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1380/1998

貴重で珍しい状態の素材が原因みたいでした



「うむ、タクミ殿の言う通り全員で試してみるのが良さそうだ。使えないのが私とセバスチャンだけというのは、少々納得がいかんからな。まぁ、作った鍛冶師も斬れないなまくらで、ただの装飾品にしかならないと言っていたが」

「今のところ共通するのは、若いタクミ様やクレアお嬢様と、年を取っている私と旦那様、というくらいですか……」


 俺達の様子を見ながら唸るエッケンハルトさんは、やっぱり使えないことが納得いかないみたいだ。

 セバスチャンさんも少し悔しそうな表情になっていたけど、それよりもどうして使えないのかの理由について考える方に集中した。

 ただ、セバスチャンさんの考察にエッケンハルトさんが「まだまだ若いぞ!」と言葉を返してはいたけど……まぁ、実年齢はともかく気持ちは若いよな、うん。


「……ふむ、先程の共通点は関係ないようですな」

「そうですね……」

「どういう事だ……?」


 一通り試し終わって、思案する俺やセバスチャンさんと、唸る俺達。

 大広間にいる人達全員で一度ずつ試してみた結果、年齢は関係なさそうなのがわかった。

 俺とクレア以外にもダガーや剣で何かを斬れたのは、ライラさん、ティルラちゃん、リーザ、チタさん、そしてエルミーネさんだ。

 その中でエルミーネさんは、エッケンハルトさんと年齢が近いのでおそらく先程の予想は外れる。


 女性だけでなく、俺も斬れるので性別は関係しない……と思う。

 あと中途半端だったのが、ヴォルターさん。

 ヴォルターさんだけは木片にダガーを刺せた……軽々と斬れたわけではないので、使えるかどうかの判定は微妙だけど刺す事すらできないエッケンハルトさんよりは、というところだ。

 セバスチャンさんが、ヴォルターさんを見て悔しそうにしていたのは置いておこう。


 ちなみに、レオの毛に埋もれていたフェヤリネッテも興味をそそられたのか、出て来て試そうとしたんだけど、ダガーを持つ事すらできずに断念した。

 その際、エッケンハルトさんとユートさんが「「妖精!?」」と声を揃えて驚いていたけど……そういえば、二人にまだ紹介していなかったっけ。

 とりあえず、フェヤリネッテの事はまた後にして、今はシェリーの牙で作った剣とダガーだ。

 俺達が試している間、シェリーは特に気にした風もなく伏せているレオの体をよじ登ったり降りたりを繰り返していた。


「あ、成る程……」

「ユートさん?」


 皆で剣とダガーが置かれたテーブルを囲み、考え込んでいる中で、唐突にユートさんが声を上げた。

 何かわかったのかな? あ、ユートさんはエッケンハルトさんと同じく使えなくて、大袈裟に悔しがっていた……ルグレッタさんのツッコミ待ちだろう。


「これ、全体に魔力が行き渡っているね。魔法具……とするには魔法を発動するための仕組みがないけど、ほとんど魔法のようになっているみたいだね」

「魔力が? でも、そんな感じは一切ないけど……」


 魔力が行き渡っている、と言われて改めて見ても剣やダガーからは何も感じられない。

 他の魔法具は、中に込められた魔法を発動する際、なんとなくそれらしい気配のような物を感じるんだけど。


「魔力視、と僕が呼んでいる魔法があるんだ。……タクミ君とハルトにだけ言うと、人間の使う魔法じゃないんだけどね」

「魔力視ですか。つまりそれで魔力を見たと」


 後半は、俺とエッケンハルトさんにだけ聞こえるように小声で話すユートさん。

 エッケンハルトさんも言っているけど、言葉の意味から考えると、魔力を目で見るための魔法ってところかな。


「うん、そうだよ。その魔力視で見ると、この剣とダガーには溢れんばかりの魔力が満ちているってね。そしてその魔力は、そこにいるフェンリルの子供……シェリーちゃんだっけ? それと同一だ」

「キャウ?」


 ユートさんが呼びながら示すと、注目が集まったことに気付いたシェリーは、レオに上る途中でこちらに顔を向けて首を傾げた。

 途中で止まらず、登るか降りるかしような? レオの毛が引っ張られているから……レオ自身は、特に痛みを感じているわけではなさそうだけど。


「シェリーと。あ、もしかしてシェリーの抜けた牙を使ったから、と?」

「そうなんだろうね。生きているフェンリルの牙か……それが原因かな。えっとね……」


 同じ魔力が見えるのは、シェリーの牙だからと思い当たったクレアに、ユートさんが頷く。

 予測混じりだけど、ユートさんとセバスチャンさん、俺やクレア、そしてエッケンハルトさんも混じって話し合い、どういう物かを考え出した。

 生きたフェンリルの牙……魔物の体をなんらかの素材に使う、というのは武器に限らずあるらしい。

 例えば魔法具も、魔力を溜めるための部分や魔法具としての機能を持たせるため、記号を彫り込むのにも魔物の一部が使われているとか。


 なんとなくこの話を聞いて思い浮かんだのは、にかわやゼラチンだ。

 動物の皮膚や骨を使うわけで……まぁ、魔物の素材と考え方はそう大差ないというか、同じ事なんだろうと思う。

 どの魔物がとかは、一定の種類ではなく相性もあって複雑なのでこの場では特に言及はしなかった。

 ただ基本的に……というか当たり前だけど、体の一部を使う以上素材を採取する時には魔物はなんらかの方法で打ち倒している。


 要は死んでいるってわけだ。

 けど今回は生きているシェリーの牙を使ったので、不思議な事が起こったのだろうとの予想。

 そもそもにフェンリルが牙に込めて馴染ませている魔力は、ティルラちゃんの魔力以上の大きさがあるらしい……それも、ユートさんが魔力視で見比べたんだろうと思う。

 それだけの魔力が込められている事で、通常では考えられない現象を引き起こし、魔法のようになっているとか。


「死んでから採取した場合は、牙の魔力もほとんどなくなるからね。そもそも、フェンリルの牙を生きたまま手に入れる方法がないんだけど……まぁ、ここは特殊か。あれだけ大量にフェンリルがいるんだから」

「……さすがに、生きたまま引っこ抜くなんて事はしないし、させたくない」


 何かがあって、折れてしまったとかならともかく……健康な歯、牙を無理矢理抜くなんてしちゃいけないだろう。

 痛みもあるし、歯や牙って生えそろっているからこそ十全な機能を保てる。

 意外と、そのバランスが崩れたら体に悪い影響があったりするものだからな――。




読んで下さった方、皆様に感謝を。


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