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クレア達の期待を背負いました



「私も、できる限り手伝います! ライラもよね?」

「はい。タクミ様が今仰られた物ができるのであれば、多くの女性……いえ、この国の女性全てを救う事になるかもしれません。私だけでなく、使用人、雇った従業員だけでなく、ランジ村にいる女性達も諸手を上げて協力して下さる事でしょう」

「……さすがに、女性全てっていうのは言い過ぎだと思いますけど」


 あくまで、髪油、そして化粧品だからな。

 女性の悩みの一部を解消できるかもしれないが、救うって言うのは大袈裟だと思う。

 まぁ、協力してくれるだろうってのはありがたい事だけど。

 代わりに、もしできなかった時の失望とか落胆が怖い……。


「疲労回復薬草のような物も作れるのです。きっとタクミ様ならできるのでしょう。もし必要であれば、私だけでなく閣下を存分にお使いください」


 前のめりのルグレッタさん……女性よりも騎士としてって言っていたのに、こういうところはのめり込むようだ。

 恋する乙女だからって事にしておこう。


「いや、ユートさんを使ってなんて勝手に言っちゃ……あ、でも協力してもらえると嬉しいかもしれません」

「えぇ、存分に。タクミ様の気が済むまで!」


 仕えているうえに想い人でもあるユートさんまではどうなんだろう、と思ったけど、協力してもらった方が良さそうだと言い直す。

 深く頷いたルグレッタさんはともかくとして、ユートさんは気が遠くなるくらいこの世界で生きているけど、おぼろげながら日本での記憶も残っているはず。

 というか、俺と話していて懐かしさも手伝って思い出している部分が大半らしいけど。

 それなら、椿油を採集して使うに至るまでの行程で、いくつか相談をさせてもらおうと思う。


 何もわからない状態から椿……カメリアを作ってさぁ! となっても何からしていいかわからないからな。

 ユートさんも男で、俺と同じく無頓着な所があるみたいなので、あまり期待できないかもしれないが、それでも話をしないよりはしてみた方が、何か得られるものがあるかもしれないから。


「これは、凄い物ができる気がします!」


 放っておいたら鼻歌でも始めるんじゃないか? と思う程上機嫌なクレア。

 さっきまで眠気に負けて寝ていたのもどこへやらだ。

 ライラさんも同じくだな……。


「いや、あまり期待されても……もしできなかったら」

「いえ、タクミさんがこれまで考えられた事で、皆の期待を裏切った事はありませんから!」

「……そうだっけ?」


 本当に期待を裏切らなかったかはわからないけど、できるだけ嬉しそうにしているクレア達の期待を裏切らないようにしよう。

 ……もしできなかったら、別の何かで代用する事も考えておかないと。

 ゴムみたいに『雑草栽培』任せで作れたら、クレア達の要望に応えた事にできるかな。

 なんて少し後ろ向きな事も考えつつ、植物からの油を採取する方法などを記憶から探る。


 馬車の中では、再びクレア達による女子トークが始まったから……大体は、現在の化粧品などに対する愚痴とかが多かったけど。

 とりあえず、女性が自分を綺麗に見せるために苦労をしている事はよくわかったけど。

 あと、肌が日に焼けないために塗るらしい物は、ただのおしろいで白く見せているだけであって、実際に焼けていないわけじゃないので気を付けて欲しいと思う。

 あと、おしろいに有害な物質が使われていないか気になったけど、そこは大丈夫らしくちょっとだけ安心。

 

 日焼け止めとか、美白的な観点はこちらの世界の女性にもあるんだなぁ……確実に、地球から来た人達の感性が影響しているんだろうけど。

 もしかしたら、おしろいとか一部、それかほとんどの化粧品の開発にも関わっているのかもしれない。

 なんて事を考えつつ、ランジ村へと向かう馬車の中、時折相槌を打ちながら記憶を探りつつ、窓の外を見る自分が遠い目をしているのを自覚しながら過ごした。

 昼食のための休憩が待ち遠しかったのは、空腹よりもなんとなく肩身が狭い女子トークのせいだったのかもしれない――。



 ――昼食休憩のあと、再びランジ村に出発してしばらく。

 村まであと一時間もかからないくらいの距離で野営をし、夕食を終えて鍛錬まで終えた。

 道中、特に昼食後は初日のリーザのように満腹になったせいか、かなりの眠気に襲われて馬車の中で仮眠。

 揺れる馬車でも寝られたのは、こちらの世界での移動に慣れて来ているからかもしれない。


 馬車には俺以外にもクレアだけでなく、ライラさんの代わりにジェーンさんがいたけど、女子会で夜を明かした人達は全員寝ていたようだ。

 俺も含めて、昼までは何とか耐えられたけど……といった感じだったな。

 まぁ、ライラさんやルグレッタさんは、別の馬車だったけど。

 そうして、今日やる事が全て終わり就寝するだけなんだけど……。


「……眠れない」


 いつもなら寝ている時間、野営中はさらに男子会と女子会の時を除いてさらに早い時間に寝ていたにもかかわらず、昼間に仮眠を取ったせいか、シュラフに潜り込んで目を閉じても寝付けなかった。

 なんとなくテントを出て、すぐ近くで丸くなっていたレオの所へ行き、呟く。


「ワフ?」

「ちょっとすまないな、レオ。眠くはないか?」

「ワウワフ」


 俺を見て首を傾げるレオ、丸まっている体に寄りかかりながら聞いてみるが、眠いという程ではないがいつでも寝られると言った答えが返ってきた。


「ちょっとだけ、ここでゆっくりしてもいいか?」

「ワウ」

「ありがとうな」


 レオの睡眠を邪魔しちゃ悪いから、一応許可を取って……レオから頷きが返って来るのを見て、安心して寄りかかったレオに体重をかける。

 以前は、レオの方が俺に寄りかかる、というか抱かれる側だったのになぁ。

 それにしても、寝ようとして寝れない事なんてほどんどなかったのに、今日に限ってどうしたんだろう? と不思議に思う。

 昼間に仮眠とはいえかなり熟睡したせいもあるだろうけど、この世界に来てからは健康的でこんな事はなかったのに。


 いや、こちらの世界に来る前からそうだったか。

 まぁ日本にいた頃、特に仕事を始めてからは激務で少ない時間でも寝ないと体が保たなかったからでもあるか――。




読んで下さった方、皆様に感謝を。


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