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1392/1998

エッケンハルトさんが大変焦っていました



 ユートさんの言う秘密に対しては緩い方が、という効果の程はわからないけど、許可してもらえるなら受け取っておこうと思う。

 できれば、クレアくらいには話しておきたいと思っていたから……クレアが知らないのに俺だけ初代当主様のジョセフィーヌさんの事を知っているのは、何かズルい気がしていたのもある。


「そもそも僕と同じ人には、最初からそうしているんだよ。口止めを強制して険悪になるよりは、緩く許可して仲良くなった方がいいからね。特にタクミ君とは……前に会った時、言い忘れていたんだけど。ははは……」


 そう言って、苦笑しつつレオやフェンリルがいる方を見るユートさん。

 同じ人……異世界から来ていて、ギフトを持っている人って事か。

 つまり俺の事でもあるわけで、特にシルバーフェンリルやフェンリルと一緒にいる俺と仲良くなっておいた方が、という思惑もあるんだろう。

 まぁ、俺自身がレオ達と何か大それた事をするなんて考えられないけど、ユートさんから見たら大事な事なんだろうな。


 とにかく、今この場では周囲に人が多過ぎるけど、クレアにもいずれ伝える事を決め、許可してくれたユートさんに軽く頭を下げて感謝しておいた。

 重荷……というわけじゃないけど、隠していた事を隠し続けなくて良くなったのは、少し肩が軽くなった気分だ。

 肩こりではない。


「ところで、どうしてハルトはそんなに顔色悪くしているのかな?」


 ふとユートさんが、先程から静かになっていたエッケンハルトさんを見て首を傾げる。

 忘れていた事を思い出そうとしているから、静かなのかと思っていたけど……。

 血の気が引くと言うのだろうか?

 エッケンハルトさんは目を見開いて口を開け、驚愕の表情をしつつ先程まで赤らんでいた顔は、日が落ちてかがり火などの薄暗い明りながらもはっきりわかるくらい、血色が悪くなっていた。


「ほんとだ。ど、どうしたんですか?」

「お、お父様?」

「こ、公爵様?」


 酔いが回ったとか、そんな風じゃない。

 俺もクレアもハンネスさんも、そんなエッケンハルトさんを見て心配になる。

 一体どうしたというのだろうか?


「……わ、忘れていた。忘れてはならぬ大事な事を……」


 絞り出すように言うエッケンハルトさん。

 さっきまで、忘れている内容に対して俺やクレアは嫌な予感がしていたけど、それを吹き飛ばすくらい顔色が悪い。

 ユートさんとは別の事を忘れていたのか……俺達を驚かせようとしていたらしいけど、忘れていたためにエッケンハルトさんが悪い予感とか嫌な予感を感じている様子だ。


「か、閣下! あ、あの、あのあの……あの方が!」

「あの方……あぁ、そういえば! いやぁ、タクミ君と一緒にいると色々衝撃的な事が起こったり、楽しかったりで忘れてたよー」


 水のない地上に打ち上げられた魚のように、口をパクパクさせながらも言葉を絞り出したエッケンハルトさん。

 ユートさんの方も何か思い出したようだ……あの方?

 とりあえずユートさん、忘れていたのを俺のせいにするのはやめて欲しい、確かにシェリーの牙を使った剣やら、食べ物に関する事やら驚く事とかはあったけど。


「と、と、と、とにかく私はすぐに呼んで参ります! で、できれば閣下にもついて来てもらいたいのですが……」

「うーん、仕方ないね。僕も忘れちゃっていたし。僕がいればハルトも強く怒られないだろうからね」

「えーっと……?」


 ひたすらに焦り始めるエッケンハルトさんに対し、落ち着いているユートさん。

 対照的な二人だけど、大事な事を思い出したのは間違いないみたいだ。

 ただ、俺やクレア、ハンネスさんなど近くにいる人達は要領を得なくて、首を傾げたりキョトンとしたりするばかりだ。


「タクミ君、実は会って欲しい人がいるんだけど……そうだね、広場の入り口辺りがいいか。明るいし。そこに、クレアちゃんと一緒に……できれば、主要な人物と一緒にいて欲しい。すぐハルトと戻って来るから。あ、村長さんはこのまま皆の様子を見ていてほしいかな」

「はぁ……わかった。けど、どういう事?」

「か、畏まりました」

「すまんタクミ殿。それからクレアも! 少しでも急がねばならんので、詳しい事はまた後だ!」

「わ、わかりました、お父様。」


 何がなんだかわからないけど、そのユートさんが会わせたい人って言うのと会うために、俺達は広場の入り口付近に行かないといけないみたいだ。

 入り口と言っても、村の人達が暮らす家が立ち並ぶ間で一番大きな路地みたいな場所なんだけど。

 でもそこが、かがり火など明りになる物が多くて明るいのは確かだ。

 とにかく、酔いがさめた様子のエッケンハルトさんが慌てて、ユートさんは落ち着いた様子で連れ添って広場を出て行った。


 あの方向は……村の入り口かな。

 というか、あのでっかい宿がある方か。

 宿に誰かいた、いるのだろうか?


「クレア、エッケンハルトさんが焦ったりあのお方なんて、言い方をする人っているのかな?」


 とりあえず言われたように、主要な人達を集めて広場の入り口で待機。

 俺とクレア、ライラさんとセバスチャンさん、それからティルラちゃんとリーザ、レオ、ラーレ、シェリーもいる。

 主要と言われてどこまでかわからなかったので、俺とクレアをメインに拘わりのあるのを集めてみた。

 宴会の方はハンネスさんや使用人さん達に任せて、続けてもらうようにしている。


「そうですね……ユート様のような、王家の方達でしょうか? 他の貴族であれば、そのような言い方をしないと思います」

「他に考えられるとすれば、他国の重要人物もあり得ますな。ですが、さすがにそれはないでしょう」


 俺の言葉に少し考えて、クレアが答えてセバスチャンさんが補足してくれた。

 貴族位として公爵家は上に王家と大公爵があるくらいで、王家はユートさん以外にいるから……他国からでなければ、そういった人なんだろうというのがわかる。

 でもまさか、何も前触れなく他国の人がここに来るとは思えないから、セバスチャンさんの意見には賛成だ。

 王家の人が、というのも同様だけど他国の誰かよりは可能性がある……かな?


 でもわざわざ他の王家の人がここに来る意味なんて……と考えたところで、ここには公爵家当主様とその娘二人、さらに王家で大公爵で元国王様に加えて、最強らしいシルバーフェンリルのレオ。

 さらにはフェンリルの集団に加えて、国一つ滅ぼせるくらいでもあるらしい、カッパーイーグルのラーレもいた。

 ……権力を持っている人ほど、身分が高い人ほど、色々無視できない状況になっているのかもしれない、と今更ながらに気付いた。

 権力も戦力もちょっとどころじゃなく過剰じゃないかな?



読んで下さった方、皆様に感謝を。


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