薬草園従業員のリストをレオと見ました
客室に割り振られた従業員さん達は全員、顔見せで俺やクレアさんという雇用主、そして公爵家に関わる事になって極度に緊張していたようだし、レオやフェンリル達、さらに屋敷に招かれている。
この状況で、素面のまま平然として疲れた様子を見せない人がいたら、それは大物だと思う。
寝ているのも、その疲れが出た人達だろう。
疲れが上回っているのもあると思うけど、初対面の人が同室でも気兼ねなく寝られるのなら、それはそれで打ち解けているとも言えるかな。
「では、私はこれで。タクミ様もゆっくりお休み下さい」
「ありがとうございます。ライラさん達も無理はせず、休んで下さいね」
「はい」
礼をして、ゲルダさんと一緒に退室するライラさんを見送る。
「リーザはもう寝ているのか。皆の前に出た時は緊張していたからなぁ」
「ワフ」
「くー……んすー……にゃふ」
ライラさんと話していた声で起きる事なく、ベッドの方で気持ち良さそうに寝ているリーザ。
自分の尻尾を抱き締めているのは、変わらずだけど。
「お、さすがライラさんだ」
机の方に目を向けてみると数枚の紙が置かれており、見てみるとそこには従業員さんの名前や年齢、出身地などが書かれていた。
簡単にだけど、今日の顔見せの際に受けた印象なんかも書かれているのが、ライラさんらしい。
「ワフゥ?」
「これはな、今日会った人達の事を書かれているんだ。まぁ、俺が全員の顔と名前を覚えていないから、頼んでおいたんだけど……凄いな、クレアの方の従業員さんも書かれている」
こちらを見て首を傾げているレオに説明しながら、パラパラと数枚の紙をめくって流し見してみると、俺が雇う従業員だけではなく、クレアが雇う人の事まで書かれている。
ライラさん、頼りになるけど……ちゃんと休めているのか、少し心配になる働きぶりだなぁ。
「ワフ」
「お、レオも見てみるか?」
「ワウ」
伏せをしていたレオがのっそりと立ち上がり、俺の持っている紙束を後ろから覗き込む。
ミリナちゃんと勉強していた時もそうだけど、レオはこういう時一緒に見るよなぁ。
これからランジ村で、一緒に過ごす従業員さんだから、レオも覚えておきたいのかもしれないけど。
「……というかレオ、文字は読めるのか?」
「ワフ? ワフ!」
振り向いて聞いてみると、首を傾げた後自信満々に頷いた。
そうか……文字読めたのか……頑張らないと、俺が覚えていないのに、レオが覚えているなんて事になりかねないから、気を付けよう。
「んー……さすがに一度で全員分は難しいかなぁ?」
しばらく覗き込むレオと一緒に、従業員リストを眺めてみたけど、今日だけで全て覚えるのはちょっと辛い。
一応、名前はなんとなく覚えたけど、年齢や出身地までとなるとなぁ……家族構成なんかも書いてあったけど、そちらは追々だ。
あと名前を覚えたからって、性別はともかく顔と一致するかどうかは別なので、少しずつ覚えて行こうと思う。
「とりあえず、どこで働く人なのかは一通り覚えたから大丈夫だろう」
「ワフゥ?」
「……いや、本当だぞ?」
独り言を呟く俺に、レオから本当に? と言うような鳴き声が聞こえる。
レオにとって俺はどれだけ頼りないのか、小一時間ほど問いただしたいところだけど、シルバーフェンリルになったレオにはあらゆる事で敵わない気もするからやめておこう。
「えーっと……」
薬草園、経営者というか運営責任者として、俺とクレアの二人。
それぞれの使用人さんは、自身の世話と運営の補助などを担当するとして……。
まず一番重要な畑で働く人員。
これは、働く日数を少なめにと考えているので、多めに二十人。
ペータさんを全体の管理役として、その下にフォイゲさんとウラさんの二人が班長みたいな役割になる。
薬草畑係、係長ペータさん、主任フォイゲさんとウラさんってところだ。
フォイゲさんは畑仕事に向かなさそうだけど、人の管理が得意そうだ。
ウラさんは肝っ玉母ちゃん、という言葉がよく似合いそうな、ちょっと豪快系の女性で皆から慕われそうな気配があった。
二人には労働時間や日数、勤務している人達を見てもらう。
ペータさんの年齢を考えると、ずっと管理をしてもらうわけにはいかないので、二人のどちらかがもしくは両方をいずれ全体の管理を任せられればと思う。
全体の管理には、もちろん畑の状態を見る事なども含まれるので、ペータさんから教えてもらって覚えてもらえれば。
次に調合係、係長はミリナちゃんで、こちらは少なめに五人。
顔見せの時ロエもどきで治療した、ガラグリオさんとリアネアさんがいたら七人だったけど、そちらは問題なく体を動かせて働けるので、畑仕事の方になっている。
人数が少ないので、フォイゲさん達のように主任とかの役割は設けない……急に四人の部下を持つ事になって大丈夫かな? と思ったけど、ミリナちゃんはやる気十分。
まぁ、使用人さんや俺も見ているし、問題は少ないだろう。
そもそも、調合と言ってもまだどういった薬を作るかなどは決まっていないし……だから少人数なんだけど。
薬に関しては、薬草畑の成果次第という事で……次に経営面、というか事務方。
キースさんを筆頭に、アノールさんやコリントさんを配置し、こちらは七人体制。
といっても、キースさんのように使用人さんからも加わって七人なので、今回雇った人の数は一番少ない。
薬草に関しては、公爵家とのやり取りが多いので使用人さんが多い方が、やりやすいだろう。
畑仕事という、肉体労働もあるので総じて男性の割合が少し多目だ……応募も男性が多かったからな。
俺の雇った人員はこんなもので、残りはクレアの雇った人員。
まず、外部商人との交渉係として八人、これにはクレアも含まれるのと、エメラダさんもいるらしい。
そして、輸送係は三十人。
こちらは作った薬草を他の村や街に卸す役割なので、人数が多いのと……。
「リルル、いつの間にやる事にしたんだ……」
輸送係の係長として、何故かリルルの名前があった。
いや、便宜上俺の中で係長としているだけで、実際には管理者としてリルル、と書かれているだけなんだけども。
でも、フェンリルが管理者とか、色々ツッコミどころがあるような気がするんだけど……。
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