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ランジ村の犬達も元気そうでした



 村長のハンネスさんから迎えられ、クレアからも挨拶があり、改まった場は終わる。

 村の人達それぞれとの挨拶も個別ではないけど、いっきに済ませた。

 レオの方をチラチラ、どころかジッと見て尻尾を振っているランジ村で面倒を見ている犬達……ちゃんとお座りして我慢できているのは、お世話の仕方がいいからだろうか。

 前回来た時に、俺が知る限りの事は教えていたのを実践してくれたのかもしれない。


「ほらレオ……?」

「ワフ、ワフー!」

「にゃはははは!!」

「ふわー、いっぱいです!」

「ワン、ワン! キャン!」

「クゥーン」

「キューン!」


 とはいえお互い……レオもだけど、ウズウズしていたので促すと一声吠えて犬達がレオやリーザ向けて駆け出して集合。

 ティルラちゃんもそこに加わった。


「ん? あぁ、成る程……」

「ふふ、あの子だけはシェリーがお気に入りでしたからね」

「おぉ?」

「ワン、キャン!」

「キュ、キュゥ?」


 ただ一匹……昔のレオを彷彿とさせるマルチーズだけは、レオではなく俺達の後ろの馬車近くにいた、シェリーへと一直線に走って行った。

 あのマルチーズは最終的にレオにも懐いていたけど、シェリーに一番懐いていたからなぁ……村を離れる時も、悲しそうに吠えていたし。

 ちゃんとシェリーの事を覚えていたんだろう、走りながらも尻尾の振り方がものすごい事になっていた。

 けど、シェリーの方はそこまで熱烈に走って来るとは思っていなかったのか、少し驚いている様子だったけど。


「……クゥーン?」

「キュウ……?」

「飛びついたりするかと思いましたけど、少し手前で止まりましたね?」

「どうしたんだろう?」


 マルチーズが駆けていく様子を見守っていると、途中で急停止。

 レオ達ほどの速度はないのでズザーッ! とはいかなかったが、それでも少し地面を滑っていた……絶対フェンリル達より丈夫じゃない、マルチーズの肉球が心配だな。

 ともあれ、シェリーとマルチーズ……お互い顔を見合って首を傾げている。


 シェリーの方はまぁ、どうしたの? という感じだが、マルチーズの方は戸惑っている様子なのが、尻尾を忙しなく動かしている事からわかる。

 高い位置に上げて左右にフリフリ、と思えば萎れて垂れさがらせたり……もしかして?


「シェリーが前に来た時より、大きくなっているからとか、かな?」

「そういえば、前に来た時はもう少し小さかったですからね。今では抱き上げるのもちょっと難しくなっていますし……座っている足の上に乗せるのならいいのですけど」

「確かに、以前私が見た時よりシェリーは間違いなく大きくなっているな」


 ずっと一緒にいるうえに、レオやフェンリルが大きいからあまり実感がなかったけど、シェリーは着実に成長して大きくなっている。

 エッケンハルトさんも認めるように、今では中型犬の中でも大きい方の部類というくらいだろうか……大型犬とまではまだ言えないが。

 リーザよりは軽いくらいだから、大体十キロ後半くらいだろうか……シェリーを助けて連れ帰った頃は、十キロあるかないかくらいだったと思う。

 体重計がないから正確な数字はわからないし、一時期太ったりもして体重だけで成長を計るのは少し難しかったけど。


「キューン……クゥーン?」

「キャ、キャゥ……」


 探るように、本当にシェリーなのかを確かめるように、なんども首を傾げて不思議そうにしつつ、寂しそうに鳴くマルチーズ。

 シェリーは、どうしてそうされているかわからず、驚きと戸惑いが混じったような鳴き声。


「おーいシェリー! そのマルチーズは、シェリーが大きくなっていて本当にお前なのかわからないみたいだー!」

「キャゥ!? キュウ……キュウキュウ!!」

「ワン! キャンキャン!」


 シェリーに教えてやると、尻尾をピンと伸ばした……人間で言うと、ハッとなったってところだろうか。

 すぐに理解したらしいシェリーは、一歩だけマルチーズに近付いて窺うようにしながら、自分がシェリーだと伝えるように吠えた。

 シェリーの言いたい事が伝わったんだろう、再び尻尾を振り回すくらいに喜んだマルチーズが、勢いよくシェリーへと飛び込んだ。

 ……まぁ、少し勢いに押されているけど、オークに叩き飛ばされても平気だから飛びつかれても大丈夫だろうと、見守る事にした……微笑ましいからな。


「ふむ、あちらも何事もなく和解したようだな」

「喧嘩していたわけじゃないので、和解ってわけでは……」


 すぐにじゃれ合うようになったシェリーとマルチーズを見て、顔を綻ばせているエッケンハルトさん。

 見ればクレアも微笑んで優しく見守っているようだ。

 和解という言い方はともかく、成長したシェリーを見てもわだかまりなく仲良くしてくれそうで一安心だ。

 あぁいう部分は、人間より動物の方がわかりやすくていいのかもな……シェリーはフェンリルだが。


「では、タクミ様」

「クレアお嬢様も」

「あ、はい……」

「わかったわ」


 アルフレットさんとエルミーネさんに促され、俺とクレアは入り口から村の奥……からさらに北にある、新築の屋敷へ。

 馬車の荷物などは、後で使用人さん達が整理して運び込んでくれるらしいから、お任せだ。

 アルフレットさんとエルミーネさん、それからライラさんに先導される俺達の後ろには、エッケンハルトさんやユートさん達、それから新しい屋敷で働く使用人さん達と護衛さんが続く。

 レオやリーザも一緒にいるな……ティルラちゃんを始めとした、セバスチャンさん達元の屋敷の人達は、馬車や馬、フェンリル達を連れて後から来るらしい。


 エッケンハルトさんとユートさんは要人のお客様として、俺やクレアは新しい屋敷の主人として……それから雇った人達が、まず先に屋敷へと行くわけだな。

 ティルラちゃんもお客様に含まれるはずだけど、エッケンハルトさんの娘だから優先度は少し下がるらしい。

 あまり差を付けたくはないけど、本人も納得していたし、何より犬達と楽しそうに過ごしていたから、邪魔しないようにってのもあるな。


「あれが、新しく作った屋敷……大きいなぁ」

「新しいだけあって綺麗ですね」

「ワフ」

「わー、大きいー!」


 見え始めた俺達が住むための屋敷……考えていたよりもかなり大きめだ。

 クレアの感想が綺麗という方向なのは、前の屋敷よりは全体的にこじんまりしているからだろう、こじんまりという言葉が似つかわしくない程の大きさなんだけど。

 とりあえず、俺はリーザと同じ感想だったから、それで満足しておこうかな――。




読んで下さった方、皆様に感謝を。


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