ミリナちゃんと薬の勉強を始めました
「よし、とりあえず鍛錬はこのくらいにしておくか」
「タクミさんはもう終わりですか?」
ミリナちゃんと約束した1時間、鍛錬に集中してある程度こなした。
いつもよりは少ないが、後は夜の素振りを頑張る事にしよう。
それに、明日からはまたレオとの鍛錬もあるしな……今日はラクトスの街に行ったから無かったけど。
「これから勉強があるんだよ。ティルラちゃんもするかい?」
「私は鍛錬を頑張ります!」
俺が鍛錬を終えようとしてる事に、首を傾げていたティルラちゃんを誘うと、勉強をあまりしたくないからか、すぐに鍛錬へと戻った。
そんなティルラちゃんに苦笑をしながら、俺は裏庭を離れて食堂へ戻る……おっと、その前に汗を拭いておかないと。
レオは俺に付いて来ているが、シェリーは残ってティルラちゃんを見守っている。
俺と一緒に来たら勉強があるとわかってるからかな?
「お待たせ、ミリナちゃん」
「師匠、お待ちしてました」
食堂に戻り、ライラさんと談笑していたミリナちゃんに声を掛ける。
同じ孤児院出身の知り合い同士、仲が良さそうで何よりだ。
「それじゃ、薬の勉強だけど……どうしようか?」
「師匠、考えてないんですか?」
「ワフゥ」
いざ薬の知識を学ぼうとしても、何からすればいいのかわからない。
薬草の種類を覚える? 薬草を混ぜて調合する方法を調べる? 病の症状を調べてどんな薬が効くかを学ぶ?
どれからして良いのか……。
そんな俺を、ミリナちゃんとレオは呆れたように見ている。
師匠としての威厳が……!
元々無いんだろうけどな。
「こんな時にセバスチャンさんがいればなぁ……色々教えてくれそうなんだけど」
「タクミ様、お預かりしている物がございます」
「はい?」
ライラさんが差し出して来たのは、一冊の本。
その本の表紙には、「初めての薬学~基礎知識編~」と書かれていた。
「これは……セバスチャンさんが?」
「はい。タクミ様がお困りのようでしたら、お渡しするようにと」
「そうですか……ありがとうございます」
セバスチャンさんは、俺とミリナちゃんが、何をどうして勉強をするのか悩むと予想していたようだ。
さすがだと思う一方で、俺の事を簡単に見抜くセバスチャンさんが少し怖い。
忙しい中、本を用意してくれたセバスチャンさんに感謝をしつつ、これでミリナちゃんと一緒に基礎から学んで行こうと思う。
「ミリナちゃん、今日はこの本で色々と勉強して行こう」
「はい!」
「タクミ様、ミリナは今日この屋敷に来たばかりです。程々になさって下さいね」
「大丈夫です。しっかり勉強しますから!」
ライラさんの言葉に、ミリナちゃんが意気込みを見せるが、確かに今日ここに来たばかりだからな。
知り合いがこの屋敷にいると言っても、孤児院の皆とは別れたばかりだ。
荷物を纏める事や、移動もあって疲れも多少はあるだろうから、ライラさんの言うように程々にしておこう。
「場所はどうしようか……ライラさん、客間は使えますか?」
「はい、大丈夫ですよ」
「じゃあ、客間で勉強しよう。行こうか、ミリナちゃん」
「はい、わかりました!」
「ワフ!」
客間が使えるようだから、そこで勉強をする事にした。
俺の部屋でも良いんだが、机と椅子がひとつづつしか無いからな。
一人ならそれでも良いが、ミリナちゃんも一緒にとなると不便だろう。
何故かミリナちゃんと同じように、意気込みを感じるレオの返事を聞きながら、俺達は客間へと向かった。
……もしかして、レオも薬の知識を勉強したいのか?
「こちらをお使い下さい」
「ありがとうございます」
「ありがとうございます!」
ライラさんがノート代わりの紙を数枚と、羽ペンを用意してくれたので、それを使ってミリナちゃんと勉強だ。
客間のテーブルにミリナちゃんと並んで座り、セバスチャンさんから預かった本を開く。
レオは、大きい体を生かして俺達の後ろから本を覗いている。
本当にお前も勉強する気なのか……。
「ふむ……ふむ……成る程」
「むー……難しいです……」
この世界の言葉で書いてある本を読みながら、要点を纏めて紙に書く。
ミリナちゃんにはどうやら、少し難しいみたいだ。
「……師匠……すみません、これはどういう事なんですか?」
「えっと……これはね……」
時折、内容を理解出来なかったミリナちゃんから、質問を受けつつ勉強を進める。
後ろで本を覗いてるレオが頷いたりしてるけど……理解出来てるのか?
「ふむ……こうなると薬草をいくつか使って実践してみたくなるが……」
「師匠の能力を使うんですか?」
「まぁ、使って色々やってみたいとは思うけどね。でも……ほらここ」
俺が『雑草栽培』を使って、本の内容を実践してみようか考えてると、ミリナちゃんが興味を示した。
能力を見たいようだな……けど俺は、ミリナちゃんに残念なお知らせとして、本のある部分を示した。
「ええと……初心者が興味本位で調合をするのは危険が伴う。実践したくなる気持ちを抑えて、まずは知識を学ぶべし」
「そう書いてあるね」
「……残念です。師匠のギフトを見たかったんですが」
俺が試そうと考えたのは、薬草と薬草の調合……複数の薬草を組み合わせて、別の効果を持つ薬を作る事だ。
だが本には、今ミリナちゃんが読んだ事が書いてある。
確かにその通りだと思う……興味本位で調合して、毒が出来たり薬として意味の無い物が出来たりするかもしれないからな。
「そんなに見たかったんだ?」
「はい、あんな奇跡は早々見られる物じゃありませんから!」
ギフトを見たかった、と言うミリナちゃんに聞いてみると、目を輝かせて答えてくれた。
そんなに目を輝かせる程の事なのか……まぁ、確かに奇跡というのはわかる気がするが……。
「じゃあ、明日にでも見せてあげるよ」
「本当ですか!? でも、本には……」
「調合するわけじゃないよ。ただ、薬草をいくつか作らないといけないからね。その時に『雑草栽培』を使うから、見学してみると良いよ」
「そうなんですか! ありがとうございます!」
カレスさんの店に卸す薬草は、毎日のように作ってるからな。
調合では無く、栽培するだけなら危険も無い。
これをミリナちゃんに見せれば良いだろう。
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