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1304/1998

暇潰しに迎えに来ただけみたいでした



「ごめんごめん、また別の話になっちゃったね。えっと、それでランジ村からタクミ君達を迎えに行こうかなってね。レオちゃんもいるし、タクミ君と話しもしたかったし……ラクトスで待っていたら必ず通るだろうからって」


 暇だからって迎えに来ようとするとは……本当に時間を持て余していたんだろう。

 ラクトスなら人も多いし、物も多いから暇潰しには事欠かないだろうから、良かったのかもしれないけど。

 気ままに行動するユートさんに付いて行くルグレッタさんは、大変だなぁ。

 

「じゃあ、ラクトスに滞在されていたんですか?」

「うん。昨日まではね」

「昨日まで? そういえば、さっきは森の方から来たみたいですけど……姿は見えませんでしたが」


 クレアの質問に、昨日まではラクトスにいたと答えるユートさん。

 それに対して、クレアが再び首を傾げる。

 そういえば、レオの魔法とぶつけあった以降、というか氷の壁が解かれてからは姿が見えていたけど、それまでユートさんどころかルグレッタさんの姿も見えなかった。

 森からというのも、声がそちらの方から聞こえてだんだん近づいて来ていたからだ……声しか聞こえなかったのは、どういうからくりだろうか?


「あれは魔法で姿を消していたんだ。確か……人間じゃなくてどこぞの魔物が使えるらしい魔法みたいだけどね」


 ユートさんのギフト、『魔導制御』はどんな魔法でも使えるらしい。

 だから、本来人間が使えない魔法でも使えるって事だろう。


「どうして、姿を消す必要が? あぁ、フェンリルと戦うつもりだったから、姿を消して有利になろう、とか?」

「いやいや、フェンリル相手にそれが通用するとは思えないからね。それに、声を出しちゃってたし」


 まぁそうか……隠密で近付いて有利さを保って戦うとかなら、声は出さない方がいい。

 それに多分、姿は見えなくても匂いとかでバレそうだし。


「あれは隠密活動というか、不届き者を成敗するためだね。ラクトスにいる時、ちょっとした噂を聞いてそれを確かめに行ったんだけど……見つからないように姿を消してってわけ」

「噂? ユートさんがわざわざ行くような内容の噂って……」


 気になる噂というか、事件性を感じさせるけど……とにかくそれを解決するため、ユートさんは姿を消して森に入り込んでいたってわけか。

 それは一体どんな噂だろうか?


「まぁ、それについては追々ね。解決した事だから、ランジ村に行く途中にでも話すよ。――あ、セバスチャンさんだっけ? 執事になるために付けられたような名前の人。もしラクトスにさっきの魔法の事を説明する使いを出すなら、衛兵隊を森の……」

「え、あ、はぁ……畏まりました。そのように手配させて頂きます」


 詳しい説明はまた後という事で、俺が頼んでいたにじり寄るフェンリル達の解散と、皆の交流をさせる手配を終えて戻ってくる途中のセバスチャンさんに声を掛ける。

 俺が脳内で考えるだけで、口には出さなかった事を平気で言うユートさん……執事と言えばという名前では確かにあるけど、こちらの世界では通用しないだろうに。

 ともあれ、衛兵隊を差し向ける場所の指示をするユートさん。


 急な頼まれ事であっても、相手は大公爵であり王家だから、セバスチャンさんは戸惑いながらも了承した。

 まぁラクトスへの使いを出すのは、魔法に関する事を一緒に話を聞いていたライラさんから伝え聞いてから、だけども。


「ま、そんなわけで、仕事というか暇潰し? それを終えて、ラクトスに戻ろうとしたところでフェンリル達を発見したんだよ。この近くの森にも、それからフェンリルの森にも、奥深くに棲んでいるのはわかっていたけど、あれだけ街の近くにそれも集団でいるのは何事かと思ったってわけ」

「それで、さっきみたいに突然襲い掛かったんだ……」

「襲い掛かったとは失礼な。いや、やった事はそうかもしれないけど……それに、これだけのフェンリルがいるのも驚きだけど……でも、フェンリルだよ? 一体でもラクトスを襲えばほぼ壊滅してもおかしくないわけで……」


 だから、先手必勝で仕掛けてきたと。

 ユートさんが使った魔法が直撃すれば、フェンリル達がどうなるかはわからないけど……少なくとも全て無事なんて事はなかっただろう。

 もし人を襲うとかがあり得るのなら、まずは数を減らすためにと考えれば理にかなっている、のか?


「でもフェンリル達は、俺やレオと仲良くなってくれて……ってあぁ、そういえば以前ランジ村に行った時は、フェンリル達が森から出てきていなかったんだっけ」

「そういえば、そうでしたね。あの後、ランジ村から屋敷に戻った際にフェンとリルルが、フェリーを連れてきたんでした」


 フェンやリルルとは会っていたけど、フェリーを含めた他のフェンリルとはまだ話もしていなかったころだった。

 当然ランジ村にはレオしか連れて行っていないし、ユートさんも会っていない。

 シェリーがいたくらいだけど、それだけでフェンリルの集団と俺達を繋げて様子を見る余裕がないくらいには、危険だと判断したって事だろうな。


「通常であれば、あれだけのフェンリルを見ただけで逃げ出すのですが……」

「僕は通常じゃないって? それはひどいなぁ」

「……フェンリルに向かっていった事もそうですが、これだけ大量にいるとわかって尚、魔法を仕掛ける。さらにはその魔法も異常なほど強力と来れば、通常の範囲では収まらないのは当然でしょう!」

「……確かに?」

「くっ……」


 溜め息交じりのルグレッタさんに、笑いながらのユートさん。

 思わず声を荒げたルグレッタさんだけど、首を傾げながら認めるような、よくわかっていないような返答をするユートさんに対して、無駄だと分かったのか悔しそうに拳を作りながら俯く。

 ……何度も思うけど、本当に苦労しているんだなぁルグレッタさん。

 そんなユートさんに惚れているっぽいのが、一番の原因かもしれないけど……あと、ユートさんもそこまでとぼけた態度を取らなくてもと思わなくもない。


 けどまぁ、不老とかで気の遠くなるくらい長年生きていたら、馬耳東風というか飄々とした感じにならないとやっていられないのかもしれない。

 生きていれば楽しい事だけでなく、辛い事も多くあるのも当然だしな……それっぽい事を、以前も言っていたような気がしないでもない。

 現在のこの世界をゲームっぽく捉えている節があるのも、そのためなんだろう、レオとかシルバーフェンリルが裏ボスとかって言っていたし――。




読んで下さった方、皆様に感謝を。


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