魔法が激突した瞬間の話を聞きました
とにかく発見したフェンリルに対し呪文を詠唱、いざ発動……! となる直前に目の前に巨大な氷の壁が出現、そしてレオが来たと。
レオによると、そこから爆炎の魔法に対して爆風を魔法で発生させ、ユートさんの魔法を誰もいない方に向けただけという事らしい。
まぁ、爆炎に対して爆風でやろうとしてできるのが凄いし、ユートさんも「これだからシルバーフェンリルは……」と言っていたから、レオ以外にはできない事なんだろうと思う。
ちなみに、レオが来た時点で魔法を止められれば良かったんだけど、発動直前まで準備が完了し、魔力も収束していたからそこで止めるのは別の危険があるんだとか。
曰く、無秩序な魔力の暴走みたいな事が起きて、レオにもユートさん自身にも予想できない事が起こったかもしれないとか。
場合によっては、使おうとしていた魔法以上の広範囲に破滅的な効果をもたらすかもしれず、それはユートさん自身すら巻き込んでいた可能性もあるとの事。
つまり、準備完了した強大な魔法を暴走しないよう発動させる必要があり、それをレオがわかっていたので躊躇わず使用。
レオによって逸らした事で、誰もいない森との間に大きな破壊をもたらすだけで、被害を出さないようにしたという事らしいな。
「準備完了した魔法が、使われなければ危険だった……という状況だったのはわかるけど、もしかしてそれって他の魔法でもそうだったりする?」
魔法がそもそもそういうものであるなら、使い方によっては誰にでも危険が及ぶ可能性がある。
それこそ、よく知らない人が試しに魔法を使おうとして途中で止めてみようなんて考えたら……。
「それはないから安心して。人が使える魔法の範囲なら、ただ魔力が霧散して消えるだけだから。今回は、ギフトも使って多くの魔力を収束させてたからだよ。もっとも、数人……なら大丈夫かもしれないけど、大規模に人を集めて魔力を一つにした儀式的な魔法使う途中とかなら危険だけどね」
「大量の魔力が必要って事ね……成る程」
以前、セバスチャンさんに聞いた長ったらしい呪文を何日も唱えて……という実験とかだと危険ってところだろう。
人一人分の魔力なら、ギフトで補われない限り大丈夫なら安心だ。
俺も、いつも光を放つ魔法にばかり頼っているけど、そろそろ他の魔法を使えるようになりたいし……危険があるなら、躊躇してしまうところだった。
まぁある程度は、言葉の組み合わせって教えられたから、ちょっとした魔法くらいなら使えると思うけど、焚き火に火を点ける魔法とか。
「それで、魔法に関してはわかったし、レオのおかげで俺達には何もなかったから良かったけど……そもそもどうしてユートさんはここに?」
「いやー、一度ランジ村に行ってタクミ君達を待っていたんだけどね」
「先にランジ村に行ってたんだ……」
以前の別れ際に行っていたけど、本当に俺がランジ村への移動をするタイミングを狙って来ていたんだなぁ。
他にやる事はないのだろうか? 気ままに国内を旅しているとも言っていたけど……。
発言力などが、エッケンハルトさんの比じゃない程にある人なので、むしろそうやって自由に適当に行動してくれていた方がいいのかもしれないけど。
そういう人が忙しくしなきゃいけない状況って、大体大変な事が起こっている場合が多いだろうし。
……レオの事も、もしかしたら国としては大変な事かもしれないけど。
「タクミ君達も、これからランジ村に行くんだろう? 入れ違いにならなくて良かったよ。あ、そうだ。タクミ君が住む予定の家というか……屋敷? あれも驚いたけど、村も変わったみたいだからね。見ると驚くと思うよ?」
「村が?」
「ランジ村で、何か変わった事が?」
俺の住む家、正確にはレオやクレア、使用人さん達もなんだけど……一度家と言って屋敷に言い換えたのが少し気になった。
けどそれ以上に、ブレイユ村よりも穏やかな時間が流れているようなランジ村が、どう変わったのかの方が気になった。
クレアも同様みたいで、俺と同じくユートさんに不思議そうな顔を向けている。
「まぁ、そこは見てのお楽しみだね。いやー、タクミ君達の驚く顔が見ものだなぁ。あ、安心して。変な方向だとか、悪い方向に変わっているとかじゃないから。強いて言えば、以前僕が行った時に話した事が反映されていたって感じかな」
「以前ユートさんが……?」
なんだろう? ランジ村が変わる……悪い方向じゃないというのなら、心配しなくてもいいんだろう。
けど、驚く程かぁ。
ユートさんと以前話した内容は、さすがに全てを事細かに覚えているわけじゃないから、どんな事だったのか見当が付かない。
それはクレアも同じだったようで、俺と同じく首を傾げていた。
「あぁ、僕がどうしてここにいるかだったね。話が逸れたけど……ランジ村で数日待っていたんだけど、ちょっと暇になっちゃって……」
「ユート様は、本当に落ち着きがない方で……はぁ……」
「だって、やる事もないし。日がな一日空を眺めたり、村で飼っている……僕が連れて行ったのが原因だけど、犬と戯れたりくらいしかする事がなかったんだよ? 村の人達はタクミ君達を迎え入れる準備とか、色々と他にもやる事があって邪魔はできないし……話し相手なんてルグレッタだけなんだから」
「……私が話し相手で、不十分でしたか? そうですか……ではこれからは、ユート様がお暇をされないよう厳しくしましょう」
「おおう、ゾクゾク来るよねルグレッタのそういった冷たい視線。でも、厳しくされたら僕の体が壊れちゃいそうだなぁ……」
同意を求めるように俺を見ないで欲しい……。
ルグレッタさん、ユートさんに言われてきつく当たるようにしているみたいだけど、俺やクレアは見逃さない、一瞬だけ悲しそうに目を伏せたのを。
ほんと、ユートさんはもう少しルグレッタさんを気遣って、一緒にいるべきだと思う……つい最近まで、クレアを待たせ続けた俺が言う事じゃないかもしれないけど。
「んんっ! それで、暇だったのはわかったけど……」
話がまた別方向に行っているし、反応に困るので咳払いをして無理矢理戻した。
このままだと、無限に話が続きそうだったし、趣味に関しての同意を求められても困るからな――。
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