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知り合いの権力者が増える予感がしました



「とりあえず、王家の誰かが来る……という事っぽい?」

「そう、考えられますね。お父様の様子を見る限り」

「今の王家と言いますと……十人くらい当てはまります。数人は、バースラー元伯爵の件であちらの領地に行っているはずです。考えられるなら、その方達でしょうか」

「そういえば、しばらくは王家の人が治めるんでしたっけ……」


 俺だけでなく、クレアやセバスチャンさんですら緊張した面持ちになる……ティルラちゃんも理解しているようで同様だ。

 レオ達やリーザはよくわかっていない様子だけど、そちらは仕方ないか。

 バースラー元伯爵は既に捕らえられているし、その後どうなったのかまでは知らないけど、アンネさんが子爵として当主になって受け継ぐまでに、領地を立て直すために王家が預かっているという話だった。

 隣の領地だし、俺も含めて関わっていたから挨拶に来るため……とか?


「王家の方だとして、紹介を忘れて宴を始めてしまったという事なら、お父様の焦りようもわかりますね。私も、身が縮む思いです」


 そう言って、体を震わせるクレア。


「キュゥ……」

「心配してくれるのね。ありがとうシェリー」

「キャウ!」


 そんなクレアの様子が気になったのか、シェリーが足下で身体を擦り付けるようにして鳴いた。

 ふっと、少し息を吐いたクレアが顔を綻ばせる……けど、まだ引き攣ってもいるようなので、俺も肩に手を置いておく。

 クレアに触れた手が震えないよう、頑張った。


 王家の人相手とはいえ、ユートさんがいてくれるから滅多な事はないだろうから、と自分に言い聞かせていたのは内緒だ。

 まだ、クレア達にはユートさんがどれほどの人かは伝えていないかし、今は大公爵で王家の一人でもある……というくらいの認識だからな。


「あれ、でも……」

「タクミさん?」

「あ、いや。そういえばユートさんも王家だから、大きな問題はないかもって」


 以前ランジ村に来た時、ユートさんは大公爵の方ではなく王家の紋章を出して身分を明かしていた。

 だから、王家の中でどの位置かはともかく、皆も知っている事だから安心できる材料になるんじゃないかと。


「そういえばそうですな。大公爵と王家の地位を両立されている方を、私は初めて知りましたが……」

「でも、そのユート様がお父様とは違って焦ってもいませんでしたから、滅多な事にはならない……と思いたいですね」

「そうだね」


 まぁユートさんだから、悪い状態でも飄々としていそうだけど。

 ようやく少し落ち着いたクレアを見て、言うのは野暮だろうと口には出さない。


「ワフ」


 なんて、俺達の不安を察したのか、レオがもしもの時は……なんて口を開けていたけど、それはさすがにと閉じさせて撫でた。

 できるできないは別として、力ずくでなんとかする方法はさすがにな。

 そんな事になるようならさすがに、ユートさんでも俺達に集まっておくように言わないだろうし。


「大丈夫ですよ。あの方といえど、問題にはならないかと。あったとしても、公爵閣下があの方にむくれられるくらいですから」

「ルグレッタさん? えーと、そのあの方というのを知っているんですか?」


 ユートさんに付いて行かなかったらしいルグレッタさんが、微笑みながら俺達の後ろにいた。

 というかむくれられるって……からかわれている時のクレアじゃないんだから。


「閣下と共にこの村に来ましたから。まぁ、閣下達が隠したがっているので、私からは伝えられませんが……悪い事にはなりません」


 ユートさんが連れてきたのなら、ルグレッタさんが知っていておかしくないか。

 今ここでは誰が来るのかは教えてもらえないらしいけど、とりあえず大丈夫だと請け負ってくれたので、安心しても良さそうだ。

 そもそも、何か悪い事をしていたわけでもないのだから、悪い事になり得ないかな。

 ……エッケンハルトさんとユートさんが、紹介するのを忘れていたくらいか。


 それがそもそも失礼で無礼かも、というのは考えないようにしておく。

 というかルグレッタさんも、もしかすると忘れていたくちっぽいなぁ……覚えていたら、ユートさんに突っ込みをしながら思い出させていただろうし。

 おそらく、男女間のあれこれなど村に来るまでに話していた事で、頭がいっぱいだったのかもしれない。


「ワフ?」

「来ましたね……んん!」

「そうみたいだね」


 レオが首を傾げて目を向けた方向から、数人……十人程がこちらへ向かって来るのが見えた。

 その中に、エッケンハルトさんやユートさんもいるのがわかる。

 クレアが咳払いと共に姿勢を正し、俺もそれに倣う。


「旦那様やユート様以外に、見た事のある方もおられるようですな」

「あ、あれって……」

「暗くてよくわかりません……」

「ワウ?」


 向かって来る人達、それを見てセバスチャンさんやクレアが目を見張る……セバスチャンさんの口調はいつも通りだけど、表情からは驚きが滲み出ている。

 ティルラちゃんは目を凝らしているけど、少し後ろにいるためか暗がりからこちらに向かう人達がよく見えないようだ。

 レオはまぁ、知り合いなわけないからとりあえず首を傾げているだけみたいだが。

 とりあえず俺も、こちらに向かう人達を見る。


 エッケンハルトさんがやたらとぺこぺこしているのはまぁ、忘れていた事に対してだろう。

 ユートさんは苦笑しているだけで、特に変わった様子はない。

 他の人達……まず目につくのは、エッケンハルトさんが頭を下げている人物達。

 ユートさんとも並んで歩いている二人……片方は大柄な男性で、かすかに見える顔には整えられた髭を蓄えていて、高い年齢なのが窺えた。


 もう一人は緊張した面持ちの少年、かな。

 緊張しているのか顔が強張っているため、幼い印象は控えめだけど青年と言うには少し足りない感じか。

 年の頃で言うと、十代半ばの高校生くらいだろうか。

 薄暗い場所で見ていてもわかるくらい、上質な服を着ているけどちょっとだけ背伸びをしている感じが、高校に入学直後の着慣れない感じだな。 


 見ただけの印象で言えば、お爺さんとその孫……といったところか。

 クレアやセバスチャンの様子から察するに、知り合いっぽいけど……。

 それ以外の人達は、フィリップさん達のような護衛さんなのだろう、金属鎧を着込んで腰に剣を下げ、背中に槍を持つという完全武装の六人が、足並みを揃えてエッケンハルトさん達の周囲を固めている。

 まぁ、王家とかそれに関連する人達のための護衛、といったところだろう――。




読んで下さった方、皆様に感謝を。


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面白いな、続きが読みたいな、と思われた方はページ下部から評価の方をお願いします。

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