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1362/1998

見慣れない物がランジ村にあるようでした



「ん、あれは……?」

「ワフゥ?」

「何か見えるよ?」

「なんでしょうか?」


 村の入り口に近付き、段々と建物もおぼろげに見えるようになった頃、見覚えのない何かが入り口の向こう側に見えた。

 俺だけでなく、レオやリーザ、クレアも気付いて声を漏らしつつ、それぞれ首を傾げる。


「……建物、かな? 前に来た時はなかったのは間違いないけど……」

「そうみたい、ですね」


 目に入ったのは、大きな何か……目を凝らしてみると建造物のように見える。

 というか、家のような?


「レオ、わかるか?」

「ワフッワフッ! ワフゥ?」


 レオに聞いてみるけど、何かはさすがにわからなかったみたいだ……そりゃそうか。


「何か大きい物が建っているってー。何かまではわからないって言っているよー」

「ありがとう、リーザちゃん。でも、大きい建物……急造したのでしょうけど、入り口にあるのはどうしてでしょうか?」


 シェリーがフェン達と一緒にいるため、代わりにレオの言葉を通訳してくれたリーザにお礼を言うクレア。

 とりあえず、あれが建造物だという事は間違いないみたいだ。

 遠目で見ても大きいのがわかる建物、平屋が多かったランジ村には似つかわしくない気がするけど……いつの間にあんな物を建てていたのか。 


「もしかしてですけど、あれが新しく作った屋敷でしょうか?」

「あ、確かに。あれだけ大きければ、レオも入れそうだし……でも、作るのはランジ村の北側で入り口近くじゃなかったはずだけど」

「そうですよね……言っていて違うと思ってしまいました」


 クレアの予想は、作ってもらった新居となる屋敷。

 確かに遠目に見ても大きい……公爵家の別荘であるこれまでいた屋敷程ではなくても、かなりの大きさだ。

 あれが新しく作った屋敷、と言われてもすんなり納得しそうではあるけど……建築予定地は前に来た時に見聞済みで、ハンネスさんの家から森へ向かった北側だったはず。

 クレアも違うと思ったのか、苦笑しているように入り口付近に立てていないはず。


 だからあれは別物のはずだけど……もし場所の変更があれば、セバスチャンさんから報告があっただろうからな。

 でも、だったらなんで大きな屋敷と言える建物を、入り口付近に作ったのか。


「ワフゥ?」

「ん、どうしたレオ?」

「ママ?」


 段々と近付いて来る大きな建物、というよりランジ村の入り口。

 その途中、走りながらレオが不思議そうな声を漏らした。


「ワフ、ワフ? ワフー」

「何か、誰か? が近付いて来るってー」

「誰かが? 村の人の迎えとかだろうか?」

「でも、入り口で待っていれば、私達が到着するのがわかっているはずですし、こちらに来る必要はないのでは……?」


 レオが言うには、村の入り口から誰かがこちらに向かって来ているらしい。

 村の人達の誰かかな、とは思ったけどクレアの言う通りわざわざこちらに来る必要はないはずだ。

 というより、途中で迎えられるより村の入り口まで待ってもらった方がいいのは間違いないし、向こうもそれはわかっているはずだ。

 こちらには、幌馬車も含めて複数の馬車と馬、それからフェンリル達がいるんだか……途中で止まるのはそれはそれで時間がかかってしまう。


「……んー、確かに、誰かがこちらに向けて走っているのが見えるね」


 目を凝らしてみると、こちらに向かって来る人の影が見えた。

 建物の大きさもさっきより実感できる程近くなり、あと数分もあれば到着するような距離になったからだけど……。

 空を飛んでいるラーレやティルラちゃんなら、もっと早く発見していただろうか? エッケンハルトさんの頭上高くを旋回しながら飛んでいるみたいだから、見つけているなこれは。


「そうですね。というか、あれって……はぁ……」

「あ、おじちゃんだー!」

「リーザ、そう呼ぶようにしたんだな。ともあれ、あれは間違いなくエッケンハルトさんだね……」


 俺と同じく目を凝らして見ていたクレアが、何かを呟いて唐突に溜め息を吐いた。

 リーザの上げる声を聞くまでもなく、近付いて来るのがエッケンハルトさんだとわかったからだろう……ランジ村に向かう俺達と、走って来るエッケンハルトさん。

 人だと認識できるようになってから、はっきり見えるまではそう時間はかからなかった。


「何か、手を振っているけど……」

「多分、私達を呼んでいるのかと。お父様ならそうするでしょうし」

「確かに」


 思わず頷く俺。

 エッケンハルトさんだからなぁ、俺達が近付いているのがわかって走り出してもおかしくないし、大きな声で呼びかけても不思議はない。

 こちらは、馬車の車輪が走る音で何を言っているのかは聞こえないが。


「ワフ、ワフ」

「あー、後ろからさらに人が……あれは、護衛さんかな?」


 レオの鳴き声に導かれるように、エッケンハルトさんのさらに後ろを見てみると、数人……三人程の鎧を着た人が追うようにして村から走って来ていた。

 おそらく、飛び出したエッケンハルトさんを追っているんだろう。

 重そうな鎧を着ているのに、大変だ。


「護衛を振り切ってまで、こちらに走って来るなんて……すみません、タクミさん」

「いやいや、エッケンハルトさんならではだと思うし、クレアが謝る事じゃないけどね。気持ちはわからなくはないし」


 クレアに謝られる程の事じゃないと、首を振って頭に手を乗せて少しだけ撫でる。

 おそらくエッケンハルトさんの事だから、ほんの少しでも早くクレアやティルラちゃん、娘達に会いたかったんだろうな。

 誰が見ても、エッケンハルトさんがクレア達を溺愛しているのは間違いないし。

 それで待ちきれずに、護衛さんを置いてきぼりにして走って来るというのも、エッケンハルトさんらしいと言えばらしい。


「おー……! ク……!」


 さらに程なくして、エッケンハルトさんが叫んでいる声の一部が聞こえ始めた。

 その頃には、村の入り口付近に立っている建物の大きさもはっきりとわかるようになり、また村を囲んでいる柵が新しくなっているのもわかった。

 というか、これまで木材で作られた柵だったのが、人の胸くらいまでの高さのレンガになっている……街道作りで余ったからとか? じゃないよな。

 まぁ、防犯というか魔物を防ぐ意識的な事で、木の柵を止めたのかもしれないが……いつの間に――。




読んで下さった方、皆様に感謝を。


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