シルバーフェンリルのジャンプはすごいものでした
「ワウ!? ワ、ワフー!!」
ジャンプと言われて、驚いてソーセージに釘付けだった目を……というか顔を俺に向けて、すぐに理解したレオは、高く高く跳び上がった。
おー、ちゃんと反応できるのは凄いなぁ。
ジャンプしなくても、食べさせるつもりだったけど……後でしっかり褒めて撫でておかないとな。
って……ん? ジャンプと言うには高く飛び上がり過ぎているような……? というか落ちて来ない?
「あ~れ~……なのよう……!」
「あ、フェヤリネッテが飛んで行った……」
高く高く、遠くに見える森の木よりも高く、大きなレオの体が小さく見え始めるくらい上昇していく中、尻尾にくっ付いてたらしいフェヤリネッテが、明後日の方向に飛ばされるのが見えた。
声も届いたけど大丈夫だろうか? あー、うん、大丈夫だな。
むしろ飛ばされる勢いを利用して、クルクル回転して遊んでいるようだ。
「あ、ラーレだ!」
空を示すリーザの言葉通り、食後の運動か何かで空を遊泳していたのか、上昇するレオの先に翼を広げたラーレが横から登場。
「キィ!? キィー!!」
突然地上からレオが来たので、驚いた声がこちらにまで届く。
かなりの高さだから、そりゃ安全と思って飛んでいたのに、いきなり下からレオがきたら驚くのも当然だろう。
「アオォォォォン!!」
「キィ―!?」
遠吠えのような鳴き声を上げたレオが、ラーレに接近したと思った瞬間、突然跳ねた。
というか、何かを蹴ったような動きをして、真っ直ぐ横へと飛んだ。
「あー成る程、そうやって避けるのか。そりゃ、フェリーやフェンもできていたわけだし、レオもできるんだな……」
「グルゥ」
フェリーとフェンが力試しをした時も、空中で方向を変えていたからな……シルバーフェンリルのレオにできてもおかしくないか。
フェリーは、さも当然とばかりに上を見上げたまま鳴いている。
そうして感心しているうちに、段々と高度を落とすレオ。
驚いたラーレは、そのまま飛び去って行った……あんまり遠くまで行くんじゃないぞー! と声を掛けるまでもなく、空で旋回して戻って来ていた。
「ワッフ!!」
どうだ! と言わんばかりに、顔を上げて胸を張る恰好のままで着地するレオ。
降りて来る際、何度も何もないはずの空中を蹴り、姿勢を変えつつ落下していたのは確かにすごかったから、レオが自慢気にするのもわかる。
「ママすごいすごい!」
「思い付きで言ったけど、シルバーフェンリルの凄さの片鱗を垣間見れたってとこかな……」
「はい……驚きました」
両手を挙げて喜ぶリーザ。
俺もそうだけど、同じくライラさんも驚いて感心もしている様子。
思わぬところでレオの凄さが見れたな……思い付きとはいえいい物が見れたと思っておこう。
「グルゥ、グルルゥ……」
フェリーはどうやったら、空中で何度も軌道を変えられるのか……というような事を言っていた、リーザ通訳。
以前やっていたから、フェンもできると思ったんだけど、どうやらフェンリルは一度のジャンプに一回だけしか軌道を変えられないらしい。
まぁ、そもそも空中で軌道を変えるなんて、魔法を使ってもできない(ユートさん談)人間には、一回だけでもできるのは凄い事なんだけどな。
「はぁ~よく飛んだのよう~」
「キィ、キィ~!」
満足そうに戻って来て、またレオの毛に紛れるフェヤリネッテ、楽しそうで何よりだ。
ゆっくり翼を広げて降りてきたラーレは、急に飛んでこないで! と言うように抗議する鳴き声を響かせる。
そんな皆を余所に、楽しそうなリーザと一緒に、レオを褒めつつソーセージを食べさせてやった……元々上げるつもりだったけど、凄い物を見せてもらったご褒美でもある。
あ、気付いたらライラさんもレオを撫でていたな……機会を狙っていたのかもしれない――。
――諸々の準備、というか大体は野営の片付けだけど、それらを終えてランジ村への移動再開。
「ワフ、ワッフ~」
「ふふ、レオ様ご機嫌ですね?」
「ワッフワフ!」
俺と一緒にクレアを乗せたレオは、走る足も軽快で機嫌良さそうに鳴いている。
機嫌の良さを感じ取ったクレアが問いかけると、これまた機嫌よく返すレオ。
朝食だけでなく、たらふくソーセージまで食べたんだから機嫌がいいのも納得だな。
俺やクレアを乗せているのも、理由のうちの一つだと思うけど。
出発してすぐは、はしゃいであちこち走り回っているのを落ち着かせるのが、少しだけ大変だったけども。
とりあえず、食べ過ぎでお腹が痛くなるような事はないみたいだ……まぁ、レオがいつも食べているソーセージの量から比べたら、ちょっとしたおやつ程度だったからだろうけど。
ちなみに、リーザはライラさんと一緒にフェリーに乗っている。
さらに後ろに引き連れているフェンリル達には、使用人さん達が乗っているんだけど……。
「チタさんとエメラダさん、あんな乗り方でいいのかな? まぁ、ある意味安全だけど」
「あの二人は、特にフェンリルが好きみたいですからね。あぁしている方がむしろ自然のように思えてきました……」
フェンリル達に乗っている使用人さん達、ほとんどが俺達と同じく背中に座っているだけだ。
けど、その中でチタさんとエメラダさんだけは、しがみ付く……というよりも、全身で抱き着いている形で楽しんでいる様子なのが、こちらからでも見えた。
どれだけ早く走っても振り落とされないだろうから、安全と言えば安全だろう。
一度レオがはしゃいでいる時近づいたんだけど、頬擦りまでしていたくらいだからなぁ。
フェンリルが好きと言うよりは、その毛触り肌触りが好きって感じだ……楽しそうで何よりだけども。
「ワウ? ワウワフ!」
「いや、止めておくよ。今はクレアも乗っているからな」
「ワフー」
チタさん達の方を見て話す俺とクレアの声を聞いて、同じ事をやってもいいと言うように鳴いたレオ。
さすがに二人乗っている状態であれをやるのは難しいので、丁重にお断りだ。
いずれかの機会にさせてもらおう。
「ん? あれはリルルと……ルグレッタさん?」
「そうみたいです。こちらに近付いて来ますね?」
「ワウー?」
ふと気付くと、リルルが少しだけ早めに走ってフェンリル達の群れを抜け出し、レオの方へと近付いて来ていた。
背中に乗っているのはルグレッタさんだ。
フェンはいないな……ユートさんが乗ってはしゃいでいたから、あちらはあちらで楽しんでいるんだろうけど――。
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