表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

1309/1998

ウルフとフェンリルの差は大きすぎるみたいでした



「ウルフ達は僕が抑えていたからね。と言っても、攻撃するわけでもなく拘束したってとこかな? 魔法でちょいちょいっとね」 


 指をクルクルと回して簡単そうに言うユートさん。


「……ユートさんなら、できるんでしょうね」


 ギフトのおかげなのか、それとも別の何かなのかは定かじゃないけど、ユートさんならできるんだろう。

 見えないルグレッタさんを、特定できる可能性のあるウルフ達が抑えられていたなら、盗賊の集団にはもう成す術はなかっただろなぁ。


「ウルフ達はその後……?」


 商隊を襲わせたのは盗賊達だとしても、ウルフ達も人を襲ったわけで……脳裏にはあまり良くない想像が浮かぶ。

 野生の獣が山から出て来て人間を襲ったため、駆除されたなんてニュースを日本で見た事がある。


「強制されていた従魔契約は、ルグレッタが暴れた事でなくなったからね。もう人を襲わないように注意して、森の奥へ逃がしたよ」


 契約していた人間が……まぁその、死んだから従魔契約が無効になったって事だろう。


「暴れたとは……いえ、確かに暴れましたね。ですが、あれを注意と言うにはいささか優しい表現かと……」


 ルグレッタさんがユートさんに抗議しかけて、止めた。

 本当に暴れたんですね……。


「色々と散乱していたからねぇ、子供には絶対見せちゃいけない事になっていたよ。でもまぁ、ウルフ達は尻尾を文字通り巻いていたから、あれで良かったんだよ」

「……一体何が……?」

「あまり、詳しく聞かない方がいいかもね、クレア」


 ルグレッタさんが暴れた後、子供に見せちゃいけないというのはまぁなんというか、指示されて向かった衛兵さん達には気の毒だけど、片付け頑張って下さいと心の中で呟く事しかできない。

 ウルフ達の注意は、多分脅したとかだろうな。

 オークみたいに本能だけでなく、知恵ある魔物だからこそ、そして人間以上に色々な事に敏感だから、今頃そのウルフ達はまだ怯えているかもしれない。

 ……色々可哀そうだけど、今後人間に近付く事はもうない可能性が高いし、ウルフ達のためにもその方がいいかもしれないな。


 下手に近付いて来て、人を襲ったりしたら今度こそ危険な魔物として、狩られてしまうだろうし……。

 できればそうはなって欲しくない、というのはヴォルグラウを見ているからだろう。


「そういえば、話していて気になったんだけど……」

「なんだいタクミ君?」

「いやその……ウルフが訓練して、フェンリルに敵う事ってあるのかなって。ウルフのヴォルグラウは居るけど、レオはもとより初めてフェンリルを見た時、凄く怯えていたから」


