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ユートさんは厄介な趣味を持っているようでした



「一途な子っていうのは、ユートさんだけを好きになってくれる人とか、そういう女性かな?」

「そうだね。それで、僕が他の女の子と話している時、表向きはなんともない振りをしながら、内心で嫉妬しているような子がいいね」

「……え?」


 何か、おかしなことを言われているような……?


「ん? だって、嫉妬するって事は僕の事を好きで一途になってくれている証拠でしょ? それにさっきも言ったけど、好きになるってのは激しい感情の表れだと思うから……そうすると、もっと冷たく蔑んだ目で見てくれそうじゃない?」

「えぇ……」


 変わった趣味とは別の話かと思っていたら、そちらと繋がっている話だった。

 このやりきれない気持ちは、どこへ向けたらいいのだろうか……?

 もう、ルグレッタさん、色々諦めて別の人を探した方がいいんじゃないかとすら思えてきたんだが。


「……好みの女性から一途に想ってもらいながら、別の女性となんて……ユートさんと会ってから、何度目かのドン引きなんだけど」

「え、何度目かって……そんなに僕って引かれていたの?」

「まぁ……うん」


 そのドン引きした理由のほとんどが、今話している変わった趣味に関してばかりだけども。

 この世界での役職やら経歴やらを考えると、本当は気軽に話しかけられる人じゃないのに、おかげで気安く話せるってのはあるかもしれない。

 まぁ、そのドン引きする内容に関しては、あまり突っ込んだ話をしたいとは思えないが。


「仲間だと思っていたのに、うっ、うぅっ……」

「泣きまねまでしなくても……嫌っているとかじゃないから」


 仲間っていうのは、多分同じ日本からきたからだろう。

 そういう意味では俺も、仲間だと思っているしユートさんの事を身近に感じている。

 まだ話をした時間は長くないけど、それこそエッケンハルトさんよりも気安い関係……のように思っていたりする。


 エッケンハルトさんも、立場や地位とは関係なく話しやすいのは間違いないんだけど、第一印象はちょっと怖かったのはともかくとして。

 でも、ほとんどは初対面でレオに土下座した事で吹っ飛んだよね……そういえばユートさんも土下座したっけ、今回合流した時も含めて二回も。

 ……土下座したから、親しみやすいとかではないはず。


「とにかく、そういう被虐的? な方向とは別の何か……こういう女性が、ってのはないのかな?」

「うーん……そうだなぁ……」


 被虐的って言葉を否定しなかった、自覚はあるんだなぁ。

 これで自覚なかったら、それはそれで問題かもしれないけど。


「笑った表情が可愛い、とかそういうのでいいのかな?」

「そうそう、それだよ! やっとまともな答えが聞け……」


 ようやくユートさんからまともな回答が得られた! と喜び、一安心しかけたところではたと言葉を止める。

 もしかして、いやもしかしなくてもだけど、その笑った表情って……?


「どうしたの、タクミ君?」

「いや……間違っていると思う、そんな想像なんだけど……その笑った表情って、相手を追い詰めた時に見せるとか、そういう?」

「お、さすがだね、タクミ君! よくわかってる! もしかして、タクミ君も?」

「俺は違うから……絶対そんな事はないから!」


 さすがにそれはないだろう……と思いつつも聞いてみると、そのものずばりだった。

 もうこの人に付ける薬はないのかもしれない。

 ユートさんが喜びながら、俺も仲間に引き入れようとあらぬ疑いをかけたのは、必死で否定しておくのを忘れない。

 ちなみに、今これに思い当たったのは以前ルグレッタさんが、そういう表情を見せた事があるからだ。


 あれは確か、俺を貴族に……みたいな話をエッケンハルトさんとしていて、レオがいれば問題ないとか、もし反抗するようなら徹底的に……みたいな事を呟いていたっけ。

 ルグレッタさん、やっぱりユートさんの見込み通りな人なのかもしれないなぁ。

 優しい人とか、そういうのも間違ってはいないと思うけど、あくまで一面としてあるだけだろう。


「はぁ……もういいや。ユートさんから女性に関する話を聞き出すのは諦めよう……」

「あ、なんか悔しい感じで諦められたよ!? ちょ、ちょっと待って。それじゃ納得いかないから!」

「待っても、良さそうな回答は期待できないから……ほら、フィリップさんやニコラさんも頷いているし」


 ルグレッタさんには悪いけど、もうこれ以上ユートさんから女性の好みらしいのは引き出せない、と諦めかける。

 ユートさんは俺の反応に抗議しているけど……ろくな答えが出ない気がする。

 フィリップさんやニコラさんも、同意見のようだ。


「いやいや、ちょっと、ちょっとだけ待ってね。うーんと、えっと……僕の趣味からは離れた……あれ? 僕の好みを聞きたいんだから、趣味から離れちゃいけないのか。うんー?」


 ブツブツと呟きながら、頭を揺らして考えているユートさん。

 だけど、漏れる声から聞こえる内容はやっぱり、あまり期待しない方が良さそうな気配を醸し出している。

 ルグレッタさん、俺の力が及ばず……すみません。

 俺の力なんて、元々あったかどうか定かじゃないけど。


「あ、そうだ! 長い髪が好きだよ。それから、艶やかな髪!」

「……髪?」


 女性の髪かぁ……長さや髪形など、男性からしても好みが別れるのは多々ある。

 こだわりのない人は、その人に似合っていればとも言うし、こだわる人は長さや髪形はこれがいい! と断言する程だったり。

 まぁ、人それぞれだけど。


 俺はどちらかというと、その人に似あっていればタイプではあるけど、ユートさんの言っているような長くて艶やか、サラサラな髪に目を惹かれる事はある……そのまま、クレアの事だけど。

 あと、ライラさんもか。


「……で、それはあれかな? 長い髪に巻かれたいとか、そう言いたいのかな?」


 これまでの流れで、ある程度ユートさんの言いそうな事は想像がつく。

 というより、以前高校の同級生でそのような事を言っていた知人がいたからだな。

 あの時は確か、写真集か何かを見ながら女性の長い黒髪を自分に巻き付けたい、とかなんとか言っていたっけ。


 話していたのが学校の教室で、俺を含めて多くの生徒からドン引きされたのは言うまでもない。

 その後、黒髪の貴公子と呼ばれ始めたのは完全な余談だな……その知人って、女子だったんだけど――。




読んで下さった方、皆様に感謝を。


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[一言] 黒髪の奇行子かぁ
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