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異世界転移したら飼っていた犬が最強になりました~最強と言われるシルバーフェンリルと俺がギフトで異世界暮らしを始めたら~【Web版】  作者: 龍央


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契約解除を試みました



「存外、あっけなかったな。ここまで簡単に済むとは思っていなかったよ。まぁ、タクならば必ず勝つのは、先程話していてわかっていた事だが」

「そうで……だよね。ウルフの群れに対しても、全然活躍していなかったようだし……無防備なヴォルグラウに対する魔法も、怪我の見た目は酷かったけど深いとも言えなかったし」


 呆れ混じりでデウルゴを見ているセバスチャンさん。

 散々自慢するように言っていた事が、石を投げてウルフの注意を引いた……とかだからなぁ。

 まさかここまで、実力が伴っていないとは思わなかったけど。

 ヴォルグラウの怪我に関しては、場所が場所だったのでもっと深くまで傷付けられていたら、命に関わっていたのは間違いない。


 あばらのある位置だったからな……深ければ心臓に達していただろうし。

 でも、無防備にまでさせても骨を砕いたり貫いたりはできておらず、刺したような怪我をさせただけだ。

 皮膚や毛は焼けていたので、見た目としては痛々しかったし、ヴォルグラウもかなりの痛みを感じていただろうけどな。

 まぁつまりは、本当に単独の実力でウルフを倒せるような力はなく、従魔契約のおかげでヴォルグラウとの訓練と称した何かでも、勝てていたってわけだ。


 これくらいの実力なら、ヴォルグラウが傷付けないようにかなりの加減を余儀なくされていただろうな。

 だからこそ、弱くて役立たずとデウルゴには見えたのかもしれないが。


「ぐっ……くそっ! ひ、卑怯だぞ!」


 少しずつ目が見えるようになってきたんだろう、デウルゴが薄目を開けて立ち上がりながら、俺を見て叫ぶ。


「卑怯って言われても……開始前から魔法の準備をしていたのは、そっちなんだけどなぁ」 

「まぁ、こういった手合いは、自分が負ければ相手が卑怯な事をした。逆にどんな卑怯な事をしても、自分は何も悪くない……と考えるものでしょう。――とにかく、貴方は負けたのです。おとなしく契約を解除してもらいますよ?」

「く……くそがぁ!」

「おい!」

「はっ!」


 頬をポリポリとかきながら呟く俺に、セバスチャンさんが苦笑しながら答える。

 デウルゴにも声を掛けていたけど……いつもの口調に戻っているのはいいのかな? 面倒になったのかもしれないけど。

 ようやく目をはっきりと開けられるようになったデウルゴが、叫びながら視線をさまよわせて、飛ばされた自分の木剣を探す。

 その様子を察したのか、審判をしてくれていた衛兵さんが周囲にいる他の衛兵さんに声を掛け、デウルゴを囲んで取り押さえる。


「こ、この!」

「おとなしくしろ! 往生際が悪いぞ!」

「これだけで済んでいる事を、ありがたく思うべきなんだぞお前は!」


 などなど、抵抗しようとするデウルゴに言いながら、再び手足を縛って地面に転がされていた。

 それでも動こうとするデウルゴは、なんだか芋虫のように見えた……。


「さて、ではヴォルグラウを呼んできましょう」

「はい、お願いします」


 ヴォルグラウはシェリーやクレアと一緒に、室内訓練場の外にいる。

 セバスチャンさんにお願いして、もがくデウルゴが逃げないように見張りながら、ヴォルグラウが来るのを待った。

 ……俺が見張らなくても、周囲には数人の衛兵さんがいるから大丈夫なんだけどな。


「バウゥ……」

「くそ、てめぇのせいで……」

「はぁ……それではヴォルグラウ。どこでもいいのでデウルゴに触れて下さい」

「バウ」


 セバスチャンさんが連れてきたヴォルグラウは、相変わらずシェリーを背中に乗せている。

 デウルゴに対して、項垂れながらもおずおずと鳴いて声をかけているようだけど、デウルゴ本人からは睨まれてしまった。

 溜め息を吐いたセバスチャンさんに促され、ヴォルグラウが右前足を腰のあたりにそっと乗せる。

 顔とかじゃないのは、ヴォルグラウからのせめてもの気遣いだろう……シェリーやフェリー達だったら、容赦なく顔に乗せていただろうなぁ。


「では……デウルゴ、ヴォルグラウ……双方の従魔契約解除を。ヴォルグラウ、デウルゴを拒絶しますか?」

「バウ!」


 セバスチャンさんに問いかけられ、頷いて吠えるヴォルグラウ。

 契約解除ってこうやるのか……。

 衛兵さん達、入り口からクレアやティルラちゃんが見守る中、ヴォルグラウとデウルゴの前に立ったセバスチャンさんが、厳かに声をかける。

 なんだか、結婚式の牧師さんに誓いの言葉を掛けられる時のような雰囲気だ……言っている内容は真逆だけど。


「ではデウルゴ、貴方はヴォルグラウを拒絶しますか?」

「……」

「……拒絶しますか?」

「ちっ!」


 次にデウルゴ……セバスチャンさんから問いかけられても、無言でそっぽを向き何も答えない。

 もう一度聞かれても、舌打ちをするだけだ。


「はぁ……貴方は、模擬戦で負けました。約束したはずですよ? 負けた場合はおとなしくヴォルグラウとの契約を、解除すると」

「はっ! んな事知らねぇな! 卑怯な手を使っておいて、無効だ無効! 解除して欲しけりゃ、金貨百枚とフェンリルの子供を俺によこせ!」

「こいつは……」

「バウゥ……」


 この期に及んで往生際の悪い……セバスチャンさんが盛大に溜め息を吐く気持ちがよくわかる。

 今度は契約解除をするのを条件に、お金とシェリーの要求をし始めた。

 入り口の方から、不穏な気配というか……クレアとティルラちゃんが、怒っている雰囲気を感じる気がする。

 ヴォルグラウの背中に乗っているシェリーも同様だ。


 そろそろ、おとなしくしておいた方が今後のためだと思うんだけどなぁ。

 ここで抵抗しようがすまいが、今後のデウルゴがどうなるのか、俺には知ったこっちゃないけど……真面目になったニックとの違いをはっきり感じる。


「ヴォルグラウを実力で手に入れた俺には、もっと強い……役に立つフェンリルが必要なんだ!さっさと、その背中のフェンリルと金を寄越しやがれ! ヴォルグラウ、俺を助けてそいつらを食い殺しちまえ!」

「バ、バウ!? バウゥ……」


 喚き散らした挙句、ヴォルグラウに対して俺達に襲い掛かるよう命令するデウルゴ。

 驚いたヴォルグラウは、しかしデウルゴに足を乗せたまま動かない。

 シェリーは、むしろまた飛び掛かろうとするくらいに怒って、ヴォルグラウの背中で立ち上がっているけど。

 俺もそろそろ、頬がピクピクと引き攣るのを抑えられそうにない――。




読んで下さった方、皆様に感謝を。


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