 怯えていたのは、フェリーやフェンとリルルなどに囲まれた状態ってのもあったかもしれないけど。

 もし訓練をして鍛えれば、フェンリルにも通用するくらいになるのがウルフであるなら、あそこまで怯えるのかな? とふと疑問になった。

 そもそも、ウルフに訓練させていた連中のやっている事が、徒労なのか可能性があったのかという疑問も同時に沸く。


「うん、無理だね。そもそも種族としての格が違う。身体能力や魔力に関しても、違う。タクミ君によくわかるように言ったら、月とスッポン?」

「月とスッポンって……言わんとしている事はわかるけど」


 ちょっと違う気がする。

 月とスッポンは美醜を比べる言葉で、強さを比べる言葉じゃない……まぁ、ユートさんが伝えようとしている事はわかるけども。

 クレアもルグレッタさんも、両方その言葉は知らないので不思議顔だ。


「何にせよ、ウルフがフェンリルをなんてほぼあり得ないって考えた方がいいかもね。いくら訓練をしたと言っても」

「やっぱり、そうなんだ……」


 それなら、ヴォルグラウがフェリー達を見た時の怯えようは、よく理解できる。

 また、レオがフェンリルに対して雑魚とか特に脅威に感じないみたいな事を、以前言っていたのもわかる。

 ウルフとフェンリルに越えられない種族としての強さの壁があるとして、シルバーフェンリルとフェンリルの間にも同様に壁があるって事だな。


「人間みたいに、確かに訓練すれば何もしないよりは強くなると思うけどね」


 ウルフの中では強くなっても、フェンリルのようにはいかないか。

 ……フェリーとフェンの戦いみたいに、空中で方向を変えたり、地面にちょっとしたクレーターみたいな事まではさすがにできるようにはならないだろう。

 魔法を使ってなくてあれだから、ほぼほぼ勝ち目はなさそうだ。


「連携をしたら、可能性は多少出て来るのではないですか?」

「うーん……人と従魔にしたウルフとが協力したら、確かに可能性はあるかもね。数は必要だけど。ただまぁ、僕……というかルグレッタが潰した奴らの場合、数倍の数が必要になりそうだけど」

「……まぁ、一応可能性はゼロじゃない、という程度に考えていればいいかもしれないってとこだね」

「限りなくゼロに近いけどね。連携という意味で言えば、そもそもフェンリルだって群れで連携するから」


 単体のフェンリルなら、微かであっても可能性はあるかもしれないけど、それならフェンリル側も複数で連携するだろうってとこだな。

 シェリーやフェルはまぁ特殊な例として、フェンやリルルも基本的には二体以上で行動している事が多い。

 人間もそうだけど、一人でいるよりも二人以上でいる方が対処法などの幅も広がるってもんだ……同じ話としていいのかは微妙だけど。


「タクミ君とレオちゃんや、今一緒に走っているフェンリル達を見て、似たような事を考え始める人はいるかもしれないから、これからは少し気を付けた方がいいかもね」

「確かに……」

「ランジ村に行けば、人目につく事も少なくなリますから、ちょうどいいのかもしれませんね。ラクトスの人達にはもうかなり見られていますけど」


 話を戻して、ユートさんの言う事はつまり俺とレオのように、本来ありえないと言われていた相手を従えているのを見た人が、今回の盗賊のような考えを持たないとは限らないって話だ。

 ラクトスの人達に対してはもう手遅れだとしても、ランジ村に行けば牧歌的な場所だし、人の出入りも少なく村の人達は信用できるから、ちょうどいい機会かもしれない。


「でもまぁ、僕から言っていてなんだけど……そこまで気にしなくてもいいかな? 結局今回は被害があったにしても、あまり大きくならないうちに解決できたし。これからは、そういった集団が出て来るかもって警戒していればいい。似たような事は、レオちゃんとタクミ君が来る前からあったんだから」




読んで下さった方、皆様に感謝を。


別作品も連載投稿しております。

作品ページへはページ下部にリンクがありますのでそちらからお願いします。


面白いな、続きが読みたいな、と思われた方はページ下部から評価の方をお願いします。

また、ブックマークも是非お願い致します。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【書籍版 第7巻 8月29日発売】

■7巻書影■mclzc7335mw83zqpg1o41o7ggi3d_rj1_15y_1no_fpwq.jpg


■7巻口絵■ mclzc7335mw83zqpg1o41o7ggi3d_rj1_15y_1no_fpwq.jpg


■7巻挿絵■ mclzc7335mw83zqpg1o41o7ggi3d_rj1_15y_1no_fpwq.jpg


詳細ページはこちらから↓
GCノベルズ書籍紹介ページ


【コミカライズ好評連載中!】
コミックライド

【コミックス6巻8月28日発売!】
詳細ページはこちらから↓
コミックス6巻情報



作者X(旧Twitter)ページはこちら


連載作品も引き続き更新していきますのでよろしくお願いします。
神とモフモフ(ドラゴン)と異世界転移


完結しました!
勇者パーティを追放された万能勇者、魔王のもとで働く事を決意する~おかしな魔王とおかしな部下と管理職~

申し訳ありません、更新停止中です。
夫婦で異世界召喚されたので魔王の味方をしたら小さな女の子でした~身体強化(極限)と全魔法反射でのんびり魔界を満喫~


― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