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なんとなく使用者の条件がわかりました



「それはそうだね。友好的なら、その関係を強固にして続けられるようにするべきだと思う。それはそうと、引っこ抜いたりしなくても生きたフェンリルの牙を手に入れられたわけで……」


 乳歯じゃなく、大人になったフェンリルはもっとすごいだろう、という話を交えつつ貴重な生きた牙を入手できた。

 世にも珍しい素材を使う事で、濃く多くの魔力で魔法のような効果を持つ事になった剣とダガー。

 それはつまり、シェリーが認めた人物に対してその威力を発揮するだろうとの事だ。


「早い話が、使い手を選ぶ武器ってわけだ」

「……私は、シェリーに認められていなかったのか」

「旦那様、私もです……」


 シェリーが認めた人物のみ、か。

 さっきまでよりさらに落ち込むエッケンハルトさんと、セバスチャンさん。


「多分、過ごす時間でシェリーちゃんがそう感じるかどうか、じゃないかな? 例えばクレアちゃんとタクミ君」

「私ですか?」

「俺?」


 苦笑しながらエッケンハルトさん達の様子を見つつ、クレアと俺を呼ぶユートさん。


「シェリーちゃんはクレアちゃんの従魔になっているから、当然繋がりが強いし、過ごす時間も長い。タクミ君はレオちゃんといて、シェリーちゃんも懐いてこれまた一緒にいる時間は長いし、レオちゃんがいるから認めるかどうかではなく、認めざるを得ないという事もある」

「確かに、シェリーと過ごす時間は長いですね……離れてシェリーが遊んでいる事もありますけど、夜は一緒ですから」

「クレアと寝ているからね。俺はまぁ、確かにレオがいる事も大きいか」

「ワフ」


 フェンリルはシルバーフェンリルに絶対服従という、以前レオが言った事の通りにシェリーだけでなくフェリー達も従順だ。

 クレアのように一緒にいる時間が長いというだけでなく、そういう意味でも認められているって事だろう。

 そういえば以前、シェリー自身も俺に対して逆らっちゃいけないとかそんな風な事を言っていたっけ……別にシェリーに対して厳しくした事はないんだけど、これもレオの影響だな。


「だから例えば……タクミ君、ちょっとレオちゃんに頼んでいいかな?」

「ワフ?」

「え、あ、まぁうん。危ない事はしないで欲しいんだけど」


 俺に聞いて、剣を持つユートさん。

 何をするのか気になるけど、まぁ無茶な事はしないだろうと思い、こちらを見て首を傾げるレオに頼むのを承諾する。


「さすがにしないよ。レオちゃん、ちょっとこれを咥えてみて。あ、折ったり砕いたりしないようにそっとね?」

「ワウ……ワム」


 抜き身の剣の柄を、レオの口にユートさんが差し出す。

 折れてしまわないよう、噛むのではなくそっと咥えるレオ……成る程、レオにも試してもらうわけか。

 興味なさそうだったし、必要ないだろうから試していなかったけど。


「それからこれを……っと。ほら、こんな感じ。危なかったぁ……」


 レオに咥えてもらった剣の刃に、木片を手に取り当てると……何も抵抗がないかのように、二つに割れた。

 その際、ちょっと手を斬りそうになったユートさんが、顔を逸らして手を胸に当てていたりする。

 レオじゃなくてユートさんが危なくなってどうするのか……ルグレッタさんも溜め息を吐いている、いや手が刃に触れてちょっと危なかったから、ホッと息を吐いているのか。


「シェリーちゃんはフェンリルだからね。シルバーフェンリルのレオちゃんを認めない、なんて事はない。だからこうしてレオちゃんに持って……咥えてもらえても効果が出るってわけだね。おっと、ありがとうレオちゃん。はいタクミ君に返すよ」

「ワッフ」


 試した結果を皆に見せて、レオから剣を受け取ったユートさんから、剣を返してもらう。

 あ、レオの涎が付いているな……。


「すみません、ライラさん」

「いえ、お気になさらず」


 サッとライラさんが取り出した布で、レオの涎を拭きとってもらってお礼を言いながら、鞘に納める。

 誰にでも使えるわけじゃないし、剣身が綺麗でいつまででも見ていたいと思える程だけど、抜き身は危ないからな。


「耐久性の方もかなりだと思うよ。それこそ、無茶な使い方をしても手入れをほとんどしなくても、早々折れたりはしないんじゃないかな?」

「凄いものができてしまったのですね……」

「うん。さっきの感覚だと、斬れない物がないんじゃないかと思うくらいに」


 剣もダガーも、剣身は薄めで荒い使い方をするとすぐに折れそうなくらいだけど、ユートさん曰く丈夫らしい。

 そんな武器を見て、クレアと感心するやら驚くやらだ……。

 さすがに、斬れない物がこの世に存在しないなんて事はないだろうけど。

 でも、力を入れていないにも拘わらず、木片をテーブルごとまるで豆腐を斬るかのように抵抗を感じさせずに斬れるというのは、単純にすごい。


「少々よろしいでしょうか?」


 セバスチャンさんが手を挙げながら、ユートさんに窺う。


「ん、なんだい?」

「先程ヴォルターが試した時、ダガーが木片に刺す事ができました。タクミ様達程の切れ味はないようでしたが……私や旦那様と違って、一応使えなくもないというのはどういう理由なのかわかりますか?」


 息子のヴォルターさんが使えるとも使えないとも言えない結果だったのが、セバスチャンさんの興味をそそられたんだろう。

 俺も気になるし。

 まぁ少しくらいは、自分に使えなかったのにという悔しさがあるのかもしれない。


「うーん、あの中途半端な結果だよね? 本人が中途半端だから……なんて事はないだろうし、意味はないから……」

「ちゅ、中途半端……」


 ユートさんの言い方に、肩を落として落ち込むヴォルターさん。

 いやいや、ちゃんと否定していますから……ヴォルターさんは中途半端って事はないと思いますよー。


「あ、そうだ。ヴォルター君が、タクミ君の所に来たのって最近だよね? 以前この村でタクミ君達と会った時にはいなかったけど」

「君……あ、はい……」


 君と呼ばれたのに驚きつつ、ヴォルターさんが頷く。

 まぁ、ユートさんは身分的には大公爵だとしても、見た目は高く見ても二十前後にしか見えないからなぁ。

 そんな相手から、呼び捨てとかではなく君を付けて呼ばれるのに慣れていないんだろう。

 本当はユートさんの方がものすごく年上だけども――。




読んで下さった方、皆様に感謝を。


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