虫なんかを食べて欲しい。
住環境に必要な綺麗な砂は、こちらで『雑草栽培』を使って発生すればたっぷり送るから。
「えっと、本当に俺でいいんですか?」
「クレアもいるとはいえ、ここの主人はタクミ殿だ。状況によって変わる事もあろうが、ここにいる者でタクミ殿に反感を持つ者はおらんだろう」
ラーレやコッカー達の紹介を終えてテーブルにつき、昼食をと思ったところで、皆に開始の合図をする役目を任される。
その場を仕切る人物が、つまり立場が上の人がやるような流れになっているらしい。
これまではクレアがやっていて、エッケンハルトさんがいる時はエッケンハルトさんだったんだけど……今朝は特にそんな事なかったのになぁ。
とはいえ公爵家の面々を前に、俺が仕切って食事の挨拶をというのはなんというか、しり込みしてしまう感覚がある、まだ小市民的な感覚が抜けていないからだろう。
「そうです、タクミさん。タクミさんが相応しいと僕も思います!」
「わ、私もそう思いますよ、タクミさん」
テオ君もエルケリッヒさんに同意し、尊敬の眼差しを向けて来るが……何故かクレアが対抗するように頷いていた。
クレア、テオ君に何かあるんだろうか?
「そうだよタクミ君、ハルトの言う通りだ。それよりも、お腹が減っているから早く食べたい」
「……閣下は、少しくらい我慢するくらいの方が、喜ぶのではないですか?」
「いやぁ、さすがに目の前に美味しそうな料理を並べられておあずけされるのは……いや、それもそれで? 一度試して……」
「それは試さなくていいから。はぁ、わかりました」
ユートさんとルグレッタさんのやりとりはともかく……とりあえず、食事時に変な趣味を発揮しないで欲しい。
溜め息を吐き、承諾する。
とはいっても特に大袈裟な挨拶をしなきゃいけないわけではなく、ただ簡単な言葉をというだけなんだけどな。
「では……作ってくれた料理人の皆さんに感謝しつつ、頂きましょう。――頂きます」
「はい! えっと、頂き……ます?」
「「頂きます」」
「ワッフ!」
料理を持って来てくれていたヘレーナさん達がいる方へ、視線を送って感謝をしつつ、皆に宣言。
その直後に改めて、俺だけ手を合わせる……なんとなく、日本人としてこれはやっておきたかった。
エルケリッヒさんとエッケンハルトさんは大きく頷き、料理に手を伸ばして豪快に食べ始めるのは、親子で似るんだなぁと感心するばかりだ。
テオ君は、俺が手を合わせるのを見て真似をして、オーリエちゃんはそんなテオ君を不思議そうに見ていた。
クレアとティルラちゃんは、ずっと俺が食事を開始する時に手を合わせるのを見ていたのと、意味も教えてあるので、慣れた様子で手を合わせる。
レオも鳴いて、食事を開始……それに伴い、フェリー達も使用人さん達が用意してくれた食事を開始した――。
読んで下さった方、皆様に感謝を。
別作品も連載投稿しております。
作品ページへはページ下部にリンクがありますのでそちらからお願いします。
面白いな、続きが読みたいな、と思われた方はページ下部から評価の方をお願いします。
また、ブックマークも是非お願い致します。







