それぞれに仲のいい光景が広がっていました
「あら、タクミさん達も仲が良くて微笑ましいですね。なんだか私だけ寂しいです……」
「キャゥ、キャゥ!」
「そうね、私にはシェリーがいるものね?」
「キャウー!」
俺やレオ、リーザの事も微笑んで見ているクレアさんは、ヴォルグラウに乗っていたシェリーが主張するように鳴いたので、そちらを撫でに行った。
あっちもあっちで仲がよくて微笑ましいな。
「ラーレ聞いて下さい! 私もタクミさんと同じように、ギフトが使えるみたいなんですよ!」
「キィ!? キィ、キィ~!」
楽しそうに報告するティルラちゃん、ラーレが驚きつつも翼をバッサバッサと動かして喜んでいた。
「バゥ……?」
「ほら、ヴォルグラウもこっちに」
クレアの足下を駆け回るシェリーや俺達、ティルラちゃん達の方を見て、寂しそうになくヴォルグラウ。
デウルゴと違って、俺達はヴォルグラウをないがしろにするつもりはない。
名前を呼んで手招きし、フェリー達の所に混ざるように促した。
「バウ!」
「グルゥ!」
「ガウ!?」
「ガァウ!」
元気よく吠えたヴォルグラウは、フェリー達の方へと突撃。
それぞれ乗っていた人を降ろしたフェンリル達。
その中でフェリーの所へ体ごとぶつかりに行ったヴォルグラウは、意外とアクティブなのかもしれない。
しかし、スッと体を避けたフェリー……勢いのままヴォルグラウがぶつかったのは、フェンだった。
フェンリル達の方が多少体が大きく、力の差があるからだろう、ヴォルグラウを受け止めたフェンは危なげない感じだったけど、それでも驚いてはいた。
フェリー、フェンに押し付けたな……?
「あー、ヴォルグラウとフェリー達が楽しそうだよ!」
「そうだな。フェンリルとウルフだけど、フェリー達も事情をわかっているようだし、仲間に入れてもらえたんだろうな」
その後すぐに仲良さそうに体や顔を寄せ合い、じゃれ合うフェンリル達とヴォルグラウをリーザが見て笑う。
種族は違っても、俺やレオとリーザ、クレアとシェリー、ラーレとティルラちゃん、そしてフェンリルとウルフ……そしてそれを見守る従業員さん達や使用人さん。
全員ではないけど、皆が楽しそうに仲良く笑っている光景が、凄く尊いもののように見えて目を細めた。
そんなフェンリル達との合流がありつつ、再び屋敷へ向かって出発。
もちろん、散歩をしていたフェンリル達も一緒だ。
屋敷に到着する少し前、クレアとの話。
「ヴォルグラウの呼び名は、あのままで良さそうですね」
「そうだね、ヴォルグラウもデウルゴはともかく、呼び名は気に入っているみたいだし。あまりコロコロ変えるのもね」
話題はヴォルグラウの呼び名。
デウルゴが名付けたから、契約を解除した後は別の呼び名を考えた方がいいのかも……と思っていたけど、ヴォルグラウ自身は気に入っている様子。
呼んでも特に嫌がる素振りは一切見せないどころか、尻尾を振って喜んでいるみたいでもあるから、変える必要はなさそうだ。
「それに、ヴォルターさんとも名前が近くて、仲良さそうだったし。まぁ、呼び名を変えたからって関係が変わるわけじゃないけどね」
呼び名を変えたら、ヴォルコンビ結成もできないからな……。
なんてどうでもいい事を考えつつ、クレアと話す。
「ヴォルグラウと仲良くなるのはいいのですが、もう少しフェンリル達とも、距離を縮めて欲しいものです……」
御者台に座るセバスチャンさんは、溜め息交じりに言っているけど……なんとなく雰囲気は笑っているように見えた。
ヴォルターさんと仲良くして、ヴォルグラウが楽しく過ごしている姿でも想像したのかもしれない。
……デウルゴと一緒の姿を想像するよりは、よっぽど楽しそうな想像だ。
「ふふふ、別の道に進むヴォルターを見て、そして契約解除の方法を探す手助けをして、少しずつ認めて来ているのかもしれませんね」
「あはは、そうかもしれませんね」
そんなセバスチャンさんを見て、クレアが微笑みながら小さく俺に呟く。
ヴォルターさんにはいつもつらく当たる事が多かったセバスチャンさんだけど、少しずつ関係改善……とまで行かなくとも、執事ではない方向へ進もうとしているのを、認めようとしているのかもしれないな。
「お二方、聞こえておりますよ?」
「おっと」
「うふふ……」
セバスチャンさんの照れくさそうな、それでいて咎めるような声……聞こえちゃってたか。
走る馬車の中で、クレアと顔を見合わせて肩を竦ませ、くすくすと笑い合っていた――。
屋敷に戻って従業員さん達と話したり、諸々を済ませた夕食後、ティルラちゃんに庭園に来てもらう。
「すみませんタクミさん、お待たせしました!」
「ううん、大丈夫だよ。ゆっくり庭園を見ながら、美味しいお茶を楽しんでいたから」
「ワフ!」
「ありがとうございます」
セバスチャンさんにティルラちゃんと庭園でギフトに関して話す旨を伝え、呼んでもらったんだけど、ラーレ達と一緒にいたからちょっと遅くなったみたいだ。
駆けてきたティルラちゃんは、息こそ切らしていないけど頑張って急いで来たのがよくわかる。
裏庭から庭園って、結構距離があるからな……何せ、大きな屋敷を挟んで反対側だし。
ライラさんに淹れてもらったお茶を、優雅っぽく見えるように飲みながら庭園の様子を眺め、レオとのんびり過ごさせてもらっていたから、少しくらい遅れても問題ない。
むしろ、のんびりとした生活ってこういうものなのかもなぁ。
……なんて、伏せをしているレオを撫でながら感慨深く思っていたくらいだ。
「タクミさん、もしかしてギフトのお話ですか?」
ギフトを持っていると判明したばかりなので、なんとなく予想できるよな。
俺もギフトを持っているわけだし、クレアも俺の話を……とティルラちゃんに言っていたから。
「まぁ、今日調べてすぐだから、わかるよね。うん、そうなんだけど……とりあえず座って話そう」
「ティルラお嬢様、どうぞ」
「ありがとうございます!」
「ワフ!」
ティルラちゃんに頷いて、まずは座るように勧める……立ったままだと落ち着かないからな。
ライラさんが空いている椅子をスッと引き、ティルラちゃんが座ったのを確認して、新しいお茶を出す。
レオにも牛乳を用意してくれて、ライラさんにお礼を言うように鳴いた――。
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