子供達は馴染むのも早そうでした
「ではタクミ様、俺達も荷物の積み込みを手伝いに行ってきます!」
「こ、これからよろしくお願いします……」
「うん。無理はしないでね」
顔合わせでもあった男性と女性……ミリナちゃんと同じくらいの二人は、そう言ってアルフレットさんのいる方に。
男性の方はカイ君、十六歳になったばかりだったかな? 控えめな性格のように見えるけど、もう一人の女性を引っ張っていく気概のようなものはあるようだ。
女性の方は、メンティアさん……ちゃんかな? 十五歳だったと思うけど、ミリナちゃんよりも幼く見えるから、なんとなくさん付けよりもちゃん付けの方が合っている気がする……後で本人に聞いてみよう。
とりあえずメンティアちゃんは、俯き気味の内気な性格のようだ。
カイ君に手を引っ張られていった時、ちょっと照れているような雰囲気で頬がほのかに赤くなっていたから、二人はいい仲なのかな?
と思ったけど、意識しているのはメンティアちゃんだけの方で、カイ君は意識していないっぽい。
こういうことに関して、男の子が鈍くて女の子がやきもきしてしまうのかもな……自分の事を思い浮かべて、頭をポリポリとかいた。
「ワフ、ワフ」
「きゃははは! くすぐったいよレオ様!」
「いいなー、次は私もー!」
「おー、毛がフカフカだー。ベッドより寝心地良さそうだぜ!」
きゃいきゃいと声がする方を見てみると、レオと子供達が戯れていた。
女の子の顔をレオが舐めている……あいさつ代わりなんだろうけど、ベトベトにしたら駄目だぞレオ?
その他、やんちゃそうな男の子が、意外にもレオの毛を優しく撫でながら頬をスリスリと……確かに、レオの体や毛を枕や毛布代わりにすると、寝心地がいいんだよなぁ。
「レオ様をベッド代わりにしちゃ駄目なのですよ!」
「ティルラお姉ちゃん、よくレオ様に寄りかかって昼寝しているよね?」
「リーザちゃん、それは言わない約束なのです! 約束していないですけど!」
いつの間にかラーレから降りていたティルラちゃんが、男の子に注意しているが……リーザに突っ込まれていた。
ティルラちゃんからは、子供達のお姉ちゃん役がやりたいような雰囲気が見られるのが微笑ましい。
「ふふ、子供達もティルラ達も、レオ様によく懐いていますね」
「そうだね。ティルラとリーザは元からだけど、やっぱり子供に人気があるなぁ……って、あれ?」
朗らかにレオ達の様子を見る、クレアと俺。
様子を見ていて気付いたけど、一人足りないような……?
「へぇー、それでそれで?」
「そうして、旅だった子供はまた新たにフェンリルと出会ったのだが……これがまた、曲者でな……」
「キャゥー?」
「グルゥ!」
「おぉ、ワクワクするのよう!」
「バウ!」
見回してみると、一人だけ女の子がヴォルターさんの所に行っていて、物語を話してもらっていた。
前回ヴォルターさんと孤児院に行った時に、話を聞いていた子だな。
レオより夢中になる子がいるとは……結構、子供達には好評なのかもしれない。
何故か一緒に、シェリーやフェリー、さらにフェアリネッテやヴォルグラウもいて尻尾をフリフリしていたけど……ヴォルグラウは、元からヴォルターさんに懐いていたか。
「ヴォルターさんの話は、結構人気になりそうだね」
「そうですね。ランジ村の子供達にも、受け入れてもらえればいいのですけど」
「大丈夫だと思うよ」
ヴォルターさんが物語を作って話すのは、子供に対してだけの予定じゃなかったけど……この分だと子供達に人気が出そうだ。
クレアが少しだけ不安そうにしているけど、俺はあまり心配していない。
ランジ村の子供達は無邪気な子が多かったし、それは孤児院の子達ともあまり変わらない。
なんというか、こちらの世界の子供達は擦れていない子が多いから、あぁいった物語を聞くのは楽しんでくれるんじゃないかと思う。
そうだよな、孤児院の子供達……孤児院に入るきっかけとかはそれぞれだろうけど、共通しているのは親などの身寄りがない事。
辛い経験をしている子もいるだろうに、素直な子が多いのはアンナさん達の頑張りなんだろうな。
ランジ村の子達や犬と一緒に、村の広場でヴォルターさんが語っている姿を思い浮かべた。
「タクミ様、そろそろ参りましょうか」
「荷物の積み替えも終わりました。街の者達が待っているようです」
「わかりました」
「えぇ」
しばらくクレアと話していると、準備を終えてセバスチャンさんとアルフレットさんに促される。
いつの間にか、レオが俺達の乗ってきた馬車があった場所に伏せをしており、尻尾を揺らして待っている。
二人に頷いて、俺とクレアはそちらへ……って、街の者達が待っているってアルフレットさんが言っていたけど、もしかして住民に報せていたとか?
パレードの様相になりそうだから、見物人は多い方が盛り上がるのかもしれないけど……注目され過ぎるのもなぁ。
なんて考えているうちに、レオの傍に到着。
「……よろしく頼むな、レオ」
「レオ様、よろしくお願いしますね?」
「ワフワフ!」
今更注目されないように、なんて考えても仕方ないので、考えを振り払ってレオの体を撫でながら任せる事にした。
クレアも同じくレオを撫でて微笑みかける。
レオは、俺達を乗せる事やこれからの事が楽しみなのか、嬉しそうに鳴いた。
「よっと……さ、クレア」
「ありがとうございます。んっ……ちょっと照れますね、ふふ」
レオの背中に乗り、馬車の時と同じようにクレアの手を引く。
横向きで乗ったクレアは、俺の顔を見上げて照れ笑い……ドレス姿のクレアから近くで見上げられて、俺の方が照れてしまう。
「ははは、俺もだけどね。多分、街に入ったらもっと恥ずかしいと思う。クレアは、皆に注目されるのは慣れているだろうけど……」
「慣れているとまでは……でも、そちらの方が意識が切り替えられそうです」
「クレアはそうなのかもね」
公爵家のご令嬢だから、スイッチの切り替えみたいなもので公の場に出ると意識が変わるのかもしれないな。
だとすると、恥ずかしいのは俺だけか……。
「ワッフ!」
「ひゃっ!」
「うぉっと!」
「ワウ?」
俺達が乗った事を重みなどで確認したのか、レオが勢いよく真っ直ぐに立ち上がる。
思わず声を出す俺とクレアに、心配するようなレオの鳴き声がした――。
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