本題かと思ったら変化球を投げられました
「タクミ、クレアお嬢様とはどうなんだ? 見ている方が恥ずかしくなるほど、いつもイチャイチャしているけど……予想を越えて、あそこまでタクミとクレアお嬢様が人目をはばからずに、二人でいようとするとは思わなかったぞ?」
「うぇ、俺!?」
本題、と言ったはずのフィリップさんはあろう事か、俺とクレアの話を聞きたがる。
あれぇ? ユートさんとルグレッタさんの事が本題だったはずなのに。
「あ、それそれ! タクミ君とクレアちゃんの事も聞きたい!」
「……本題とは一体……? ですが某も興味がありますな」
「ニコラさんまで!?」
本当の本題を知らないユートさんは当然フィリップさんの話に乗り、なぜかニコラさんまで乗っかってきた事に驚く。
もしかして、女性との関わりも武士道で云々なんて言ったから、興味が沸いてしまったとか?
「え、えーっと……クレアとは、おかげさまで仲良くさせてもらっています?」
「それは見ていればわかるよタクミ君! そうじゃなくて、クレアちゃんのどこに惚れたのかとか、他に気になる女性はいないのかとか、そういう事だよ!」
ユートさん、興奮させると少し面倒だなぁ……まさか、問い詰めようとしていた相手に、こうまで問い詰められる事になろうとは。
「ほ、他の女性が気になるなんて事は、一切ないかな。お世話になっている人は男女問わずいっぱいいるけど、好きだなぁって思える女性はクレアだけで……あぁもう! 何言っているんだ俺!」
途中で正気に戻って、はいないかもしれないけどとにかく恥ずかしさが限界を越えて、顔を振りつつ叫んでしまう。
男同士で……女性が混ざっていても同じだけど、大真面目に言うような事じゃない。
いや、クレアと二人だけとかなら、別だけども。
「おぉ~、凄いのろけがきたよ!?」
「タクミの新しい反応、面白いな!」
「ふむ、成る程。ただ一人の女性を愛する男、というのも一つの道なのですな」
「妙な納得しないでニコラさん!」
ニコラさんの、妙に納得して真剣に頷くといった反応が一番恥ずかしい。
「それじゃあ、さっきも聞いたけどタクミ君はクレアちゃんのどこが好きなの? 美人な所? それともあの胸部……いや、そこだけなら他にもいるかな?」
調子に乗ったユートさんが、グイグイ質問してくる。
それより胸部って……煩悩を断ちきれない男であるところの俺も、似たような事を考えた事があるけど……それなりに主張しているクレアの胸。
ただそこに惚れたとか、好きになったなんて事は一切ない。
……あと、口には絶対に出せないけど、クレアよりライラさんの方がまぁ、うん……失礼過ぎて、考えるのも躊躇われたため自分で自分を誤魔化した。
「どこが好きかは……優しいところとかかな? 美人なのはそうだけど、だから好きになったわけじゃないとは断言できるよ。でも一つの要素ではあるかもしれない。あと、最後の質問はノーコメントで」
「えぇ……ありきたりな答えだなぁ。もっとないの? こう、クレアちゃんから責められるのを想像して滾ったから、とかさぁ?」
「いや、それで喜ぶのはユートさんだけ……とは言えないかもしれないけど、俺は違うから」
冷たい目で見られたり、叱られて喜ぶような趣味は俺にはない。
まぁその、クレアが笑ったりむくれていたりと様々な表情をしているのは、見ていて和むし可愛いと思うけど……。
「あ、ころころと変わる表情とか、気持ちが出やすいところは好きだね」
「おぉ、いい答え。でも結局お手本みたいな答えで、あんまりおもしろくないよタクミ君」
「こういう事で、面白がらせようとは思っていないからそれでいいと思う」
好みとか、誰が誰を好きでどういったところがっていうのは、聞いている人を喜ばせようとして答えるものじゃない。
結果的に喜ばせる事はあったとしても。
……本気なのか冗談なのか判断がつかないユートさんとのやり取りで、恥ずかしさとかも落ち着いてきたかな。
そろそろいいだろう。
「それじゃあ逆に聞くけど、ユートさんの好みってどんな女性なんだ? というかそもそも、今好きな人とかっているの?」
自分の話から、本題へと移り変える絶妙な一手!
これで当初の目的通り、ルグレッタさんが知りたがっていたユートさんの好みが聞けるかもしれない。
「僕? うーん、そうだねぇ……昔結婚していた時なら、間違いなく奥さんが好きな人で、好みって答えるべきなんだろうけど……」
「結婚していた!?」
俺からの質問に、特に疑いなく眉根を寄せて考え始めるユートさん。
結婚という言葉にフィリップさんが大きく反応して驚いた……ニコラさんは、「ふむ……」と口に手を当ててそういう事もあるか、というような仕草だ。
二人共、ユートさんの昔を知らないから、特にフィリップさんが驚くのも当然か。
結婚して所帯を持っているようには見えない、というのもある。
「あ、ちょっと口が滑った。結婚していたは忘れてね、二人共。とにかく、今は一人だから」
「は、はぁ……」
訂正訂正、とフィリップさんやニコラさんに一人だと強調。
よくわからず頷くフィリップさんと、またも「ふむ……」と頷きそういう事もある、とでも言うような様子のニコラさん。
誤魔化すつもりなら、今はとか言わない方がいいと思うけど……まぁこの二人が変な広め方をしたりはしないだろうから、多分大丈夫だろう。
ここだけの話、としてくれるだろうから。
というかニコラさん、ユートさんの話に移ってからふむなんて言いつつ頷いているだけだ。
もしかして興味を失ったとか、興味が沸かないとかかな? 飽きている、というわけではないと思うけど。
いや、違うな……口に当てた手の中で小さく、女性との関わり方がわからない、なんて呟くのが聞こえた。
とりあえずさっき話していた武士道と女性、そしてコリントさんの事を考えているのかもしれない。
わからないなら考え過ぎず、コリントさんにとりあえず合わせるのでいいと思う、不器用だったりで男性を嫌うような人じゃないと思うから……多分だけど。
「とにかく、今好きな人かぁ……特にはいないかなぁ?」
「いないんだ?」
ルグレッタさん、玉砕……いやいや、今いないだけでこれから気になって行って……という可能性もあるからまだ諦めるには早い、かな――。
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