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1361/1998

大きく決まりを変えるのは難しそうでした



「ふむ、成る程……そうなりましたか」

「はい。事は魔物相手である以上、ひとまずはと。徐々に慣らしていく方針のようです」


 ランジ村到着予定日の朝、食事を終えて出発の準備を整えている間に、アルフレットさんからの報告を聞いて頷く。

 ユートさんが合流してから、時折クレアやセバスチャンさん達と話していた、従魔の扱いに関する取り決めだな、素案だけど。

 俺は特に参加しなかったけど、アルフレットさんが代わりに話をしてくれていた。

 エッケンハルトさんが来たら、すぐかどうかはともかくできるだけ早いうちに決められるように、到着までにある程度内容を練っておきたかったらしい。


 移動初日の夜にクレアと話したように徐々に決まりを変えていく……という方向なんだけど、考えていたよりはかなり抑えめだった。

 内容としては、従魔にした魔物を不当に扱わない、人を襲わせないとかで、まぁ人を襲わせたりすれば当然取り締まられるが、不当に扱わないの部分はほとんど努力義務のようなもので、強制力はない。

 ……あまりに目に余るようなら介入するんだろうけど、どこからどこまでが不当かそうじゃないかは、魔物との従魔契約をした人次第となるわけだな。

 とは言っても、素案が通ればまずは公爵領全体に広くお触れを出すので、従魔を持っていない人達も知る事になる……もし不当に扱っているのを見かけたら、報せてくれる人もいるだろう。


 あとは、従魔を連れている人はできる限りそれを隠さない事というのもあったが、これで誰々が魔物を従えているなどの情報が得やすくなると期待しての事らしい。

 こちらも、従魔に関するお触れを見て知った人達からの、不当な扱いを見かけたら報せる人がいる事を期待している部分もあるみたいだな。

 あくまで素案で、これ以降はエッケンハルトさんに提案してみて、検討してから……となる。

 今すぐではないのが歯がゆいけど、こういうのは急いだって成果は上がらないし、どこかで問題が出てしまうからな、じっくり考えた方がいいか。


 クレアとユートさんの一致した意見として、いずれは従魔契約をした人を登録制として、登録しない人は街や村に入れないなどの罰則が与えられるようにしたい……らしいけど、それも難しそう。

 登録を管理する人、取り締まる人など、その人達を集めるだけでも年単位がかかりそうだからなぁ。

 とりあえずは徐々に、少しずつ従魔を従えている人もそうでない人も、魔物を連れるという事になれてもらってから変えていくとなりそうだ。

 魔物が相手だから、重要視する事に忌避感を持つ人もいるみたいだからな。


 例えばヴォルグラウのようなウルフだって、従魔になっていない頃に人を襲っている可能性だってあるんだから、魔物というだけで嫌う人がいてもおかしくないわけで。

 ちなみに、まずは公爵領で慣らすように決まりを変えていき、そこから波及するように国全体へ行き渡らせるよう働きかける、とユートさんは約束してくれた。

 最近従魔が急激に増えたラクトスに問題が顕著なだけではあるが、他の場所でもないわけではない事らしいから。


 公爵領を自治体と考えるなら、そこで施行された条例を国全体でも適用できるように、実績を持って働きかけるっていう感じだろうか。

 公爵家と大公爵、もとい初代国王と、権力者が近くにいるっていうのは心強い。

 あまり頼り過ぎてはいけないとも思うが……。


「ありがとうございます、アルフレットさん」

「いえ。ですが、タクミ様が参加しなくてよろしかったのでしょうか?」

「いいんですよ。俺はあまり、そういった事に詳しくないですし……皆を思って変えられる人物だとは思っていませんから」


 俺に、決まり事を作って統治していくなんて才能はない……と思っている。

 だから、俺はこう思う、俺だったらこうしたいといった希望や願望を言う事はあっても、自分から参加する事はこの先もないだろう。

 意見を求められたら、俺なりに考えている事を伝えたりはするけどな。

 あくまで俺は一市民というか、国民の一人なだけだ。


 誰もが納得するようなすごい案が浮かぶわけじゃないし、国民の生活が豊かになるような方法を思いつくわけじゃない。

 日本の知識はあるけど、そこはユートさんがいるからな。

 そもそも、日本でできていた事がこの世界で通用するかどうかもわからないんだし。

 まぁ、『雑草栽培』を使って公爵領の人達に対しての手助けくらいが精々で、俺の身の丈に合っていると思う。


 少しでも苦しむ人が減って、俺自身は穏やかにレオやリーザ、それからクレアと一緒にいたいと願うだけだ。

 ……もちろん、薬草や薬での利益を得る事はするけど。

 従業員さんの給料とか、レオやフェンリル達が食べる物に困らないようにしないといけないし。

 いや、レオ達なら困ったら森で魔物を狩って、食料にしそうだってのはともかくとしてだけど。


「そろそろですね……」

「ワフ!」

「あ、パパあれ!」

「村の入り口が見えてきたね」


 アルフレットさんとの話を終えて、ランジ村へと再出発。

 今日はレオに俺とクレア、それからリーザが乗っている。

 野営場所は近かったので、ほどなくして遠目に村の入り口が見えた。


「村長のハンネスさんはともかく、また前みたいに村の人達総出で迎えられるのかな?」

「どうでしょう? ですが、先触れは出していますので、迎える準備はしてくれているはずです。村の人達は特に、タクミさんとレオ様を慕っていますから」


 慕っているかはともかく、前に来た時も歓迎されたのは間違いないし、喜ばれていたのは素直に嬉しいと思う。

 そのためって言うわけじゃないけど、やっぱりそれだけ考えてくれると少し無理をしてラモギを届けたり、襲ってきたオークと戦った甲斐があったとも思える。

 

「ちょっと大袈裟だとは思うんだけどね。まぁ、気持ちは嬉しいよ。でも、それなら公爵家の令嬢であるクレアを迎えるために、総出って事もあるんじゃない?」

「貴族の娘だからと、総出で迎えなくてはいけないという義務はないのですけどね……お父様相手でも、そこまでは。ラクトスでも、街の者達が迎えるわけではないでしょう」

「まぁ、それもそうか」


 村だからこそ、というのはありそうな気がしたけど……ブレイユ村でもそうだったし。

 でもそれだけ、俺やレオだけでなく公爵家の人達が領民に慕われている証拠だろうな、と一人で納得した――。




読んで下さった方、皆様に感謝を。


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