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牙が抜けた状況次第のようでした



「えっと、ヴォルターさんに関しては……」


 ユートさんに、ヴォルターさんとの事を簡単に伝える。

 ついでなので、比較的シェリーと会ったのが新しいチタさんの事も。


「成る程成る程……それじゃあ、シェリーちゃんの牙が抜けたタイミングの問題かな?」

「確かに、チタさんやヴォルターさんがシェリーと会ったのって、生え変わりの時期だったっけ」


 詳しい時期は多少前後するけど、俺が雇う使用人という事で別邸に来た頃は、シェリーの牙が生え変わり始めた頃だ。

 その事から推察するに……。


「牙が抜けた時、シェリーちゃんがどう感じていたかじゃないかと思うんだ。こうしていても、武器とシェリーちゃんには繋がりは見えない。抜ける直前まで考えていた事が、使用者を選んでいるんだと思うよ」

「抜ける直前……」


 ヴォルターさんはレオやフェンリル達を、今でも怖がっている部分がある……最初の頃よりは慣れたみたいだけど、むしろ怖がるのに慣れたという感じでもある。

 ただ、フェリーと比べて大きくなく抱き上げられるくらいのシェリーに対しては特に怖がっていない。

 そのうえでヴォルグラウとの事があり、仲が良くなっていっていたから、シェリーもそれを見て少しだけ認め始めていたのかもしれない。

 シェリーにとって、ヴォルグラウは子分のように接しているみたいだし。


 ちなみに他の人達は、エルミーネさんはクレアといる事が多く必然的にシェリーと接する時間が長い。

 ライラさんは俺やレオだけでなく、シェリーのお世話もしていたために懐かれているし、リーザとティルラちゃんは一緒に遊んでいた時間が長いし、レオともいるからだろう。

 ミリナちゃんもそれに近いけど、使用人見習いや薬の調合をしていて時間は長い方じゃなかったからかもな。


 エッケンハルトさんとセバスチャンさんは……懐いていないわけじゃないけど、遊んだり、懐かれたりとまではしていないからか。

 クレアや俺についてよく一緒にいたセバスチャンさんがちょっとかわいそうな気がしたけど、こればっかりは仕方ないか。

 エッケンハルトさんは……別邸にいる期間が短かったから、という事にしておこう。


「もし、他の牙があればそれを使うと、他の人も使える武器ができるかもね。それこそ、今生えている牙なら全然違う結果かもしれない。まぁ、生え変わりって事だから、今の牙はまだ若くて使用者を選ぶ程かどうかはわからないけど」

「キャゥ!?」


 チラリと視線をやりながら話すユートさんに、シェリーが伏せの状態で前足を使って口元を隠す。

 今生えている牙が抜かれると思ったんだろう。


「ははは、タクミ君にも言ったけど、無理に抜いたりしないから安心して。そんな事をしたら、横にいる最強さんが怖いからね。それに、そういった物に僕はそれほど興味をそそられないし」

「ワフン」


 苦笑するユートさんと、ジト目をしながらならよしと言うように鳴くレオ。

 安心したのか、リーザの所に行って撫でてもらうシェリー……まぁ、おかしな事を考えていないようで良かったってとこだな。


「ふむ、でしたら他にある抜けた牙を使えば、私や旦那様も扱える物ができ上がるかもしれないのですな」


 頷き、理解して納得した様子のセバスチャンさん。

 生え変わり自体は終わっているけど、抜けた牙は他にこちらで保管しているのもある。

 

「……よし、それならば」

「いけませんよ、旦那様」

「だめですよ、お父様」

「ぐっ……セバスチャンだけでなく、クレアもか!?」


 まだ残っている牙を使えば、と思ったのかエッケンハルトさんが声を出した途中で、セバスチャンさんとクレアが遮った。

 おそらく、自分用にも欲しいと思ったんだろう……使えなかったのが悔しかったのもあるだろうけど。


「お父様が持ったら、危険過ぎます」

「旦那様の事です、普段使いにしてしまいかねません。フェンリルの牙を使った剣など、あまり喧伝する物ではありませんからな」

「ぬ……むぅ……」


 剣その物に装飾を付けなくても、エッケンハルトさんが持っていると目立ってしまう。

 いや、むしろ装飾がない方が目立つくらいか……。

 フェンリルの牙の扱いには注意が必要だろうという事と、下手にフェンリルが狙われないため。

 そしてこれが一番の理由だけど、エッケンハルトさんが振り回さないためとして、これ以上シェリーを含めたフェンリルの牙を使った武器を作らない事になった。


 不届き者が出ないとも限らないし、穏やかなフェンリル達が脅かされるようになるのは嫌だという、俺だけでなくクレア達も含めた総意だ。

 エッケンハルトさんとユートさんも、それには賛成

 そして、公爵様が剣を振り回して使う事の危険性もある……クレアやセバスチャンさんだけでなく、大広間にいた訓練を受けた事のあるフィリップさん達が、特に反対していたから。

 必死に反対するフィリップさん達、涙目だったし……エッケンハルトさんが剣を使って訓練をして、トラウマが刻まれているのかもしれない。


「ま、まぁとにかく、この剣とダガーの一つはタクミ殿に。そしてもう一つのダガーはクレアにだな。タクミ殿とクレアなら悪いようには使わないだろうし、身を守るためにもなる……必要かどうかはともかくとしてな」

「ははは……」


 反対されて意気消沈しかけたのを誤魔化すように、そう言うエッケンハルトさんに俺は苦笑を漏らす。

 まぁ、レオだけでなくシェリー、そして多くのフェンリル達がいるから、俺やクレアが使わないといけない危機が迫る事は早々ないだろうからなぁ。


「ありがとうございます、エッケンハルトさん」

「ありがとうございます、お父様」


 とりあえず、色々と話が大きくなってしまったけど、引っ越し祝いにもらった剣とダガーを持ち、クレアと一緒にお礼を伝える。

 ちなみに、武器の名称は「フェンリルソード」と「フェンリルダガー」というそのまんまな仮称になった……ユートさんのせいで。

 他に良さそうな呼び名がなかったから、とりあえずは仮称という事なんだけど、シェリーのためにもいい名称を付けたいなぁ。

 シェリーソードとか思い浮かんだネーミングセンスのない俺だけど、頑張って考えてみよう――。



読んで下さった方、皆様に感謝を。


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