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結局問い詰められる事なりました



「んー?」

「成る程成る程……」

「これはつまり、そういう事だよなぁ……?」

「某にも、今のはわかりやすかったですな」


 なおも首を傾げて、今の自分の反応を不思議がるユートさん……やっぱり気付いていない様子。

 俺とフィリップさん、そしてニコラさんはなんとなくどういう状態かを察して頷く。

 あまりいい話を聞き出す事はできそうにない……と半ばあきらめかけていたのに、思わぬ収穫だ。


「まぁ、ユートさんの好みはわかったよ。フィリップさんもだけど……あと、ニコラさんもかな」

「某もですか?」

「コリントさんって、髪は短めだったよな」


 これ以上ユートさんに突っ込むと、変な方向に行きそうなのである程度わかったところで、話を切り上げる……というか話を変えた。

 今ここで、ルグレッタさんへの気持ちを自覚させようってわけじゃないし、そういうのは俺達が強制できるものでもないからな。

 やり過ぎると、おかしな方向に行きそうなのは相手がユートさんだからという事でもある。


「い、言われてみれば……」


 話を変えた先のニコラさん。

 さっき長い髪は邪魔そうに見える、と言っていたけどそれはつまり、短い髪が好みという裏付けでもある、かもしれない……こじつけだけど。

 話を変えるために犠牲になったニコラさんには悪いけど、それで通させてもらう事にしよう。

 ……明日にでも、ニコラさんには謝っておく。


「そういえばタクミ、クレアお嬢様はどうなんだ?」

「え、俺? クレアはってどういう?」


 ニコラさんを矢面に立たせた……と思いきや、またフィリップさんから俺への質問。


「クレアお嬢様の髪の毛だよ。よく、撫でているのを見るぞ? さぞ触り心地がいいんだろう?」


 ニヤニヤと、クレアの事を聞くフィリップさん。

 しまった……隙を見せたらこっちに飛び火、いや直球が飛んできた。

 というか、まだ髪の毛の話は続いていたんだ。

 ……コリントさんも含めて、髪の長さがどうのと続けたのは俺だけど。


「いやぁ……まぁ、悪いとは決して言えないかなぁ」

「お、緩んでるねぇ」

「緩んでますな」

「気になる事はあるけど、今はタクミ君の事だね。うんうん、タクミ君の手も思わず動くくらいだね」

「はっ!?」


 言われて、クレアの髪を撫でた時の事を思い出していると、気付かないうちに頬を緩ませて、しかも手まで動いていたらしい。

 なんという事だ。


「まだまだ夜は長いから、タクミからはあれこれ聞けそうだ! ふっふっふ、我らがクレアお嬢様を射止めたその手腕、存分に聞かせてもらおうか!」


 夜は長いって、もうかなり深い時間で……って、そろそろ空が白み始める時間じゃないか!

 テント内に置かれている懐中時計を盗み見て驚いた、かなり長い間話し込んでいたみたいだ。

 それだけ話に夢中だったんだろうけど、全然気付かなかった。

 外では見張りの人が何度か交代しているはずなのに……。


「ふむ、某も興味はありますな。女性との接し方の手本となるやもしれません」


 ニコラさんにまで興味を持たれてしまった。

 コリントさんの事を真剣に考えているからだろうか。


「お見合いをことごとく断っていた、鉄の令嬢と呼ばれていた……僕だけしか呼んでいないけど、そんなクレアちゃんを落とした手腕は、確かに気になるねぇ」


 鉄の令嬢って……勝手に変な呼び方を付けないで欲しい。

 確かにお見合いの話は全て断っていたみたいだけど。


「「「さぁ、さぁ、さぁ!」」」

「ちょ、ちょっと……まっ……!!」


 三人から詰め寄られる俺……これは逃げられそうにない!

 ユートさんとルグレッタさんの事は、存外に収穫があったのはともかく、なぜかこのあと俺はクレアとの事を問い詰められる羽目になってしまった。

 策士策に溺れるとはこの事か……いや違うか。

 俺は策士なんて上等なものじゃないし、フィリップさん達は元々興味があっただけの事だろう。


 ちなみにその後、空が明るくなり始めた頃にテントの外へ、フィリップさんの泣き声が響く事になった。

 理由としては、ユートさんはルグレッタさん、俺にはクレア、ニコラさんはコリントさんからの熱烈アプローチを受けているのに、自分にはなぜそういう話がないのかと悲観したからだったりする。

 わりとなぜか、という原因ははっきりしているんだけど……もう少し真面目に、女性と話したらとか、誰彼構わず誘うように声掛けをしない方が……と助言したら、深く落ち込んでいた。

 子供の頃読んだ、女性を射止めるための方法が書かれた内容を実践しているだけだったのに、と呟いていたので詳しく聞いてみる。


 すると、ナンパのススメとかいうとんでもない本の題名が出てきた。

 もちろんユートさんを問い詰めたけど、どうやらサムライのススメとはまた別の人が書いた本だろうとの事。

 本人はナンパなんてできる性格ではなく、人見知りで、理想を詰め込んだ本だったらしい……こちらの内容などはある程度、ユートさんも知っていた。

 その時発禁にしていれば良かったのに、と思わなくもない。


 というかサムライに関する本といい、ラクトスの孤児院は意外ととんでもな本を所蔵しているんだなぁ……あと、皆本からの影響を受け過ぎだ、わからなくもないけど。

 今度、アンナさんに言って確認させてもらった方がいいかもしれない。

 異世界からの間違った知識の流入は、できれば避けたいし。

 あと、その本の内容を否定されたフィリップさんは、かなり真剣に落ち込んでいたので、近いうちに真面目に相談に乗る事を決めた……というか懇願されて決まった。


 そんな話をしているうちに、空は明るくなり、もう朝と言っても差支えがない頃に折り重なるようにして力尽きた男が四人、夢の世界へと旅立って行く。

 懐中時計の針は、六の数字の少し手前を指していた――。



「あふ……あぁ、ほとんど寝た気がしない……実際にほとんど寝ていないんだけど……ふわぁ~」


 テントから抜け出し、眩しい朝日を浴びる。

 大体二時間程度しか寝ていないから、当然寝不足。

 テントは死屍累々のように、まだフィリップさん達三人が深い眠りに就いている。

 俺が起きられたのは、習慣になっている事とこれまでの経験からだな。


 どれだけ寝不足であろうとも、決まった時間前後でアラームなどの刺激があれば、必ず起きる癖……社畜経験のたまものだ、嬉しくないけど。

 ちなみに今朝の刺激は、外から聞こえたラーレとコッカー達の合唱。

 昨日の朝と一緒だな。




読んで下さった方、皆様に感謝を。


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