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1311/1998

リーザは満腹でお眠なようでした



 ――昼食とその片付けを終え、クレアやセバスチャンさん、ユートさん達が馬車に乗り込み早速とばかりに相談を始めた。

 特にセバスチャンさんが乗り気だったのは、デウルゴと直接話した事があり、ヴォルグラウとも接したうえで、これからもティルラちゃんのお世話をするために、ラクトス近くの屋敷に留まるからだろう。

 ラクトスは、今従魔を得ようとする人が増えているらしいし。

 話している内容は気になるけど、後で参加しているアルフレットさんに聞けばいいか……。


 ちなみに昼食のための簡易的な野営をしたのは、街道からかなり外れた場所で、ラクトス北側からランジ村の向こう側まで広がっている方の森近くだ。

 こちらも魔物がいる森だけど、ラーレが元々いた山に近くその影響もあって危険は少ない……フェンリルが数十体こちら側にいる時点で、野生の魔物からの危険ってなんだろう? と思わなくもないが。

 あとラーレも一緒にいるので、さらに襲われる危険も少ないとラーレ自身に保証された。

 まぁ、もし魔物が森から出てきたりなど、何かあるとしても街道近くでフェンリル数十体が休んでいる光景を広げて、道行く人達を驚かせるよりはマシか。


「こうして見ていると、本当に獰猛な魔物って言われていたのが嘘みたいだなぁ……ドッグランってこんな感じなのかな? いや、大きさはちょっとどころじゃなく大きすぎるけど」


 再度出発するため全体の準備が進む中、レオの背中に乗りながらフェンリル達の様子を見ながら呟く。

 体の大きさはともかく、多くのフェンリルを犬のように見た場合、ここがドッグランなのかという錯覚すら感じた。

 フェンリル達は食事に満足して、お腹を見せて転がっているのやじゃれ合っているの、子供達と遊んでいるのとで、思い思いに過ごしている……自由だ。

 周辺を駆け回っているフェンリルがいたり、お互いの顔を舐め合うフェンリル、さらにへそ天しているフェンリルのお腹に顎を乗せて寛ぐフェンリルなども見えた。


 こうして見ていると、やっぱりそれぞれに個性があるんだなとよくわかる。

 以前ランジ村にドッグラン的な何かを……と考えていたけど、実は実際に行った事がない。

 レオは近所の子供達と遊んで楽しそうにしていたし、俺自身に連れて行ってやる暇がなかったのが大きいか……。

 こうして見ると、同種族というか犬同士で戯れる時間ってのも、結構重要なんじゃないかと思った。


「すまないなレオ、考えてみれば一度もドッグランに連れて行ってやれなかった」

「ワフ? ワフーワウワウ」

「そうか? はは、そうだな」


 俺が今更ながらに謝りつつ、背中に乗ったままでレオの体を撫でると、耳を少しこちらに向けてからピクピクと動かして、首を傾げた。

 けど、俺と一緒だったからと嬉しい事を言ってくれて、特に気にしていない様子。

 まぁレオ自身がドッグランがどんな所か知らないだろうし、俺や子供達と遊べるだけで満足だったんだろう。


「ふわ~……」

「お、眠くなっちゃったかリーザ?」


 陽も高く心地いい風とちょうどいい気温、さらに満腹で眠気が押し寄せてきたんだろう。

 俺の前にいるリーザが可愛い欠伸をした。

 大きめの耳が、欠伸と一緒にプルプル震えるのが微笑ましい。


「うん~……」

「ははは、それじゃ寝ていてもいいぞ? 落ちないように俺が支えているから」


 俺が聞くと頷くリーザに笑いかけ、間に挟まる大きなクッション……もとい、一本の尻尾と一緒に抱きかかえるようにしてからだを支えてやる。

 リーザは寝相も悪くないし、こうしていれば落ちる事はないだろう。

 ちなみに、残り一本の尻尾はリーザ自身が抱き締めている……よく寝る時にする事だから、よっぽど眠いんだろう。

 ちょっと疲れもあるのかもしれない。


「う~、せっかくパパと一緒なのに……」

「今昼寝しても、ランジ村に行くまでまだまだあるから気にしなくてもいいと思うぞ? それに、向こうに行ったって、こうしてまたレオにリーザと一緒に乗る事だってできるんだから。だから、今は無理せず寝ておこうか」

「う~ん~……わかった~、約束~」


 レオが馬車の中を覗いていたように、リーザもこうして俺と一緒にいたかったんだろう。

 でも無理して起きているよりは、お昼寝して元気になってからでも遅くはない……これからだって、まだまだこうして一緒にいる機会はあるし、寝る子は育つだ。

 俺の考えを伝えて、少し強めに体を抱き締めつつ尻尾を抱いているリーザの手を握ってやると、安心したのか間延びした返事をしつつ頷いてくれた。

 頷いたというより、眠気に負けて首がガクッとなっただけかもしれないが。


「あぁそうだな。約束だ」

「す~……にゃすぅ……」


 約束は必ず守ると伝えるように俺が頷く頃には、リーザから健やかで気持ち良さそうな寝息が聞こえ始めた。

 結構、無理して起きていたみたいだな……。


「レオ、リーザが起きないよう気を付けて……ってできるか?」

「ワウ」


 寝始めたリーザを起こさないよう、小声でレオに伝えると同じく小さく鳴いて頷いてくれた。

 そうして、それぞれの馬車やフェンリル達が出発し始め、レオは乗っている俺やリーザを揺らさないようにゆっくりと走り出した。

 さすがに多少体が上下されたり、振動は感じるけどこれまで以上に揺れなどは少なかった……さすがレオ、器用だ。

 はしゃぐように、周囲を駆け回っていないのも大きいんだろう、馬車に合わせて進む速度が遅いのもそうできている理由の一つだろうな。



「ガウ、ガウガウ」

「ワッフワウ」

「ふむふむ、森から出て広い場所を皆で走るのが楽しい……と」


 出発してから数十分、完全に熟睡してちょっとやそっとじゃ起きなくなったリーザを支えながら、時折フェンリルと話す。

 並走してさらにレオが通訳してくれてと、レオもフェンリルも体力的にはかなり余裕があるようだ。

 話す内容に関しては、ほとんど今こうして走っている事や何か要望がないかなどだな。

 大体は特に不満はなく、むしろ森のように木々が生い茂っている場所ではなく広い場所を走るのが楽しい! というのに終始していたけど。


 木々の合間を縫って走るのも、当然ながら注意していないと木にぶつかったり植物に邪魔されるので、そう言った事に気を付けながら走るのはそれはそれで楽しいみたいではある。

 ただ、ほとんど何も気にせず走れるというのも気持ちいいのだとか。

 障害物競走と徒競走の違い……みたいなものかな? 違うか――。


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