クレアとの事も認められたようでした
「うむ、認めよう。いや、レオ様とも一緒にいるタクミ殿。そして、ユート閣下と……いや、これは言うまい」
「お爺様?」
頷くエルケリッヒさんは、途中で言葉を濁した。
クレアは首を傾げているが、多分ユートさんと同じ異世界からとか言おうとしたのだろう。
エッケンハルトさんやテオ君は知っている事だけど、まだ知らされていないクレアや、使用人さん達もいるからな。
「ともあれ、私が認めるかどうかというのもおこがましいな。ハルトも認めているようだし、私から言う事は何もない。二人共、お互いを大事にするのだぞ? できれば、クレアは泣かせないようにして欲しい、というのが祖父としての思いだ、タクミ殿」
「はい。必ず……と約束できる程の自信はありませんが、クレアを大事にする事、一緒に笑い合って行こうという気持ちは、誰にも負けません」
おこがましいというのは、レオがいる影響だろう。
ともあれ、真剣ながらも孫を想う祖父として正面から言うエルケリッヒさんには、俺なりの答えを返す。
クレアを不幸にしたり泣かせたりなんて、したいとは一切思わないけど……でも俺自身は絶対にそうできる自信があるわけじゃないし、できる人間だとも思っていない。
それなら、大事にする事は最低限の約束として、笑って幸せであると示す事はできるだろうと、そう考えている。
「飾らない言葉、誠実な人間なのだな、タクミ殿は」
「タクミ殿はもう少し、自分に自信を持っていいと私は思うが……だが、だからこそ真っ直ぐに真剣な想いが伝わってくるように思いますな、父上。私から見ても、誠実な人間……誠実であろうとする男だと感じていますよ」
「うむ」
感心するように頷くエルケリッヒさんに、エッケンハルトさんが言う。
自分が誠実な人間であると自負しているわけではないけど、誠実であろうとする事はできるからな。
エッケンハルトさんが言うように、見抜かれているみたいではあるけど。
「私も、タクミさんと一緒に笑い合えるよう、タクミさんを大事に想って行こうと思います……ふふ」
クレアも俺に続いてそう言った跡、顔を綻ばせて笑った。
自分が言った言葉か俺の言葉かわからないけど、照れて頬を染めるクレアは花が咲いたようだ。
「なんとも幸せそうではないか、くはっはっはっは! だがクレアよ、ギフトを持ち、レオ様と共にいるタクミ殿と一緒にというのが、どういう事だか理解しているな?」
「はい、お爺様。すでに覚悟はしています。それに、私よりも相応しい者がおりますので」
「そうか……」
「えっと、なんの話ですか?」
クレアを見て大きな声で笑うエルケリッヒさんは、続いて俺にはわからない話を話をした。
俺やレオと一緒にいる事が、何かあるんだろうか?
なんとなく、エルケリッヒさんが寂しそうな雰囲気になった気がするけど……。
「少しな。タクミ殿にも、いずれ話す時が来るだろう」
「はぁ……」
なんとなく誤魔化された気がするけど……今話す事じゃないみたいだから、突っ込んで聞かない方が良さそうだ。
それにしても、クレアが言っていた相応しい者って一体?
「まぁ、真面目な話はここまでにしてだ……どうせ後で別の話をする事になるだろうからな。ともあれ、クレアの事をよろしく頼む、タクミ殿。――そしてクレアも、今ワシやハルトの前で言った事を忘れずにな」
「はい!」
「えぇ、お爺様」
リーベルト家の三人が少し重い雰囲気になったのを払拭するように、話を変えるエルケリッヒさん。
何はともあれ、認めてくれたようで良かった……着実に外堀が埋められているような気もするが、少しずつ覚悟は決まって来ている。
ただ、無意識に握っていた拳にじっとりと汗をかいていたりもした。
付き合っている女性の家族、父親と祖父だから緊張していたんだろう……同じ状況で緊張しない男なんていない気がするが。
ましてや、相手が貴族位でも高位の公爵家で、その先代当主様と現当主様という大物だからなぁ。
エッケンハルトさんは、親しみやすい人だから忘れがちだけど……。
それから、また少しだけ談笑という名の俺やクレアをからかう、エルケリッヒさんとエッケンハルトさん相手に四苦八苦する。
そんな中、ふとエルケリッヒさんがレオと一緒にいるリーザを見て、目を細めた。
ちなみにテオ君はいつの間にか、オーリエちゃんと一緒に伏せたレオの背中に乗っている。
ユートさんは、レオの毛の中に隠れたフェヤリネッテを探しているようだけど……移動しているのか、見つかっていない様子。
というかユートさん、フェヤリネッテの事をまだ諦めていなかったのか、さっきちゃんと紹介や事情の説明はしたのに。
「……昨日は暗かったためにあまりよく見ていなかったが……やはり獣人か。タクミ殿の娘として引き取ったと聞いているが?」
「あ、はい。ラクトスのスラムにいたのを見つけて。他に身寄りもなさそうでしたし、孤児院もいっぱいだったみたいなので……」
一応リーザの事も獣人だと紹介してはいたけど、昨夜はテオ君達の事もあったから詳細はまだだった。
引き取った理由なども含めて、この機会にリーザの事を話しておく。
「ふむ、レオ様が仰られたのであれば、我々公爵家としては協力するだけだな」
「はい、父上。私もそう考えましたので、タクミ殿とレオ様が別邸へと連れて行くのに賛成しました」
「リーザちゃんだけを特別扱い、というわけにはいきませんが……レオ様とタクミさんが求めた事ですから。私も、境遇を知って保護したいと賛成しました。今では、それが正しかったと思っています。タクミさんやレオ様、それにティルラとも一緒にいて笑ってくれていますから」
お世話になっている身で、リーザを屋敷へ連れて行くのはどうかなと思ったけど、レオが言った事、リーザの境遇や孤児院の状況から、エッケンハルトさんやクレアからは反対されなかった。
クレアが言うように、かわいそうな境遇だからと同情して肩入れするのは、公爵家としては正しくないのかもしれないけど、それでも受け入れてくれたのは感謝している。
俺をパパと慕ってくれたのは、保護すると決めた後の事だけど、今では本当の娘のように思っているくらいだからな――。
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