第1226話 セバスチャンさんの説明を聞きました
「ゲルダさんに関しての相談なのですが……」
「妖精についてでもあります」
セバスチャンさんとアルフレットさんの用件は、ゲルダさんと妖精についてのようだ。
そういえば、あれから妖精はずっと姿を見せたままで、ゲルダさんと一緒にいるようだけど、これまでと違って何か行動を起こそうとする感じじゃないみたいだ。
自分のやっていた事が、ゲルダさんの邪魔になっていたと反省したのかもしれないな。
「そうね……妖精。話には聞いた事があるけど……」
「私も同じくです。文献などでは時折出て来ておりましたが……その存在が確認されたのは、私の知る限りではありません」
腕を組んで考え込むクレアとセバスチャンさん。
二人の言葉に、アルフレットさんも頷いているようだ。
「えっと、そもそも妖精ってなんなんですか?」
漠然とした聞き方になってしまったけど、妖精という種族について俺は何も知らない。
地球だと、空想上ではあるけど色々な姿で物語に登場していたり、西洋などの伝説でも出てきたりもしたっけかな。
大体は、イタズラ好きな事が多いイメージだけど……小さく小柄で、背中から羽根が生えていて飛んでいる、とかそんな感じだ。
小さくて飛んでいる、というのはゲルダさんと契約しているらしい妖精も同じだけど。
でもあの姿はなんというか、パッと思い浮かぶ妖精とはかけ離れている。
体のほとんどがモコモコだし……手足や頭は、人間のそれと同じような形だが。
「ふむ、そうですな。ここはひとつ、妖精について説明いたしましょう」
「……よろしくお願いします」
キラリ、と一瞬セバスチャンさんの目が光ったような気がする。
説明できる機会として、チャンスを逃さないためだろう。
「説明と言いましても、私も文献で得られた知識しかないのですが。そうですな……妖精はまず、人里離れた場所に住んでいるとされています」
「確か、人間に見つかったらいけない……というような掟があると言っていました」
「そのようですな。何故人間に、というのはわかりませんが。妖精には妖精の、決まりのようなものがあるのでしょう。話を聞いてみると、子供が好きで見に来るというのは初めて知った事なので、少々驚きました」
人里離れて人の目に付かないようにしているのだから、そりゃ文献に少し出て来るくらいでしか、目撃情報みたいなものもないんだろう。
ただ、人の子供に興味を惹かれて見に来る、というのは今回新しく知れた事ではあるけど、そこから数は少なくとも文献に残るような、何かがあったのかもしれない。
というより、実際は子供達にもっと見られている可能性もあるな……ゲルダさんと一緒にいた妖精は、結構迂闊なようだし、俺達人間には見えなくても、コッカー達にはそこにいる事がわかっていたようだし。
「ここからは文献での記述を、私なりに解釈した内容になりますが……妖精は非力で、少々の魔法しか使えない種族のようです。ただし、そのためなのかなんなのか、人の目を誤魔化す事ができるのだとか」
「人の目を誤魔化す……だから、姿を消す事ができたんですね」
「おそらくは」
弱い種族だから、身を守るために隠れる能力が身についたとかだろうか? まぁ、能力が先なのかはわからないけど。
確かに、姿が見えなければ隠れるのも容易だし、逃げるのも簡単になる。
レオ達やコッカー達、屋敷にいる魔物達にはバレていたようだけど、それでも姿がはっきり目で見えていたわけじゃないらしいと、あの後聞いた。
匂いとか気配とか、それでなんとなくそこにいるだろう……という程度だとか。
コッカーがくちばしを連続で繰り出していたのは、全て妖精のモコモコにクリーンヒットしていたらしい。
それは気配などからに加えて、ちょうどあの時ゲルダさんが肉のキャッチボールをしていた時、妖精が逸らして失敗させた事から、そこにいると判明したからだとか。
あとは、一度くちばしを当てたらはっきりとした場所がわかって……というわけだな。
ちなみにリーザは、ゲルダさんからなんとなく別の何かの匂いがするような、そんな感じは受けていたみたいだけど、妖精がいるとはわかっていなかったようだ。
「子供達に興味が、と言う話を裏付けるように、度々子供の間では目撃される事もあった……とされていますが、真偽は定かではありません」
「まぁ、いるかわからない……姿を消していて見えない妖精を、子供が見たと言っても信じる人は少なそうですね」
「はい。それもあってか、存在自体あまり知られておらず、目撃情報なども広まりません」
妖精が見える……なんて、日本では声を大きくして言える事じゃない。
子供だったら大体大人に流されるだけで済むけど、大人になってからも真剣に言っていると、正気を疑われてしまうくらいだ。
こちらでも、ある程度実在する事がわかっていても、知っている人が少ないために似たような扱いになっていたのかもしれない。
「文献には、気に入った人間……これも子供が多いそうですが、従魔契約とは違う契約をしてその傍にいるようになると」
「……ゲルダさんと同じですね」
「そうですな。そして、その契約がどういったものなのか、そして妖精そのものの詳細については……これ以上わかりません。ただ、そういった存在がいる、というのが判明している程度なのです」
非力な妖精がいる、非力だから姿を消す能力を持っている、そして人と契約を結んで一緒にいる。
セバスチャンさんでも、わかるのはこれくらいらしい。
人との繋がりができるのだから……もしかすると、人里離れた場所にいるというのも後付けかもしれないな。
人の目に見えず、どこにいるかもわからないから、きっと人の生活圏とは離れた場所で暮らしているんだろう……とか。
「せっかくの機会なのですが、説明できるのはこのくらいですな」
「本当に、情報が少ないんですね……」
目撃される事が少なく、それが記録に残る機会も少ないため、よくわからない謎の存在になってしまっているのか。
ある意味、シルバーフェンリルよりも幻の存在、希少な種族と言えるかもしれないな――。
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