男の子と女の子の二人を紹介されました
「ここでは……だからね。僕の事はとりあえず名前で……身分なんてものは……だから……」
「は、はい。わかりました……ですが、おおてて様……」
「テオ……だから僕の……ユートと……」
「おおててしゃま……わたちはあにしゃま……」
「オフィー……だからねそうじゃなくて……」
ユートさんとテオドールトと呼ばれた少年と、オフィーリエという少女……幼女? の方から微かに漏れ聞こえる話し声。
何を話しているのかはっきりとはわからないけど、なんとなく過ごし方というか接し方や話し方について、言い聞かせているのかな?
おおてて様と言うのが何かわからないけど……ん、もしかして大父様で、おおてて様、か?
祖父とかそういう意味だったと思うけど、ユートさんの孫、じゃないよなさすがに。
ユートさんが国を興した時と、奥さんがいた頃が同時期だとしたら年齢が合わないし。
それに、さっきユートさんが親戚みたいなものって言っていたから……子孫とか? だからご先祖様的な感覚で大父様と呼んでいるのかもしれない。
だとしたら、初代国王からの子孫と考えれば、もしかしなくても王位の継承権的な何かを持っていらっしゃったりしちゃったりしまいませんかね?
テオドールト君とオフィーリエちゃん、と呼んで不敬と言われないか心配だけど、その二人はユートさんと同じ……というか日本人ぽい黒髪だから、血が繋がっていると言われても不思議じゃないし。
まだ顔をはっきり見たわけじゃないし、察せられる年齢からユートさんとはっきり似ているかどうか微妙なところだろうけど。
黒目なのかも確認したいけど、薄暗いから目の色まではよく見えないな。
まぁ、そこまで確認しなくてもほぼ確定でいいだろう。
クレアも聞いた事がある名だって言っていたし、セバスチャンさんが王国民なら知っていてもおかしくないと言っていた。
国全体に知られている名だとしたら、それは王家……さらに言うなら、国王様の直系とかだろうと思う。
会ったばかりのエルケリッヒさんだけじゃなく、エッケンハルトさんも誤魔化す方に向いているという事から、なんとなくそうじゃないかと察せられるか。
王家ってのは予想していたから、もしかしたらユートさんとか現国王様とかの親類かもくらいには思っていたけど、まさか直系とは。
いや、確かめていないからわからないけど……多分間違っていないだろう。
とりあえず、失礼な事をしてしまわないようにだけは気を付けよう。
……直立不動で整列している、完全武装の護衛さんがちょっと怖いし。
もしかして、フィリップさん達のような護衛さんと言うよりは、近衛兵とかのエリートだったりするのかもしれない。
「んん! お待たせ、タクミ君達!」
グルグルと頭の中で考えたり、護衛さん達の様子を窺ったり、心を落ち着かせるためにレオやシェリーを撫でたりしている間に、話が終わったらしい。
ユートさんが二人を連れて戻って来て、紹介のやり直しだ。
「こっちがテオドールト、それからこっちはオフィーリエだ。気軽にテオドールト君、オフィーリエちゃんと呼んでね」
「……僕はテオドールトだ……です。よろしくお願いします」
「わたちはあに様のいもうちょで、オフィーリエです。よろしくお願いしみゃす」
ユートさんが手で示すと、テオドールト君が俺の前に立って自己紹介。
テオドールト君は改まった喋り方に不慣れな様子だけど、頑張っているようだ。
まだちょっと舌ったらずな喋り方のオフィーリエちゃんは、それでもちゃんと教育を受けたお嬢様なんだろう、クレアがするようなスカートを両手の指で掴んで広げるように礼をした。
ただその不慣れな様子が逆に可愛らしく、エルケリッヒさんやエッケンハルトさん、セバスチャンさんなどは顔を綻ばせている。
……孫が頑張っているのを見る保護者視点なんだろう、エッケンハルトさんにはまだ孫はいないが。
「あ……はい。タクミ・ヒロオカ、です。よろしくお願いします」
「ほらほらテオドールト君、ここはちゃんと頭を下げるところだよ? 慣れていないだろうけど、慣れないと隠せないよ?」
「は、はぁ……わかりました。えっと、よろしくお願いします」
俺が名乗って頭を下げるのに合わせ、ユートさんニッコリとちょっと圧を感じる笑顔で、テオドールト君に頭を下げさせる。
というか、隠せないとか言っちゃっているし……俺が予想した通り、直系の王家……ずばり王子様だとしたら、むやみやたらと誰かに頭を下げる習慣がないんだろう。
自己紹介くらいだし、俺は気にしないどころか身分としては当然この場で一番下だから、頭を下げなくてもいいんだけど。
ユートさんからは、有無を言わさぬ気配が漂っているので口には出せない。
「さて、それじゃ取り敢えず……ハルトとエルケは二人の相手をしていてもらえるかな? 僕はちょっとだけ内緒話をするから。タクミ君、クレアちゃん。こっちこっち……あ、レオちゃんも来ていいよ」
「畏まりました」
「はぁ……」
「ワフ」
紹介が終わったと思ったら、エッケンハルトさんやエルケリッヒさんに任せて、俺とクレア、それからレオはユートさんに連れ出された。
とは言っても、他の人達からも見える場所だけど。
ちなみに残ったエッケンハルトさんは、とりあえずクレアの従魔としてシェリーを紹介する事にしたようだ、あとティルラちゃんもだな。
ティルラちゃんはエルケリッヒさんの片腕に乗っている……というか肩に乗っているから、お爺さんと久しぶりに会えて嬉しいんだろう。
「それでユートさん、エルケリッヒさんはまぁクレアやエッケンハルトさんとの繋がりから、わからなくもないけど……あの二人は? なんとなくわかるけど」
皆から離れて、小さめの声で早速ユートさんに問いかける。
レオはとりあえずついて来たけど、話を聞くだけのつもりみたいで欠伸をして後ろ足で耳をかいていた……結構、衝撃的というか重要な場になってしまっているけど、レオにとっては退屈なのか。
緊張とかとは無縁そうだからな。
「直接お会いした事はありませんが、さすがに名前くらいは知っています。王太……」
「おっと、クレアちゃんストップ」
俺に続いて、クレアからも問いかけられるのをユートさんが途中で待ったをかけた――。
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