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1396/1998

二人の素性は大体予想通りみたいでした



「まぁ、大体クレアちゃんが予想している通りだし、大方のところはタクミ君も予想していると思うけど、ここでは僕の親戚の子を連れてきただけで……そうだね、ちょっといいところのお坊ちゃんとお嬢ちゃんって思っていてくれればいいよ」


 という事は、俺がさっきまで考えていた事で間違いないんだろう……クレアが言いかけたのは多分、「王太子」だろうし。

 もしかしたら「王太子殿下」だったかもしれないけど、大きく違わない。

 王太子ってあれだよなぁ……そのまんま王様の子供で、王位を継承しちゃうあれやこれやの順位が一桁どころか、第一位だったりする人の事だよなぁ。


 それで、オフィーリエちゃんの方はそのテオドールト君を、「あに様」と言った。

 つまりそれは、継承順位はともかくとして……王女とかお姫様とかそんな感じの人物ってわけだ、はぁ……。


「そんな、お二人をそんな風には思えません……」


 困ったように言うクレアに、俺も同意するように頷く。

 どこの世界に、王太子とかお姫様をちょっといいところのお坊ちゃんやお嬢ちゃんと言える国があるのか! この世界だ!

 ……駄目だ、一応表面は取り繕っているけど、頭の中はまだ整理が付かなくて時折変な思考になってしまうな。


「思えなくても、そう接してもらいたいなぁ。というか、接してね。タクミ君に拒否されたら、僕にはどうにもできないし何も言えないから仕方ないけど。でも、クレアちゃんには従ってもらう。これは、王家と大公爵、それから公爵家との取り決めだ」

「う……わかりました。できるだけ、ユート様の仰ったように接する事ができるよう、努力します」


 少しだけ強い口調でクレアに言うユートさん。

 すこーしだけ、小指の先くらいイラっとしたけど……多分これは、クレアにちょっと無理を言っているように感じたからだろう。

 だからレオ、俺の後ろで唸るのは止めような?


「どうして、俺が拒否する分には何も言えないんだ?」

「グルルルル……」


 おっといけない、レオが唸るのを止めるより先に笑顔でユートさんに話し掛けてしまった。

 イラっとした感情そのままなので、俺の笑顔もさっきのユートさんみたく圧が発せられているかもしれない。

 ユートさんは、少し慌てて手を顔の前で左右に振りながら弁解を始める。


「いやその、そのね? 後ろにいるレオちゃんがね……いるからなんだよ? 真面目な話、レオちゃんがその気になったら権力とか身分とか国とか、全て吹っ飛ぶからね? それも、タクミ君が望めばレオちゃんはそうするだろうし。だからその……唸るのはやめて欲しいかなぁ……? ハルトとエルケが、こっちを睨んでいるからね」


 そんな事、レオはしないし俺も頼まないけど……何度もレオの前で真剣に土下座をするユートさんやエッケンハルトさんを見ているので、言っている事が冗談ではないのはわかっている。

 ちょっと、レオや俺がそんな事をすると思われているのは微妙な気分だけども。

 ただ、エッケンハルトさんとエルケリッヒさんは、ユートさんが言うようにこちらを……ユートさんをジト目で見ているだけで、睨んでなんか……ジト目が睨むように見えたのかもしれないけど。


 あぁ、そういえば公爵家はシルバーフェンリルを敬うのが義務みたいなものだったっけ、現公爵家当主のエッケンハルトさんだけでなく、先代当主のエルケリッヒさんもそうなんだろう。

 どちらかというとエルケリッヒさんの方が、レオの唸りに合わせて剣呑な雰囲気を醸し出しているようだから、敬う思いは強いのかもしれない。

 まぁレオにまだ慣れていないからかもしれないけど。

 あ、エルケリッヒさんにレオを紹介するのがまだだった……まぁ後にするしかないし、大きなレオの体は当然視界に入っているから、わかってはいるんだろうけど。


「はぁ……レオ、大丈夫だから。俺の気持ちも合わせて、ちょっとイラっとしちゃったんだよな? うんうん、俺もそうだけどここはちょっとだけ我慢しよう。後で、ルグレッタさんにお仕置きしてもらうから」

「ワウ……」

「あーうん、ルグレッタからのお仕置きは確定なんだね。まぁ、こうなるってルグレッタからも言われていたし、ルグレッタからならご褒美にもなるんだけど……」


 レオを撫でてご機嫌を取り、唸るのを止めてもらう……クレアも一緒に撫でていた。

 ともあれ、ユートさんにはルグレッタさんにお仕置きをお願いしよう、それがご褒美だとしても、チョップの素振りをしているルグレッタさんに任せるしかない。

 なんにせよ、事情を聞くとしますか。


「それで、どう接するかはこれから慣れるとして、どうしてここに連れてきたんだ?」 

「タクミ君ならわかってくれると信じていたよ。えっとね……王家、特に直系の王族には成人するまでの一定期間、市井で暮らして民の生活を知るって決まりがあってね……」


 ユートさんに、テオドールト君達をここに連れてきた理由を話してもらう。

 なんでも、直系の王族……つまりユートさんから連なる血筋の中で、国王になる可能性が高い人物に庶民の暮らしを知る機会を与えるという。

 その決まり自体はユートさんが決めたらしいけど、ユートさん自身この国を興すまでは特別身分が高いわけじゃなく、庶民感覚というのもトップに立つうえで大事だからって考えだとか。

 まぁ、本当に大事なのかどうかは俺にはわからないし、国や時代によっても違うだろうけど。


 だからといって、いきなりこれまで育ってきた場所から放り出して、しばらく自由に暮らせと言われてもできるわけがない。

 なので、基本的には信頼のおける誰かに預けるらしい。

 今回はそれが俺や公爵家の人達となったわけで……まぁ、多分にユートさんの趣味というか、考えが入っているとは思うけど、シルバーフェンリルのレオがいて協力してくれるのなら、危険はかなり少ないだろうとの判断からとか。

 と言っても、今回に限らず何かあってはいけないので、近衛兵から護衛を付けるしお金もある程度持たせるんだとか。


 近衛兵……今もほとんど身じろぎさえせず、完全武装で立っている六人の事か。

 顔を覆うヘルムの隙間から覗く目は、レオを見て警戒しているようだけどそれは仕方ないか。

 さっき唸っていたのはともかく、ここまでおとなしくしていても伝説で語られるシルバーフェンリルだからなぁ……警戒しないでという方が無理というものだろう。

 まぁレオに関しては、そのうち慣れていって欲しいと思う――。




読んで下さった方、皆様に感謝を。


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