改めてお互いに告白しました
「でもですね、その……レオ様と一緒にいるタクミさんを見た時、なんと言うのが正しいのかはわかりませんが、不思議と『あぁ、この人が……』と妙に納得したんです」
「納得?」
「はい。私にもよくわかりませんけど、直感と言いますか……」
つまり、一目惚れみたいなものかな?
よく雷に打たれたような衝撃とか、恋に『落ちる』という表現があったりするけど……クレアの言う納得は、それに近いものなのかもしれない。
「その後のタクミさんがレオ様に向ける、優し気な眼差しや、私だけでなく接する多くの人に対しての優しさ。レオ様との信頼関係には……少し嫉妬した事もありますけど……」
「あ、ははは……」
レオとは長い付き合いだし、相棒と思っているからなぁ……右も左もわからないこの世界で、一番頼りになると思っていたのは間違いない。
でも、嫉妬していると言われて喜んでしまうのは、少しクレアに失礼かな?
いい感情じゃないとよく言われるものだし、でもそれだけクレアの想いが強い事の証明でもあるからなぁ……。
「レオ様の事を知っても、言い方は悪いかもしれませんが、デウルゴのように思い上がった振る舞いもなさりませんでした。ライラやゲルダ、屋敷の使用人にも偉ぶる事なく優しく接しています」
「まぁ……レオに対してはどうなっても利用するとか、そういう考えは浮かばないかなぁ。お願いする事はあっても、レオが嫌がる事はしたくない……お風呂は除いてね?」
「ふふふ。そうしてレオ様や私、他の者達と接するタクミさんを見て、納得を深めると共に私自身の感情が、間違いではなかったんだと思ったんです」
「そうだったんだ……」
一目惚れからの積み重ね、というところかな? 出会った頃から意識していて、それがどんどん確信に変わっていったんだろう。
でもそれなら……。
「実は……俺も、クレアを初めて見た時から意識していたんだよ?」
「え、そ、そうなのですか?」
「まぁね。あの時は誤魔化したし、表面的な事だけしかわからなかったけど……綺麗な人だなぁって。俺の様子を察したレオには、ジト目で見られたけどね」
照れ臭くなって、最後は冗談交じりにレオの事を付け加えて苦笑する。
一目惚れという意味では、よっぽど俺の方がクレアよりわかりやすい反応じゃなかったかなと思う。
「レオ様のあの時の表情……そういえば、今考えるとあまり見ないものだったような? 私自身、タクミさんの事ばかり見て、はっきりとは覚えてはいませんけど……」
まぁ、レオがジト目をする事自体少ないからなぁ。
俺が変な事をやらかした時以外……ほとんどは、溜め息を吐くくらいだけど。
「クレアもそうだったように、それからお世話になって……色々なクレアの表情を見て行くうちに、あぁやっぱり間違いないんだって、思うようになったんだ」
はっきりとした感情は、恋愛事が苦手だったのもあって俺にもよくわかっていなかった。
それこそ、エッケンハルトさんに問われた時に、はっきり言えなかったくらいに。
クレアは間違いなく、俺が今まで会った事のあるどの人よりも綺麗な人で魅力的だ……それは、外見だけでなく内面も。
でもだからこそ、それが本当に恋や愛と言える感情なのか断定できなかったんだ。
近くにいて、自分に好意を向けてくれる手近な人物……みたいに考えてしまっているんじゃないか? という自分に対する疑念が晴れなかったわけだな。
自分に対して、自信がないからそう思っていた節もあって、だからこそ……。
「クレアが本当に魅力的だから、他にもっと相応しい人がいるんじゃないか。俺みたいな何もない奴が、クレアと一緒にいていいのか? なんて考えた事もあったけどね」
「そんな! タクミさんは何もない人ではありません! それに、私に他に相応しい人なんて……」
「ははは、まぁ今はそうまでは考えていないよ、安心して。じゃないと、昨日みたいな大胆な行動はできないから」
俺の自信のなさを、必死な表情にまでなって否定してくれるクレア。
ようやく自分に対して自信を持つ事ができるようになったのは、そんなクレアのおかげだ。
他にも、『雑草栽培』という能力やレオのおかげでもあるか。
細かく言うと、ライラさん達のような使用人さんや、リーザ、ランジ村の人達等々、色々あるけど……一番はクレアだと思っている。
自信がなかった大きな原因は、倒れるまで働いていた頃の経験のせいである事も、冷静に受け止めているくらいだ。
「クレアにはもう、俺以外相応しい人はいない……とまではさすがに、思い上がりだと思うけど。でも、相応しくなるようになるって、決めたから」
初めて意識し始めた事の告白から、どうしてこんな話になったのか。
でも決意をちゃんとクレアに示し、言っておきたかったから……ちょうど良かったかもしれない。
「そんな……私は今、こうしているだけで満たされています。幸せだと感じています。だからもう、タクミさん以外に相応しい人なんて……いえ……違いますね」
「クレア?」
俺の言葉を聞いたクレアは、腕の力を強めて俺の胸に額を付ける。
そして俺への言葉を途中で止め、何やら考え直すように首を軽く振った。
「……タクミさんは、タクミさんが私に相応しくなると言って下さいました。それなら私は、私がタクミさんに相応しくなるようにします!」
「え? でも、クレアはもう……」
十分に、どころか俺にはもったいないくらいだと言おうとして、クレアに遮られた。
「いえ。私はまだ私自身がタクミさんに相応しいとは……思えないわけではありませんけど、胸を張って公言できる程ではありません。もっと、相応しくなるよう努力しなければと!」
「……そ、そうかな?」
決意したらしいクレアの勢いに、少しだけ押される。
こういう時、エッケンハルトさんやティルラちゃんと似ていると感じるなぁ。
思い立ったが吉日、じゃないな……思い込んだら一途、かな?
「……とは言いましても、どうしたらいいのかわかりませんが……」
「ぷっあははははは!」
「あぁ、タクミさん酷いです! 笑うなんて!」
さっきまでの勢いはどうしたのか、急に萎れて自信がなさそうに呟くクレアがツボに入り、思わず吹き出して笑ってしまった。
むくれながら文句を言うクレアは、いつもよりもさらに素をさらけ出してくれているようで嬉しく、そしてティルラちゃんとも似ていて可愛らしい――。
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