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ルグレッタさん達の旅の話を少しだけ聞きました



「もしまた疲労回復薬草が必要になりましたら、その時にまた改めて」

「はい。まぁ、そうそう必要な事がない方がいいんですけどね……」


 疲労回復薬草は売らないけど、あげたりはする。

 ただこれは、商売されかねない程の量は渡さず、なおかつ信頼できる人に対してとか、目の前で薬草を食べる人に対してのみだ。

 まだ出回らせる気はないのだから、このくらいの匙加減がいいだろうと思う。

 ……どうしたって、何か問題は出るかもしれないし……それくらい、『雑草栽培』で作った特殊な効果の薬草は、成果が出過ぎる。


 まぁ、身体強化薬草くらいは売ってもいいかなとは思うけど、あれは実感できる範囲で効果は出るが、結局はちょっとした運動をする時の補助くらいだから。

 肉体労働系の人達には重宝されるかもしれないけど、それだけでものすごく身体能力が上がるわけじゃない。

 でもとりあえず、まだこれから薬草畑を作るんだから、地に足つけたというか……堅実に既存の薬草や薬と、様子見で作ったミリナちゃんの調合薬からだな。

 ひとまず、薬草を大量に作る態勢を整えないといけないし。


「タクミ様の薬草が公爵領、さらに国中に行き渡れば、助かる者も多いでしょう。そして莫大な利益も手に入るかと」

「いやぁ、利益は出さないととは思いますけど……従業員さんも雇ったわけですし。でも、莫大な利益までは……」


 別に俺は、全ての病を根絶する! なんて志の高い事は考えていない。

 せいぜいが、病や怪我で困っている人達を少しだけ助けられればいいな、程度だ。

 そもそも、この世界に来る際に授かった力で、元々備わっていないからだろうか……薬草畑の運営や生活のためには使わせてもらうけど、これで大金持ちになろうという気がまったく起きない。

 むしろ、利益を得ようとする事で忙しくなって、レオやリーザ、それからクレアと一緒にいる時間が減って、ブラックな会社に勤めていた時のような余裕がなくなる方が嫌だ。


 お金第一ではなく、人助けになるような事に少しでも関わりながら、平々凡々とのんびり過ごしたいなぁと思っている。

 ランジ村に到着したら、ある程度忙しくなる事が決まっているけど……。


「欲がないのですね。閣下なら、これでお金儲けをして豪遊する! くらいは言いそうですが」

「あの人はそんな事……言いそうですけど」


 ユートさんなら、確かにルグレッタさんが言ったのと同じ事を叫びそうではある。

 とはいえ悪い事に使うとかではなく、正当に稼いで自由に使う、くらい……だと思う、多分。

 というかユートさん、お金儲けなんてしなくても裕福や大富豪が裸足で逃げそうなくらい、持っていそうだし。

 元最高権力者だから。


 国のお金と、自由に使えるお金は違うんだろうけど。

 あ、だから今、自由に旅をして、どれだけ使っているかはわからないけど、自由にお金を使っているとも考えられるのか。

 しがらみからの解放感を味わっているとか?


「放っておくと、明日の食事や宿代すらなくなる程、お酒を飲み始めるんです。しかも、その場に居合わせた者も巻き込んで……邸宅に戻れば、蓄えは山程あるのですが、何故かその場で路銀を稼ぎたがりもして……」

「あはは……た、大変ですね……」


 ルグレッタさんの愚痴に、俺は乾いた笑いしか返せない。

 銀行がないため当然ながら、どこでもお金を引き出せる現金自動預け払い機なんて物も存在しないため、旅に持っていけるお金は限られる。

 資産という意味ではかなり持っていても、だ……紙幣ならまだしも、大きめの硬貨だからかさばるし、重い。

 だから旅先で豪遊なんぞしようものなら、すぐに路銀が尽きてしまうのに、気にせず使ってしまうのかユートさん。


 ルグレッタさん、苦労しているなぁ……話を聞けば聞く程、なんでユートさんなんだろう? と思わなくもないけど、好みは人それぞれで余計なお世話だな。

 恋に『落ちる』なんて言う人もいるくらいだし。

 ただ、お酒を大量に飲む理由はギフトのためだろう……ギフトを使う力になるって言っていたから。

 ……お酒が好きだからっていう理由も、何割かはあるような気もするけど、居合わせた人を巻き込むのは酒豪の振る舞いだし。


「というか、路銀を稼ぐってどうやって……? さすがにすぐ雇ってくれて、しかも稼げる仕事はあんまりないと思うんですけど……」


 思いつくのは日雇い系の肉体労働だ……まぁ、こちらの世界はまだまだ肉体労働の需要が多そうだし。

 ただ、ギフトというか魔法で補えるのかもしれないけど、ユートさんって運動神経があまり良くないとかって言っていたっけ。

 なんにせよ、すぐまた旅ができる程のお金を稼ぐのは、難しい気がするなぁ。


「それは、大きな街などになると狩った魔物を引き渡して、報酬を得られますので、それで。オークなどのような、食用になる魔物でしたら小さな村でも多少は買い取ってもらえますし、手続きをすれば市場などで売れますから」

「成る程……」


 以前、フェンリル達が森で狩った魔物を、ラクトスの衛兵で引き取ってもらった事があるけど、それと同じような事だろう。

 生業にしている人はほぼいないという話だったけど、ユートさんがレオに逸らしてもらった魔法やギフトを考えると、一定以上の収入を得るのはそう難しくないんだろうな。

 街の周囲にいる魔物が少なくなって危険が減るし、場合によっては村の食糧にもなる……悪い事じゃないな。


「閣下は好んで危険な魔物……兵士が最低でも数人、場合によっては軍を動かす程の魔物を狩ろうとするので、共にいる私は何度死を覚悟したかわかりませんが……」

「もしかして、その時にフェンリルと遭遇したり……?」

「もちろん何度も。西にあるフェンリルの森程、大量のフェンリルは各地にいませんが……数体から十体程度の群れなら多少は。巷では獰猛な魔物として認識されていますが、本来温厚な魔物です。ですので、人間が危険な場所の奥地にでも行かないか限りは、遭遇しないはずなのです」


 初めてフェンリルの事を聞いた時、セバスチャンさんも獰猛な魔物と言っていたっけ。

 フェンリルと接していると、いざという時は戦うけど基本は温厚で平和を好んでいるように見える。

 孤児院の子供達も、受け入れて一緒に遊んでいるくらいだしな……一部、加減がわからない子供が毛を思いっ切り引っ張ってしまって、悲鳴を上げたフェンリルもいたけど。


 まぁ、その子供は注意して優しくと伝えたんだけど、その時ですら毛を引っ張られたフェンリルは怒らなかったくらいだ……ちゃんと撫でて慰めておいたが。

 ともあれ、フェンリルが温厚だとわかるくらいには、ルグレッタさんは何度も接しているんだろうな――。




読んで下さった方、皆様に感謝を。


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