真面目なニコラさんは女性人気が高いようでした
「ペータさん、もしかしてなんですけど……コカトリスを使えば、世話をする手間が随分省けますかね?」
「人の手では取れないような虫も食べるのですよね? でしたら、手間が省けるどころではありません。働く者達は大変楽になるかと……」
「成る程、成る程」
ペータさんの真似というわけではないけど、何度も頷く。
コカトリスか……薬草畑をするうえで、協力してもらえば凄く助かりそうだ……。
駅馬でのフェンリル、薬草園でのコカトリス……俺の考える利便性向上などの案が、大体魔物に頼っている内容なのは、きっとレオと一緒にいるのが大きいんだろう。
……レオのせいにしてごめん、後でいっぱい構ってやるからなー。
そろそろ皆が食事を終えて、話しをするのがメインになりつつある。
俺は全員ではないが、従業員の人とある程度話した……名前を覚えきれていなかったから、話の内容というよりもそちらを誤魔化すの方が大変だったけど。
俺と違ってクレアなんかは全員の名前を覚えているようで、少し話して別の人に声を掛けていたから、ほとんどの人と話したんじゃないだろうか? さすがだ。
俺も同じくできるようにならなきゃなと思う反面、自信はない……とりあえず、名前は覚えておかないとな。
「ん? あれは……」
宴もたけなわというのだろうか、お酒も入ってそれぞれが盛り上がっている頃、ふと裏庭の端の方にいる人が目に入った。
一応の警備として配置されているニコラさんと……コリントさんだな、結構前の面談の時いい男はいるかと、想像外の質問をした女性だ。
他方では、フィリップさんが従業員の女性に対して手を振っているのを、ヨハンナさんや他の護衛さんが突っ込んでいるけど、あっちは気にする必要はなさそうだ。
ヨハンナさん、拳をフィリップさんの脇腹に差し込んでいたけど……フィリップさんなら大丈夫だろう、うん。
「ご趣味はなんでしょうか? 休日などの過ごし方は……?」
「……趣味は、鍛錬です。休日も、未熟な某を鍛える方法を考えて過ごす事が多いかと」
興味から、ニコラさんとコリントさんのいる方に近付くと、二人の会話が聞こえて来る。
何やらコリントさんが、ニコラさんを問い詰めているというか、質問を矢継ぎ早に投げかけているらしい。
趣味とか休日の過ごし方とか、お見合いかな?
「あ、いや……コリントさんだからな。そうかぁ、ニコラさんに興味をもったかぁ」
セバスチャンさんあたりは、フィリップさんを勧めそうな気配だったけど、コリントさん自身はニコラさんに興味を持ったらしい。
まぁ、ランジ村に行く事も決まっているし、真面目な人だから家庭を築くという意味では、相応しい気もする。
コリントさんの積極的な様子に、ニコラさんは押され気味だけども。
「ブレイユ村でも、ニコラさんは人気がありましたからね」
「デリアさん」
「タクミ様、お疲れ様です。皆と話していたようですけど、私の所には来られなかったので、こうして来てしまいました」
「ははは、ごめん。リーザやレオ達と楽しく過ごしているようだったからね」
ニコラさん達を観察している俺に声を掛けてきたデリアさん。
片手にハンバーガー、もう片手に飲み物のグラスを持っているのはさすがと言える……のかな? 楽しんでいるようで何よりだ。
「ブレイユ村で、タクミ様やクレア様が振る舞われた料理ですけど、やっぱり美味しいですね。それに、以前食べた時とは違う物もあります」
「料理長のヘレーナさんが、改良してくれているからね。材料とかはほとんど変わっていないんだけど、作り方を工夫したり、ちょっと別の物を加えたりとか」
ハンバーグは俺が伝えた料理で、パンに挟むという発想もそうだけど、ヘレーナさんは自力での改良に余念がない。
挟むパンを柔らかくして食べやすくしたり、逆に硬めに作って持ち運びできるようにしたり……ハンバーグにかかっているソースも、コクを出したデミグラスソースっぽい物や、トマトソースのような物まで。
照り焼き風ソースがないのは残念だけど、かなり満足度の高い物ができているから、ブレイユ村で作った物とは違うとデリアさんが言うのも当然か。
「それで、なんだったっけ……あぁそうだ。ニコラさんがブレイユ村で人気だったって? フィリップさんの方が人気あったと思っていたんだけど……あれを人気というならね」
コリントさんの邪魔をしないよう、デリアさんとその場を離れつつ以前ブレイユ村に行った時の事を思い出す。
フィリップさんは、老若男女分け隔てなく村の人達に声をかけていた……特に女性にはマメに話しかけていたっけ。
そのおかげもあってか、ブレイユ村の中を歩けば女性から挨拶をされたり、話しかけられる事が多かったんだけど……まぁほとんどは暇な時間潰しに、ちょっと会話を楽しむくらいだ。
恋愛沙汰になるような事は、俺が見る限り不思議な程なかったっけな。
逆に、ニコラさんは途中で屋敷に向かったのもあって、あまり村の人から話しかけられている印象はないから、人気という意味ではフィリップさんの方があると思っていたんだけど。
「フィリップさんは、気のいいお兄さんというかただの話し相手というか……あ、評判が悪いわけじゃないんですよ?」
「まぁ、それはわかるよ」
あ、フィリップさんが項垂れた……移動して距離が近くなったから、デリアさんの声が聞こえたんだろう。
ヨハンナさんが肩に手を置いて、深く頷いているのは慰めているのだろうか?
「ニコラさんは、あまり村の皆と話しをする機会がありませんでしたけど、実直そうで軽薄な雰囲気がなく、密かに村の女性達が裏で話していたんです。中には、どう話しかけようかとか、どうしたらお近づきになれるか、なんて話していた人もいるくらいです」
「確かに、ニコラさんは雰囲気もそうだけど、実際に真面目だからね……話せば口数が少ないという程ではないんだけど、寡黙なイメージかな」
「フィリップさんが気軽に話す分、ニコラさんが余計に気になる人が多かったんじゃないかと」
それってもしかして、軽薄に見えるフィリップさんが目立つ分、寡黙なニコラさんが対比で真面目そうに見えて……とかだろうか?
もしそうなら、どこまでも報われないフィリップさん……。
いや、態度というかもう少し真摯に女性と向き合えば、モテると思うんだけどなぁ。
性格が悪いわけじゃないし、美形だし、護衛長でしっかり仕事しているわけだし――。
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